農家の仕事は育てること
狼退治を終え家へと帰ってきたキョータは、釈然としない顔のまま、夜ご飯のスープを啜っている。
今日も野菜をトロトロ煮込んだ美味しいスープだ。美味そうに食えよ。幼なじみの誰かさんには、「最早煮物じゃん、これ」と褒められている自慢の逸品だぞ?
うん、褒められてるよな?
キョータはスープの皿を見つめたまま、なあ、と声を掛けてきた。
「狼って、ああやって倒すものなのか?」
「まあ、巨大化したモンスター系じゃなきゃ、普通にあんなもんだろ。穴掘って、おびき寄せて、落とす。ネムリ草の燻したのを、放りこんで、上から剣でツンツンする。」
ハーッとため息をつくキョータ。
何が気に食わないんだ。
「効率がいいだろ。穴はリサイクルして何回も使えるしな。」
「なんか、戦ってる感じがないんだよね。これでちゃんとレベル上がるのかな」
「もちろん、ちゃんと農家として自衛する力がバッチリつくぞ。」
「農家になりたいわけじゃないって・・・。」
ぶつくさ言いながら、ごちそーさまーと席を立つ。
まあ、そんな後ろ向きの姿勢で依頼をこなしていたキョータだったが、数週間であっという間に冒険者としてのランクも上がっていったのだった。
初めの村の農家としても、実に鼻が高い。
今回もいい仕事したねえ、俺。