ギルドの門を叩くもの 一章 12‐①
ゆらゆらと体が揺れる。
いや、揺れているというよりも浮き沈みを繰り返しているような感覚だ。
目を開けるとそこは、潮の香りが漂うどこか。
薄暗く、周囲がどのような構造になっているのかは見当がつかない。
体は仰向けになって横になっていたらしく、体に触れる水の感覚から水の上に浮かんでいるのが分かった。腕を回して水の中を探ると、硬い何かが手に触れる。
浸水はそこまで深くもなく浅くもない。だがその硬い何かは触れた瞬間、目を指すような不思議な白い景色が浮かびその中には巨大な桜の木が存在し、その気から桜の花びらが津波のごとくコトハの意識の中へとなだれ込み、コトハの目覚めたばかりの朦朧とする雲のような意識を吹き飛ばした。
手を探りその何かを水の中から引き上げるとそれは、自分が持っていた太刀であった。
暗さを含んだ紺色の鞘には非常に繊細な桜の文様が刻み付けられており薄い桃色のそれは、非常に目立つ。
いつもこの刀を持つと、まるで深い眠りの中に朝日が顔に差し込んできたかのような清々しいさっぱりとした気分になれた。
以前母から聞いた話ではこの刀は、持主の心を清めてくれると言っていた。
体を支えようと足を水中の中に沈め、「立つ」姿勢をとり、改めて鼻に潮の香りが感じられ海の冷たい感触がより一層感じられた。
水の深さは大体腰が沈みへその緒あたりまではある。
周囲を見渡すとそこは木造の船のような場所で自分がいるところは近くに大きな穴が開いており、そこから水が波を打ち入ってきているが船が沈むような気配はない。
また薄くぼんやりと霧のようなものが発生しており、さっきまで水の上に浮いていたということもあってか、体がかなり冷えている。
ひとまずその浸水したところから船のまだ水に触れていない乾いた板の上に上がる。
海の水はこの暑い時期だというのにまるで水風呂に入っていたかのように冷えており、体を少しでも温めるために腕や腹足をさすって摩擦を起こして温めるもさすがに腹冷えはすぐに治りそうになかった。
乾いた板は動くたびに今にも穴が開きそうな悲鳴のような音を上げており、くたびれ具合からかなり古い船であることが分かった。
木材は水にずっとつけていたためか所々もう柔らかく太刀で軽く突いただけで小さな穴ができ、もう白い部分すらある。
「確か、あの三人組を追いかけていて、それから。」
黒い何かがいた。
それを思い出しコトハはバッと周囲を見渡す。
視界に入るのはもう夜の闇に包まれた、深い闇をたたえた海とその暗闇に突き刺すように柔らかく輝く白い月の光に、今や古き謎の木造の船の中の木箱や扉。
しばらくその場に固まり何の気配も感じないというときに船の穴の開いた部分から月の光が差し、不意打ちをかけるように扉に入るためであろう数段しかない会談のコトハから見て右手にあるものを見てコトハの背筋は凍り付いた。
今まで旅の中でもまれに見かけていたそれはここにもあった。
それは、白骨化していた無族の骨だった。
月明かりに照らされその存在ははっきりとそしてどこか寂し気に映り込んだそれは、動くことがないと分かっていてもコトハに十分な恐怖心を与えた。
コトハはその場に釘付けにされたかのように動けなくなる。
あれはもう動かない、動くはずがないとわかっていても、足が凍り付いてしまったかのように思考も徐々に動かなくなる。
不意に頭の中に誰かが話していた幽霊船という言葉が頭の中で再生される。
(まさか、ここがあの幽霊船なのか?
しかしなぜこんなところに?
あの黒い何かは一体何だったのだ?)
