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解説エッセイの必要性

作者: 生きの良いバグ

町の小さな本屋さん。

そこで文庫本やマンガ雑誌を気軽に試し読みして購入していた頃。


書籍棚には当たり前のように科学解説エッセイも並んでおりました。



中でもアイザック・アシモフが大のお気に入りでかの人は物理・化学分野で博士号を持つ堂々たる学者さんでありながらSF作家として名をはせた方でした。


彼の解説エッセイは物理・化学にとどまらず自然科学や世界の歴史までも網羅していてその歴史も人物主観ではなく自然科学などから解説してくれていたのです。



例えばコロンブス。


彼がポルトガルの学者相手に論争していたのは有名ですが何について論争していたのかという内容については誤解の方が認知されすぎていて真実を知る者の方が少数派でしょう。


アイザック・アシモフは地球の大きさに関する自然科学エッセイでコロンブスの欺瞞を暴いてみせ私に少なからぬショックを与えました。


ポルトガルの学者が「大地は平らである」と言い。

コロンブスが「地球は丸い」と言った。

これ、間違い。


実際は互いに地球が丸い事を認め合った上で地球の大きさを計算し、その計算結果が違っていただけ。


それで東まわりにインドを目指したポルトガルは喜望峰をまわって見事にインドまで到達しています。

片や西まわりでインドを目指したコロンブスが着いたのは新大陸。


どちらの計算が正しかったのかは明らかです。

地球はコロンブスの計算結果よりデカかった。

彼は新大陸を探していた訳じゃないし。


なのに私たちはコロンブスが「ざまあ」したと絶賛誤解。

あげくコロンブスの卵などという尾鰭話まで広がっています。


多分だけどスポンサーのイサベル1世がコロンブスのイメージ戦略したんじゃない?

あの人は四カ国に分かれて相争っていたスペインを統一させた夫婦の片割れだし。


彼女の夫なんて自分の借金をチャラにするべく金貸しのユダヤ人を狙い撃ちしたスペイン異端審問やっちゃってるくらいです。

(あのボルジア家の祖とつるんで)



こういうの人物に焦点を当てた歴史書に載ってましたか?

科学解説エッセイの大切さが少しはご理解いただけました?





他にもなろうでは誤解を基礎とした上に組み立てられた物語が乱立していてこれはライトノベルを愛する者が世間一般から馬鹿にされる元ともなっています。


なぜならいくら舞台だけ異世界としてみたところで読者は地球人ですからね。

常識を知っていてあえて改変するならまだしも知らずに適当に書いていて読者が納得できますか?


全てを御都合主義だけのパワープレイで乗り切るより自分の常識の底上げをしていかなければライトノベル全体の地位向上は望めません。





解説エッセイには科学解説だけでなく雑学ものや歴史解説ものも多かったですね。


出所不明な解説エッセイでも数々乱読すればそれなりに歴史観も生まれますので大人読者代表を気取って私の歴史観を話してみたいと思います。




身分社会について。

近世まで地球では奴隷制度というものがありました。

日本にも古代には奴隷が存在しましたし女郎のように売り買いされた女達もおりますが奴隷制度と呼べるほどのものがなかったですね。


西洋の奴隷制度においては貴族や地主と奴隷との間に生まれた子供の身分は奴隷。

王家の人が後宮で側室待遇していない女性との間に子供をもうけたら子供の身分は母親と同じ。

父親の身分にまで引き上げられたりはしません。


逆に養子などのように血筋をひかない後継者であっても王室育ちですと王位継承権を得ます。


男側に女性への愛情があれば自分の身分証明となる物を渡す場合もありますがこれはその女性を庇護する為であって彼女の生んだ子供を庇護するものではないのです。


考えてもみてください。

夫でも何でもない自分を受け入れた売女ですよ。

彼女が気に入ったから側室にしてあげる処まではOK。

だからって彼女が彼の子供を身ごもったと主張しても彼の兄弟の子供である可能性や見知らぬ男の子供である可能性があるというのに自分の子として財産分与までしますか?


ここで女性に対して盲目的な庇護を考える方は王家を舞台とした物語を描くのに向いていません。

自分の個性を活かす為にも陰謀渦巻く王家からは離れましょう。



貴族女性が下男などと通じた場合ですがこれは夫が生存していたら発見され次第投獄・処刑案件でした。

子供も貴族待遇はされません。


未亡人の場合は複雑ですが彼女の生家で暮らしていたなら家長が判断。

未亡人自身が家長であれば子供は使用人にされて終わりでしょうか。


戦争で我が子を人質にされた未亡人が城壁でスカートをたくし上げ「子供なんてこの先いくらでも産める」と包囲軍に下半身見せながら啖呵を切ったという例もあるくらいですから当時の貴族の考え方がおわかりですよね。


親子で情が移らないよう離れて暮らしていたのも。

お乳をあげない姉や的乳母が王子様に最初の男女の手ほどきするのも。

王族とか貴族って家族より領地なんです。


婚姻前の娘だと全員生娘が絶対条件でしたから生まれた子供ともども闇に葬られたのでしょうか。



エリザベス1世の母親アン・ブーリンが不倫疑惑で処刑されたというのにエリザベスが王族扱いされ続けたのは彼女が生まれた頃は母親もまだ男子懐妊の機会があるものとして寵愛をうけておりましたし母親の不倫そのものも冤罪でしたから。







貴族についてもう少し。


日本の武士達はまつりごとをして税を得る権限がありました。

ただし土地そのものは農民のものです。


これはとても特殊な形態なので異世界ファンタジーに持ち込むのは危険。

日本独自の歴史や宗教と深く結びついた形態ですから。


世界的には地主=貴族。

そこで働く小作人や農奴は主の土地を耕しているだけ。

領地は貴族の土地であり財産で国のものではないのです。

なので王家による貴族領への侵略はあっても日本のような配置換えはありません。

(チェスと将棋の違いにも関連?)


