序章 亡霊騎士
人間と魔物達が戦う世界。魔物達は人間にことごとく負けていき、遂に魔王城の近辺まで人間達に侵攻されてしまった。
魔王城。その魔王がいる玉座の下に、宝物庫があった。
その宝物庫を護るのは亡霊騎士。
魔王や四天王達に唯一、実力で戦えるほどの魔物だ。
身長2m強、全身鋼鎧に身を包み、兜の中に蒼白い魂が入っている。全属性適性であり、聖なる光ですら亡霊騎士を倒すことは出来ない。
私は…魔王様に……宝物庫を…護るように………命令…されまし…た……
宝物庫に入る扉のある薄暗い部屋で途切れ途切れの女性の声が響く。
そう、亡霊騎士は魔王城に単身で突撃し、奮闘した女騎士だったのだ。
しかし、彼女は奮闘虚しく魔物達に捕まり、そしてそれを知った人間達の方では彼女という存在自体を抹消したのだ。家も地位も全て剥奪されていた。
彼女は死後、生きていく場所が無いことを知り、亡霊騎士として蘇って来たのだ。
忌々しい人間を殺すことを決めたのだ。
なぜ魔物達を恨まなかったのか?
それは死ぬ寸前に、魔王にこう言われたからだろう。
『お前はよく戦った。だが、下等なる人間はお前の存在を社会から無くしたようだ。お前が生きて帰っても誰もお前のことなど知らない。生きていく価値など向こうには無い。』
その一言を聞いた彼女は怒り、既に尽きかけた力を振り絞り魔王に叫んだ。
『……私に………復讐を……させろ!』
魔王はその叫びを聞き、
『冥府から蘇って来い。さすればお前を認めてやろう。』
と告げ、立ち去った。
彼女はその後、死に冥府へと逝った。
そこで彼女は冥府の王に出会い、蘇るための試験を受けた。
その試験は一言で言えば過酷なものであった。だが、彼女はそれを乗り越え、新たな体を手に入れた。
それが『亡霊騎士』としての体だった。
冥府で数週間、体の調整などをして魔王城へと蘇って行った。
魔王は蘇って来た彼女を見て喜んだ。その喜びはなんだったのか。知っているのは魔王しかいない。
彼女はそのあと魔王に宝物庫の死守を命じられた。
宝物庫の警備というのは、重大なものであり四天王達は見たこともない魔物に任せるのはおかしいと魔王に抗議した。
しかし、魔王はその抗議に対してこう言った。
『信じられないならそいつと直接手合わせしてみろ。俺はする必要がない。』
魔王の言われた通り四天王は彼女と手合わせすることを決めた。1対1で模擬戦をすることにした。
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