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農家の人手は足りない

「なにぼーってしてるんだよ!はやく収穫しなさい!ソースにするトトみたいに潰しちゃうぞ?」


いきなり現れたクリスに怒鳴り付けられる。年齢より幼めの可愛い顔と声に似合わない物騒な台詞。目上の者には、せめて挨拶くらいしなさい。


「今、やってるだろ。」


傍らのマウントンを指差す。


「遅い!うちのランチには新鮮なトトが欠かせないの!早く市場に届けてくれないと」


たったっか走ってきて、マウントンの背中の籠を覗きこむ。


あちゃー。


「あー!なんにも採ってないじゃない!」

「うるさいなあ。ようやく太陽が昇ったところだぞ。ランチになんて、まだ余裕で間に合うって」


げしっ


肩口に衝撃。痛み。


「あ~、頭を守るな!」

片足を上げ、ハイキックの構えのクリス。


「蹴るな!」

「コックは蹴るものでしょ?」

「そんな決まりはない!」


そして、至極全うな意見をする。


「はやく料理したいんだろ?なら蹴らんで手伝え。」


こうして始まる二人と一頭の収穫作業。

という流れが、毎朝行われている。


今時期はトト。紫の卵形野菜エッグプラントも採れる。もうすこし涼しくなると土を掘り起こしてポトの収穫だ。


蹴りを入れられるのは嫌だが、押し掛けて来て農作業を手伝ってくれるクリスは、何だかんだで人手が足りない俺としては、まあ、それなりに有難いと言えないこともない。


「うんうん。いいねえ!この艶!クズが作ってるとは思えない出来ね!」


こいつの性格が、見た目みたいにちょっとは可愛ければねえ。


「何よ」


なんでも。




そんなこんなで収穫したトトを街へと運ぶ。

クリスは市場まで一緒に付いてくる。

うちの野菜だけじゃなくて、食堂で必要な食材をまとめて買うのだ。それをうちのマウントンが食堂まで運んでやるのまでがワンセット。


「まうちゃん、こんなやつほっといて、うちに来ない?」


こら、俺の唯一の家族をヘッドハンティングするんじゃない。


「お前、マウントン好きだよな」

「この毛並み、最高じゃない?」

「まあな~」


確かに。


朝の軽い散歩、には少し長い位の時間で街に着く。


いつものように、クリスに売る分以外を市場に卸し、食堂に荷物を届け。クリスは即効でエプロン姿になり、下ごしらえを始めたようだ。俺も家にのんびり帰った。


ひどい一日の始まりだったが、ようやく平和な日常に戻った。さて、飯食ったら畑の様子でも見てくるか。家のドアを開けると


「あ、今朝はすみませんでした!」


鎧姿の男が部屋の中にいた。


勇者って、ホントにいたら不審者ですよね。

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