王家にしても同じで王様は大領地の領主です。

自分でも領地経営をしますが貴族の領地経営に口出ししたりしません。

分譲マンションの管理人と住民のような関係ですね。

賃貸と違って公共部分に被害がなければ室内の改装は自由なのです。


王様は貴族に対して他国からの侵略などを払いその貴族の権利を守るかわりに国に対して税を支払わせますし国全体としての法律を決めたりもしますが貴族と王が対立してその貴族が他国にはしればその貴族の領地は他国のものとして扱います。


フランスの女領主がイギリス国王と結婚したためフランス国内にイギリスの大領地が出来てしまいそれが元で両国の戦争にまで発展した事もあります。


国王といえど貴族の領地を勝手に自国に取り込む事は出来ません。

他の貴族の反発を招きますから。




軍隊のあり方も日本で言うなら鎌倉時代風のような感じですね。

国軍は国王直属の軍を指したでしょうが他国との戦いとなると国王直属兵では足りないでしょう。

貴族らもそれぞれ兵士を集めてそれぞれに動いたと考えています。


帝国というのはいくつかの小国家の寄り集まりで皇帝とはいわゆる大王である。

という見方が一般的ですが王国だったフランスが兵制を改めて国軍として動いたのも有名で皇帝と王様の違いとは国の軍隊指揮権の有無であるとも考えられます。


ナポレオンは侵略戦争を繰り返していましたから皇帝になった頃はフランス以外の領土もありましたし鶏が先か卵が先かという問題同様分けて考えるものではないのかも知れません。


王国には国王・王太子・王女がいて貴族との関係は同僚に近い。

帝国には皇帝・皇太子・皇女がいて貴族との関係は部下に近く軍指揮権あり。


この関係は絶対視しなくても構わないでしょうが頭の隅に入れておいても損はないはず。




そういえば庶民を見下す貴族ばかり登場する作品がありますがその作品の産婆さんとかお医者さんの扱いに興味わきませんか?


日本では大名行列を横切ると成敗対象でしたが唯一の例外がお産婆さんでした。

異世界の貴族令嬢は火災時でも防災の専門家に従わないのでしょうか。


身分がどうあれ職業上の都合で場の指揮をするような世界設定だとしたら庶民だからという理由で見下して話を聞こうとしない人物の割合が多すぎると不自然になりますよね。






ライトノベルでは男女共学が当たり前のように扱われていますが中世風世界で共学とするのはかなり強引なのも事実です。

共学が当然なら男女平等社会なので王女が継承権1位となり得ます。

平民達も同じで全てに整合性を持たせるのが大事。

たとえ荒くれ者でも女性蔑視すれば共学の社会では許されません。


王子様とヒロインを安易にひっつける為の雑な設定にならないよう注意しましょう。





ライトノベルは物語であり現実そのものを表現しなくとも構いません。

ただ整合性を欠くというのは設定に対する手抜きです。

自分で世界を設計する時に手抜きは厳禁。

最低でも読者からの納得を得られるよう丁寧に設計してみてください。






いかがです?

自分で設定した世界への基本知識不足で読者をがっかりさせる作品が多くありません?


Wikipediaの知識だけで満足できますか?


たしかに検索すれば色々な知識がすぐに見られます。

でも何を検索するべきなのかを知るには解説エッセイも必要だと思いませんか?



私が町の本屋で様々な解説書に触れられたというのに本屋激減のあおりで若い方にはそうした知識と触れあえる機会が与えられないのは気の毒だと思いますし解説エッセイが増えたならどれ程多くの若い方の底上げになることでしょう。



誰かに毒を吐くエッセイが目立ちますが知識解説エッセイも増えてほしいものです。

私にそれが出来たら良かったんですけどね。

私の知識の大半はどこで読んだのか覚えていないうえに事実なのか嘘なのか誤解なのかも解らないうやむや知識ばかり。


それでも投稿したのはこれが解説エッセイではなく啓蒙エッセイだから。



私は中世風世界の生産力だとどれ程の軍事力を持ち得たのか興味を持っています。


生産人口の三%と聞いた気がするのですがこの数字が純粋な軍事力なのか文官や警務担当を含めた数字なのかがはっきりしません。


どなたかに教わりたいものです。

本文に間違いなどありましたら都度訂正いたします。


6/20 結城藍人様のご指摘で一部本文を訂正しました。

6/21 水源様のご感想で生産人口と軍事人口の割合がわかりました。

6/21 吉人様のご指摘で地主ではない貴族や中世西洋以外の貴族の在り方が抜けている点と一般例しか挙げていない点への不備をお詫び致します。

6/22 恵美子様のご指摘で日本の奴隷について加筆訂正致しました。

6/23 貴族=地主 から 地主=貴族に変更しました。


拙いエッセイにも関わらず抜け情報などへのご指摘や補足情報をいただき本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 啓蒙エッセイか。面白かったです。 [気になる点] 商業誌ならともかく、素人さんが気軽に書けるのがなろうサイトの特長といっても良いので、そこまで歴史観や整合性は気にしなくてもなーとは思います…
[一言]  アシモフの科学エッセイは、以前夢中になって読みました。彼のそうした科学史の知識は、SF作品に深みを与えるのみならず、「黒後家蜘蛛の会」などにもアクセントを添えていましたね。  想像の世界で…
[一言] こんばんは。 黒井さまのとこから飛んでまいりました。 フィクションにおけるリアリティの話ですね。 歴史物なら、現実のシステムをそのままか、多少潤色して…ですけど、完全に異世界となると一から…
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