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あまのじゃく!!  作者: にゃろ
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オレンジジュース

「あまのじゃく!!」を読んで頂きありがとうございます。今回の話は喜怒の唯一の友達の登場など喜怒の日常をメインにした話になっています。今後の話に大きく関わってくる話になるので登場人物が多くわかりにくい所も多いと思いますが最後まで読んで頂けると嬉しいです。では、「あまのじゃく!!」第2話の始まりです。

真宮が喜怒達を部活に誘ってから数日後、喜怒はいつもと違う休み時間を過ごしていた。


「ねぇねぇ。サド君ってば~。聞いてる~?」


(うるさい。)


喜怒が登校してきてから休み時間のたびに結城が話しかけてきたのだ。喜怒は寝たふりや音楽を聞きながら本を読んで気付かないふりをしてなんとか凌いできたがそれも限界だった。


「ねぇってば~!!」


「弁当。」


「へ?」


「弁当食べるから。」


「あ~…そっか!!ごめんね。」


(はぁ。やっと落ち着ける。)


喜怒がそう思ったのも束の間、喜怒の肩を誰かが触った。


「静。おっす!!」


喜怒に声をかけてきたのは喜怒のクラスメイトで唯一の友達、国木田 拓郎(くにきだ たくろう)だ。眼鏡をかけて如何にも優等生という感じの見た目だが、クラスの皆をまとめる事のできるムードメーカー的存在だ。


「拓郎か。今日は野球部の集まり良いのか?」


「あぁ。今日は部長が休みなんだ。だから喜怒と昼飯でもと思ってな。ところで喜怒と結城はいつの間に友達になったんだ?」


国木田はそう言うと喜怒の席に机を二つ、くっ付けてきた。


(拓郎!?お前何を!?)


「結城も一緒に昼飯食べないか?」


「えっ!?あ…うん。」


結城はそう言うと椅子にちょこんと座った。結城は身長が低いというのもあるが椅子に縮こまって座る姿はまるで人形みたいだった。


「結城は弁当じゃないのか?」


「うぇ!?あ…うん。私一人暮らしだから。」


そう言いながら結城はコンビニ袋を一つまた一つととても一人分とは思えない量を出してきた。


「いや!!お前それどっから出した!?」


(やっちまった。)


ツッコミをいれたのは喜怒だった。小さな身体からは想像もできない量のコンビニ弁当を見たからか我慢出来ず思わずツッコミをいれてしまったのだ。


「お~!!良い食べっぷりだな結城!!沢山食べる女子は良いよな!!でもちゃんと栄養は摂れてるのか?ほら、これ食べてみろ。」


国木田はそう言うと喜怒の弁当から煮物を取り結城の口に放りこんだ。


「ん!?」


「おい!!それ俺のおかず!!」


国木田におかずを貰った結城は顔を真っ赤にして今にも気を失いそうになっていた。


「まぁまぁ静、良いじゃないか。どうだ結城、美味いだろ?」


結城は国木田に声をかけられ我にかえったのかコクコクと頷く。


「そうだろそうだろ!!静が作る物は何でも美味いからな!!」


「これ…サド君が作ったの?」


「あ…あぁ。妹の弁当のついでにな。後、俺はサドじゃなくて喜怒静だ。」


(俺、何普通に話してんだよ!?)