様々な疑問が頭の中でぐるぐると渦のように流れ流れる。
目を閉じ深く深呼吸をする。
何度も何度も心が落ち着くまで何度もした。
心臓の音がようやく穏やかになった頃、目を開く。
命を終えないもかもを失った白骨化したそれは動くこともなく、会談にそのまま背中を預けているかのように眠っていた。
気持ちを切り替え、ひとまずコトハは海水が特に侵食している大きな穴に近づき足元にきをつけながら壁伝いに外の様子を見る。
外は星と月明かりしか存在しない深い夜と海が果てまで続いており陸地のようなものは見えない。
改めて周囲を見渡すと穴の開いた船の部位のほかに白骨化した無族であろう死体、階段の先にある金属の引く形の取手がある木製の扉、隅に置かれた木箱からは白い、くたびれている布のようなものがはみ出しており、白骨化しているとはいえ特におかしい臭いは感じられず、逆に言えば海の潮のにおい以外ほとんど感じられない。
それが逆に大きな違和感になっている。
白骨化するということは少なくとも数年の月日を要する。
どうやって死んだのかは知らないがどんな死に方にせよ、ヒトが死んだ後は虫やネズミなどがその腐肉をたかりに来る。
ここは海の上だからそういった動物がいるはずないのがわかる。
だが、それもおかしいのだ。
ここは今海の上とはいえ少なくとも虫一匹いないのもおかしい。
まるでこの場所には最初から白骨化した死体と自分自身が放り込まれていたかのようにすら感じる。
だが、もし何者かによって攫われていたとしたら、なぜ体は自由のままでそのうえ武器もすぐに手が届くような場所にあったのか、目的や動機が分からない。
この船の探索をするべきか。
あれから何時間たったのか見当がつかないし、たったとしても数時間ってところだろうか。
オルトス殿たちも今どうしているか・・・。
そう独り言をつぶやいた瞬間だった。
突然雷が落ちたようなくごもった音と衝撃と共に揺れている船が不規則な揺れを発生させた。
思わず「ファッ!」と変な悲鳴を上げる。
その衝撃の発生場所はちょうど隣の部屋から聞こえ、いやがおうにもその音の正体を見ることになるのだと悟った。
揺れがようやく最初の船独特のものになるのを待っていた。
が、
再び強烈の爆音と衝撃が船を走った。
そこで嫌な考えが頭をよぎる。
(まさか、今この船は攻撃されている?
この独特と妙な既視感は、大砲で攻撃されている?
アルカスからドルファイに渡るときに海賊に襲われたがこの時にも海賊が大砲を打ってきて、船に大穴空いたな。
・・・・・急いでここから脱出したほうがよさそうだ。)
腹を決め白骨死体の近くの扉を開く。
そして同時に顔面に固い衝撃を受けた。
思わず後ろにのけぞり階段を踏み外しそうになり、階段を後ろ向きで数段下ることになり、顔面にぶつかった「何か」を両手で捕まえる。
(・・・・なにこれデジャブ?)
手につかんだものがあの本だった。
たしか図書館でエリュムスという騎士を召喚した後、パープル殿に助けられてオルトス殿たちに会いに行こうとしてドアを開いた瞬間、同じようなことが起こった気がする。
・・・・いや、起こったな。
布はしっかりとあの時巻き付けていたせいか、布が巻き付けられていた状態であったのには変わりなかったが。
しかし、この本をあの三人組”オロチ”にとられ追いかけて来たのだ。
だとすればこれもオロチたちが仕掛けた悪戯だろうか。そうだとするとかなり悪趣味ではあるが。
状況が状況だ。できればしばらくはこのままでもよかったが、今は
人手がほしい。
本をぐるぐる巻きにしていた布を僅かな月明りを頼りにひっくり返したり、逆に絡まったりしながらと解いていく。
やがて、最初に見たあの姿を見た。
14の小さなくぼみに中央にはその他の窪みよりも大きな拳サイズ程の水晶のような大きな玉。小さな窪みの方には今現在緑色の宝玉と灰色の宝玉が存在していた。
あれ?
あの時見たのは緑色の玉だけだったような?
とりあえず、どうやって、えーっと。
名前、あの騎士の名前。
なんって言ってたかな。
確か
「エミリュス」
あの緑の騎士の名を呼んでみる。
しかし、何も反応は起きなかった。宝玉が一瞬光を帯びたがすぐにそれは掻き消えてしまった。
あれ?違っただろうか。西洋の名前は覚えずらくてしょうがないが、この本の持ち主となってしまった以上、そんなことは言ってられない。
「エムリス?」
別の名を呼んでみる。
しかし、さっきと宝玉が同じように反応しただけで、彼が姿を現すことがなかった。
「エリュムア?」
さらに別の名を呼んでみる。
しかし、宝玉は同じような反応を繰り返すだけだった。
・・・・まずい。
本当に彼の名前を思い出せない。それに伴って空腹を今更強く感じるようになり、イライラが沸々と頭の中でわきだってくる。
そういえば、私図書館で気絶して、それから一度も口に何かを入れた覚えはない。
