農家の存在感も皆無
紫に輝く円い光の中に、男の姿がぼんやりと浮かんでくる。
おいおいおいおい!!
何が起きているんだよ!?
魔法使いか?一般人の俺の畑に何の用だ!
き
やがて紫の光は消え、パニックで立ち尽くしていた俺の目の前に、灰色の長いガウンを身に纏い、手には杖を携えた男が目付き鋭く立っていた。
そして、ガウンの男は重々しく口を開いた。
「お前が勇者か」
「違います」
食い気味に即答する俺。
その一瞬後に、ガウンの男がするであろう返答が頭に浮かぶ。
「お前に聞いていない」
「ですよね~。」
0.5秒考えれば分かる話だ。誰が老マウントンを連れた、見るからに畑作業着の冴えない男に勇者か尋ねるというのだ。恥。
改めて、フードの男は問い直す。
「お前が、異世界から来たという勇者か?」
あ、ちょっと聞き方が丁寧になった。
少し落ち着いた俺にやっと思考回路が戻ってきたらしい。
そうして。
俺の畑に寝ていた男は
ゆっくりと立ち上がり
フードの男に向かって
ゆっくりと返答をした。
「勇者の資格があるのかは分かりませんが、この世界を救うために異世界から来たことは確かなことです。」
「その言葉を求めていた!我と共に城へと参られよ!共にこの国を!世界の平和を守ろうではないか!」
「はい。苦しんでいる人を救うため、私は未知の世界へと飛び込んできたのです!微力ではありますが、ぜひ戦わせてください‼」
「では、共に!」
「はい!」
そうして、二人はキョトン顔の俺を置いてきぼりにして、杖から溢れ出た紫の光に包まれ、消えていった。
うん。
一般人の俺には関係ないってことだね。
あー、無駄に疲れた。
やれやれ。
お前が見つけなきゃよかったんだよ~、とマウントンの頭を一発叩く。
「う~」
魔物の表情なんて分からないが、雰囲気的に不満そうなマウントン。
そんな声出したって知らんがな。俺は無意味にむしゃくしゃしてるんだよ。大体お前、勇者を喰ってたぞ。罰当たりめ。しかし。
「勇者なんて初めて見たなあ」
思わず一人言か漏れる。
と、後ろからいきなり怒鳴られる。
「なにボソボソ一人で言ってんのよ!」
うわ~。今日はどうなってるんだ。俺の平和な朝を返してくれ。
恐る恐る後ろを振り返ると。
あぁ、やっぱり。
街の食堂の看板娘クリスが、腰まである金髪をなびかせて仁王立ちしていた。