「美味しい、お弁当、喜怒…静。」


「あなた達…何をやっているの?」


そう言って現れたのは神木桜だった。


「え?」


喜怒が困惑していると神木は鬼のような形相で喜怒を睨んだ。


「何をやっているのかって聞いてんだよ!!」


教室が凍りついた。教室にいた誰もがその声に驚き注目した。喜怒が神木の勢いに何も言えずにいると国木田が割って入った。


「神木落ち着け!!俺達はただ一緒に弁当を食べていただけだ!!」


「そうそう。一緒にお弁当食べてただけだもんね~。そうでしょ?葵。」


そう言って結城の事を抱きしめたのは結城の親友、星野 空(ほしの そら)だ。


「くうちゃん。」


「神木さん、これ以上私の友達に迷惑かけるなら…怒るよ?」


「くっ!!星野…さん。」


神木は星野の事を見ると冷静になった。


「ごめんなさい。」


そう言うと神木は教室から出ていった。


「くうちゃんありがとう!!」


「葵~!!大丈夫だった!?怪我してない!?」


「くうちゃん。苦しいよ。」


星野は結城をわちゃわちゃにしていた。助けてくれ星野に国木田が礼を言う。


「星野、助かった。ありがとう。」


「いやいや!!大した事じゃないよ。喜怒君も大丈夫?」


「あ、あぁ。その…」


「ん?」


喜怒が言葉に詰まっていると星野は顔を覗きこんできた。


「う、あ、ありがとな!!」


テンパった喜怒は何故か大声で星野にお礼を言い、頭を深々と下げていた。その喜怒を見た星野は一瞬驚いた顔をみせたが直ぐに笑顔で返事をした。


「おう!!困った事があったらいつでもこの私くうちゃんこと星野空に頼りたまえ!!ぐわっはっは~!!」


その日の放課後、喜怒達が教室から出た後クラスはある話題でもちきりになった。一つは神木が何故あんなに怒っていたのか。普段が真面目なだけにあの鬼のような形相がとても強く印象に残ってしまったようだ。そしてもう一つはこんな

話題だった。


「喜怒ってさ~。案外良いやつなのかな~?」


「どうして?」


話しをしているのはクラスの女子、園田 恵梨(そのだ えり)と柏木 万智(かしわぎ まち)だ。


「喜怒って目付き悪いし無口だし教室にいてもほとんど独りじゃん?だから恐いって言うかヤバいやつなのかなって思ってたんだよね。でもさ、今日の喜怒見てたら何かさ。万智はどう思う?」


「そうだね。喜怒君って私達が思ってる以上に優しい人なのかもね。ちょっと不器用だけど。」


その会話を聞いていたクラスの男子、林 隆弘(はやし たかひろ)と瀬川 幹男(せがわ みきお)が今度は話し始めた。


「いや~!!あれだよな!!喜怒って良いよな~!!」


「うんうん!!喜怒っちサイコ~!!」


そんな男子達を見た園田が一言言ってやろうと近づいていく。


「ちょっとあんた達!!話した事もないくせに何がサイコ~よ!!バカじゃないの!?」


「やめようよ恵梨~。」


園田が林達に怒っていると国木田と同じ野球部の石田 丸雄(いしだ まるお)通称マルが話しだした。


「俺は知ってるよ。喜怒が…すげぇ良い奴だってこと。じゃあ俺部活あるから!!」


マルはそう言うと教室から出ていった。


「マルのやつ、どうしたの?」


その頃そんな話しになっているとは微塵も思っていない喜怒は学校内にある自販機の横に身を隠していた。戦場の兵士のように息を殺し敵がいないかを確認する。


(奴は!?奴は何処だ!?)


「撒いたか?」


気を抜きかけた喜怒の背後から小さな影が忍びよる。


「き~ど~く~ん?見つけた~!!」


その影の正体は結城葵だった。結城は喜怒に勢いよく飛び付こうとしたが喜怒はそれを間一髪で避けて全速力で走りだした。


「な!?何なんだよあいつ!?」


「待ってよ~!!何で逃げるの~!?」


「お前こそ!!何で追ってくんだよ!?」


喜怒は全速力で走っている。だが結城はその喜怒に離される処か直ぐ後ろまで迫っていた。


「つ~か~ま~え~た~!!」


そう言いながら結城は喜怒に飛び付いた。さすがに今度は避けられない。


(こわい。)


(え?)


「もう逃がさないよ~!!」


(一人じゃ行けない。)


「大人しくお縄につくのだ~!!」


(お願い喜怒君。一緒に…)


「部室。」


「へ?」


「部室…行くか?」


喜怒がぎこちなく言ったその言葉に驚いたのか、それとも単に意味を理解できなかったのか、結城はきょとんとしていたが直ぐ返事をした。


「うん!!」


「じゃあ、行くぞ。」


喜怒が歩きだそうとすると結城は足にしがみついて喜怒が部室に行こうとするのを止めた。


「あっ!!待ってよ~!!」


(う、動けねぇ!?なんつう馬鹿力してんだこいつ!?)