喉もカラカラになっていた。
殺気の白骨死体を見て恐ろしく感じたのは、いま、すごく空腹だから。
・・・・やばい頭がどんどん変な方に思考回路が進んでいく。
「ええい!!エリュリア!エリュムス!」
「呼びましたかマスター。」
「エクレア!エムノス!エスリャス!エジp・・」
「マスター?もういますよ。」
“彼”に声を掛けられ、ふと我に返る。いつの間にか中央の宝玉にはエリュムスの姿が先ほどと同じようにぼやけた姿でそこに存在していた。
「・・・・えーと。」
「マスター。私の名はエムリュスです。これから少しずつ覚えてくれればいいですからそう焦らずとも。」
「なんかごめんなさい。エリュムス。」
改めて彼の名を呼ぶ。
エリュムス、エリュムス、エリュムス・・・。
何度も噛み締めるように彼の名を呼ぶ。
相変わらず彼は緑の兜にマスクをつけその表情を窺い知ることはできないが、声だけで相手を気遣う柔軟な姿勢と意思がはっきりと読み取れるほどに、彼の言葉には力があった。
彼はその小さな幻の姿でもコトハと向かい合うように跪き、頭を垂れ声を発する。
「マスター。ご指示を。私は騎士としてあなたの剣となり盾となりましょう。」
彼の言葉には不思議と警戒心を持つ事がなかった。
彼は本気で忠義を尽くそうとしているように見える。しかし私は仕えられるということに正直慣れていないし、むしろその行動は「距離」を感じ取ってしまう。
「では、一つ目の指示を出します。エリュムス、私を“マスター”と呼ばないでください。
二つ目、この船からの脱出を手伝ってください。」
「・・・。恐れながらマスター。二つ目のご指示は確かに拝命いたします。しかしなぜ仕えるべき者を“マスター”と呼んではならないのですか?」
彼の質問はどこか重々しい雰囲気を感じられた。
仕えるべき人間から拒絶されてしまったかのような、そんな彼の思いがこもった声がはっきりとコトハの耳の中に入り込んできた。それはどこか責められているようにも感じ、そして、どこか彼自身が寂しげな感覚を身に纏わせる。
私は彼を知らない。全く知らない人間(?)から仕えられるというのは、強烈な不安を覚えてしまうものだ。だからと言って、私は彼の誠意を踏み潰すようなことはできない。
だからこそ。
「エリュムス、私はあなたのような忠義の厚くまっすぐな人物に仕えてもらえるほど、高潔な人物ではありません。あなたは私を知っているようでしたが、私はあなたを知りません。
ですから、私の事は“コトハ”と、そのまま呼んでかまわない。
私はあなたを知らない。だからこそ、最初は“友人”としてかまってもらえないだろうか。」
エリュムスは沈黙する、コトハも何も言えずに沈黙し静寂があたりを包んだ。
不意に再び先ほどと同じ、いや先ほどよりも強い揺れと衝撃が足元を走った。独特の火薬のにおいまでこちらに漂ってきた。
彼の名前を呼ぶのに時間をかけてしまっただろうか。
「わかりました。騎士としてマスターの名を呼ぶのは大変恐縮ですが、マスターの命であれば、それを守るのが騎士としての本望。
コトハ様、ではこの船から脱出しましょう。」
あ、どうしても敬語になるのか。
もう仕方がないさっきより衝撃と振動が強くなってきた。
今はもう、行動あるのみ!
「では、行くぞエムリュス!」
今度こそ扉の向こうへとコトハは足を踏み入れた。
~葉桜~
4ヵ月ぶりです。皆さんお久しぶりです。
「ワールドコネクト」作者葉桜でございます。
いやー見事に更新が遅れてしまいましたね。申し訳なかったです(´・ω・`)。
~コトハ~
(#^ω^)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
~葉桜~
コトハ、無言の圧力辞めて!
これでも結構更新遅れちゃった事気にしてんだから!
~コトハ~
ただでさえ、コンピューターやツイッターの使い方がわからず作品の広告の仕方すらできなくて、知恵緯度が低いままなのになんだ!
読者の期待を4ヵ月も裏切るようなことをして!
切腹もんでしょうよ!
~葉桜~
嫌ぁーーーーーーーー!
切腹だけは勘弁、マジ勘弁!
~オルトス~
コトハ、落ち着けよ。
俺なんて今回主人公なのに出番なしだぜ。
それに作者のミスで20話分の俺らのストーリーが吹っ飛んでさらに作者がショックでしばらく動けなかったんだししょうがねぇって。
まぁ、さすがにUSBを洗濯機の中に入れてオジャンにしたのは驚いたけどさ。←トドメ(グサッ
~葉桜~
グハ!
二人とも相変わらず痛いところを・・・!
とにかく、次の更新はこんなに遅れることがないように気を付けたいと思います。
皆さんも洗濯機に物を出すときは、ポケットの中身をちゃんと確認しましょう。
特にティッシュとか、鍵とか、USBとか!
では待て次回!(´;ω;`)




