ギルドの門を叩くもの 一章 11 後編
コトハは布でぐるぐる巻きにした本と太刀を持って部屋を出た。
廊下をギルドの入り口方面に歩き階段を下りる寸前に一度自分の格好を見て立ち止まるも、意を決して階段を下りる。
「あ、コトハ!
みんなー!
コトハが目を覚ましたよ!」
階段から下りている途中、酒場として経営もしているホールでちょうど注文されていた料理を運んでいたであろうサラがこちらに気づき、周囲に大きな声をかけた。
「あ、コ、トハさん?」「あれ?」「良かった、気が付いたんだ。」
様々が飛び交うと同時にワッと数名がこちらに駆け寄ってくる。
が、一番先にコトハの前に現れたのは以外にもセバであった。
以前にも変わらぬ高級感の感じられる白いスーツの様な冒険服を着ており腰にはレイピアがぶら下げられている。
背は高い彼は、コトハの頭一つ分は高く自然に彼女を見下ろす形になる。
彼はコトハの前に立ってから一言も言葉を発していない。
ただ、ジーッと彼女を見ている。
「なんですか、私は見せ物ではないのですが。」
少し苛立っている為か無意識の内に棘のある言葉が出てくる。
セバはようやく口を開く。
「お前、一体誰だ?」
ドシャー!
彼の発言に周囲の人がひっくり返るという言葉道理に滑った。
「ハッハッハ!
こいつがコトハな訳が無かろう。
あのかわいげな顔とは裏腹に男で、堂々とギルドの建設をうたった奴はこんな見目麗しい女性な訳が無かろう。」
「・・・だから気にくわないんだ。」
完全にコトハを今も男と勘違いし、目の前にいる女性コトハを別人と勘違いしているセバはコトハのその言葉をハッキリと聞き取った。
そして同時にコトハから滲み出る殺気にも気づく。
もう、慣れているつもりだった。
やっぱり、嫌だった。
コトハは無言でセバのそばから離れ、近くにいたサラに「マスターとオルトスは?」と訪ねた。
一瞬惚けていたサラは我に返りその質問に答える。
「えっと、応接室にいるんじゃないかしら。」
「分かった。
ありがとう。」
「え、本当にコトハ?」と周囲の様子からセバはようやくコトハの正体を知ったようであった。
コトハはそれを完全に無視し、応接室へと向かおうとした。
「ちょーっと待った。
あんたが新入りのコトハっていう嬢ちゃんかい?」
今までの様子を見ていた1人の人物が区切りを見たのかコトハに声をかけてきた。
声の主の方を振り返ると丸テーブルの酒場の方にいた。
そこには女性1人と男性2人がいた。
女性は全体的に黒く露出度が高く放漫な胸のある男性なら誰もが振り向くであろう見事な赤毛の長髪の女性で、男の内の背の低い方が横に体格が延びており何処かモグラのような風貌を持ち小さなサングラスゴーグルを身につけており焦げ茶の短髪をしており目の色はゴーグルで伺いしれない。
そしてもう1人の男は逆に背が高く顔をスカーフで隠してしまい用紙は伺い知るコトハできない。
声をかけてきたのは女性の方だった。
「反応したってことはあんたでいいな。
私達はこのブルーバードのチーム"オロチ"。
私はそのリーダーであるアンジェリカ。
声をかけたのは他でもないわ。
貴方の持つアーティファクトについて話があるのよ。」
アーティファクトといわれ直ぐに本のことを思い浮かべる。
それがなんだと無言で視線を送ると、アンジェリカという女性は直ぐに話を切りだしてきた。
「あんたのそのアーティファクトを譲ってほしいってだけさ。
値段はいくらでもはず、ちょ、ちょっと!」
話の途中でコトハが背を向け歩き出したのを見て彼女は慌てるような口調になった。
「申し訳ありませんが、私は自分が手に入れた物をそうほうほい手放すつもりも売るつもりもありません。
すみませんがお引き取りください。」
「・・・ならしょうがないね。」
コトハのその言葉にアンジェリカは落胆とも不敵とも取れる言葉と笑みを浮かべる。
不審に思ったコトハが振り返った瞬間、コトハの体は宙に浮いていた。
二階の骨組みに届きそうな高さまで。
不意の出来事だったためコトハは本を手から話してしまった。
太刀はしっかりと帯に結び付けていたため落とさずにすんだ。
奇妙な浮遊感を経験している間に布に包まれていた本はアンジェリカの手に落ちた。
瞬間、アンジェリカ達"オロチ"は目にも留まらぬ早さでギルドの入り口から飛び出していった。
ゆっくりと着地したコトハは一瞬唖然としたが直ぐに顔を上げ「待てー!」と叫びながらアンジェリカ達を追いかけギルドを飛び出す。
「おいおい、いったい何の騒ぎだ?」
「あ、マスター。」
そんないざござの嵐がすぎて直ぐマスターとオルトスがホールに現れた。
それに気づいたのはサラである。
「また、オロチがやってきて、またやらかしていきました。」
「・・・・・・・・まさか、また新人に絡まっていたのか。」
「・・・はい。」
「ふぅ」とマスターは小さくため息を付く。
そしてオルトスを見てオルトスもマスターが何を言おうとしたのか悟り、やれやれと言った感じでコトハ達を追いかけギルドを後にした。
「ホッホッホ!
これだから新人をいじるのは楽しいんだから!」
「リーダー、後でちゃんと返してやってくださいよ。」
「わかってるわよ。
でもただ返すのも面白味が足りないから、どっかに隠してみますか。」
コトハを素早い動きで巻いたチームオロチは港町に着ていた。
何処かおもしろい場所はないかと首を回していると突然視界が暗転した。
そして次明るくなったとき、驚いて唖然としていたが本が無くなっているのに気が付いた。
「どこいった。」
一方コトハはアンジェリカ達を追っていたが、町の複雑な地形も相まって完全に見失った上に迷子になっていた。
一息付き空を見上げる。
空は青く雲一つ無い快晴であった。
海猫が鳴き極平和な空だ。
同時に何かの気配をコトハは感じ取った。
気配を探り視線を動かす。
そして、視線の先にとらえたのは今にも自身を飲み込もうとした深い闇だった。