「な、何だよ?」


「ジュース買いたい。だからちょっと待ってて。」


喜怒は何だか拍子抜けしたみたいにため息をはいた。


「ハァ。わかったわかった。さっさと買ってこい。」


「私が買ってくるまで絶対に動いちゃダメだよ?約束だからね?」


そう言うと結城は自販機の方へ走って行った。喜怒は結城が来るのを窓からグラウンドを眺めて待つ事にした。グラウンドには部活で汗を流す生徒達の姿が見えた。


(それにしても、あいつ何でこんなに頑張ってまで部活に出ようとするんだ?俺にはさっぱりわからん?)


「はい!!お待たせ!!」


「ひっ!?」


喜怒が頬に感じた冷たさの原因は結城が買ってきたジュースだった。結城は喜怒の反応が面白かったのか腹を抱えながら笑っていた。


「アハハ!!変な声~!!」


「おっ!!お前な~!!」


ひとしきり笑うと結城はオレンジジュースを差し出してきた。


「はい、あげる。」


「くれる、のか?」


「うん。今日のお弁当のお礼。」


「お、おう。じゃあ貰うぞ。」


結城からジュースを貰う時に指先が触れた。


(ありがとう。)


(その時俺は思った…いや思ってしまった…嬉しいと。)


喜怒と結城は部室の前まできた。


「入るぞ。」


「うん。」


喜怒が部室の扉を開けると神木が一人椅子に座り窓から夕焼けに染まる空を眺めていた。喜怒が部室に入り椅子に腰掛ける。すると結城は喜怒の横に椅子を持ってきて腰掛けた。言葉は無いが喜怒にはわかっている。やはり神木が怖いのだ。少しの間沈黙が流れたがその沈黙を破る者が現れた。


「ごめんなさい。」


神木だった。神木は相変わらず空を見ていたが確かにそう言った。神木が謝った事に驚いた喜怒と結城は思わず神木を凝視してしまう。そんな視線が辛かったのだろう。神木は喜怒と結城に身体を向け少し照れくさそうに言った。


「な、何よ?」


「別に。」


「か、神木さん!!」


「な、何かしら?」


「えと、その…き、喜怒君はね!!お弁当が凄く美味しいの!!自分で作ってるんだって!!」


(え?何で俺?てか何!?)


「そ、そうなの?」


「うん!!今日は煮物だったけどたまにキャラ弁なんだよ!!凄いよね!?」


(え!?こいつ何で知ってんの!?恥ずかしいんですけど!!)


「え!?嘘でしょ!?ちょっと退くわ。」


「おい。」


「そ、それでね!!か、神木さんは何か好きな物ある!?私は食べるのが好きなんだ~。あ、あと!!」


「オレンジジュース。」


「え?」


「好きなの。オレンジジュース。」


オレンジジュースが好きだと言う神木は少し笑っていた。でもそれだけじゃない、何か別の事を考えているような思い出しているような表情をしていた。


「わっ、私もオレンジジュース大好き!!」


「一緒ね。」


「うん!!」


(良かったな、結城。)


喜怒は思った。結城葵という少女は不器用だと、だが真っ直ぐだと。もしかすると神木もそうなのかも知れないと思った。


喜怒がそんな事を考えていると扉の開く音が聞こえた。


「何だお前達?いつの間に仲良くなったんだ?」


そう言って入ってきたのは真宮だった。真宮は部室に入ると腕組みをしドヤ顔で言った。


「今日はお前達に朗報がある。依頼人を連れてきた。入って良いぞ!!」


真宮がそう言うと一人の少女が入ってきた。


「失礼します。」


喜怒は入ってきた少女を見て驚いた。喜怒が驚くのは当然だった。何故ならその少女は喜怒のよく知る人物だったのだから。


「ここ、ろ?」


「お兄…ちゃん?」


彼女の名前は喜怒 心(きど こころ)喜怒の実の妹であり桜ノ丘高校に通う一年生である。


「お兄ちゃんどうして!?え!?」


「お前こそどうしてだよ?」


「わ、私は相談があるなら此処だって薫ちゃ…!!真宮先生が言うから。」


(またあんたか。)


喜怒は自信満々に頷く真宮を見て頭を抱えた。


「てかお兄ちゃん部活なんかやってたの?」


「ま、まぁ。成り行きでな。」


少し気まずそうにしていた二人だったがその空気を結城が一瞬で変えてしまう。


「あなたが喜怒君の妹さん!?よろしくね~。私は喜怒君と同じクラスの結城葵。こっちは同じ部活の神木桜さん。これからよろしくね~。」


「え?あ、はぁ。どうも。」


「喜怒君のお弁当美味しいよね!!あっ、でもこんなに可愛い妹さんがいたら頑張っちゃうか~!!」


「え?お兄ちゃんのお弁当食べた事あるんですか?」


「うん!!今日少しわけてもらったんだ~。」


心は喜怒の方に視線を向けたが喜怒は直ぐに目を反らしてしまった。結城が喜怒の弁当の話を熱く語っていると痺れを切らしたように真宮が話し始めた。


「盛り上がってるのに申し訳ないんだが…心、お前何しにきたのか忘れてないだろうな?」


「覚えてる…けど。」


(お兄ちゃんに相談なんて…恥ずかしい。)


そう言って黙ってしまった心を見かねて真宮が話しだした。


「おい心。早く話さないとあれするぞ。なぁ静?」


真宮が言うあれとは喜怒の心を読む力の事である。妹である心に隠し通すのは無理だと思った喜怒は心には事情を話していた。


心はその言葉を聞いて焦りながら話しを始めた。


「わかった!!わかったから!!実は…何日か前からなんだけど、誰かに見られているような視線を感じるの。それで最近参ってて。」


「ちょっと待て。お兄ちゃんそんな事聞いてないんだけど。」


喜怒がそう言うと心は少し照れくさそうに言った。


「だって…お兄ちゃんに心配かけるじゃん。」


そんな妹を見た喜怒は思った。


(何これ!?超可愛いんですけど!!)


喜怒が自分の妹愛を静めようとしていると今度は神木が話しだした。


「先生。これはオカルトと関係あるんですか?そうじゃないなら私達が部として関わって良い問題じゃないと思うんですけど?」


「確かに神木の言いたい事もわかる。だがどちらにしろ放っておくわけにはいかないだろ?それに相談なら何でも受け付けるってポスターにも書いたしな!!」


真宮は悪気のない笑顔でそう言うと話しを続けた。


「もしストーカーだったとしても警察に通報するには情報が少なすぎる。だからお前達で心を守ってほしいんだ。もちろん私も協力する。」


真宮が話終わると神木は少し考えてから話しだした。

「わかりました。確かにこのままにはしておけませんからね。」


「これで決まりだな。まあ、でも今日はもう遅いからまた明日話し合おうじゃないか。」


(真宮のその言葉を聞いてみんな今日は帰る事にした。結城とは帰り道が一緒みたいだったので心と俺と三人で帰った。何を話したのかは覚えていない。正直今日は疲れた。)


喜怒が今日1日で起きた事を振り返っていると扉をノックする音がした。


「お兄ちゃん。入るよ。」


「ん?どうした?」


喜怒が聞くと心は話しだした。


「お兄ちゃん、友達できたんだね。」


「友達…なんかじゃねぇよ。」


「な~んだ。残念。でも…悪い人達じゃないと思うよ。特にあの結城さんって人。」


「いや、お前ほんと何しにきたの?」


「別に~。ただなんとなくね~。じゃあ私部屋に居るからご飯できたら呼んでね。」


「ちょっ!!おい!!」


「…本当に出て行きやがった。」


「結城葵…か。」


喜怒はバックからオレンジジュースを取り出し、缶のふたを開け一口飲んだ。


「甘酸っぺぇ。」

「あまのじゃく!!」第2話を読んで頂きありがとうございます。今回結城葵の存在によりいつもと変わった日常を過ごした喜怒は何を思い、周囲の人達はこれからどのように関わってくるのか今後の展開に大きく関わってくる話でした。昼休みに何故神木は怒っていたのか?喜怒の事をよく知っていると言ったマルとはどういう関係なのか?次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

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