ギルドの門を叩くもの 一章 11 中編
「・・・もう、調べられたのか。」
場所は変わってコトハが寝かされていた個室。
コトハは数十分前に意識を取り戻していた。
ただ、長く体を動かしてなかったせいで動けず、意識も現実なのか夢なのかハッキリとしていなかった。
ようやくなれてきた頃、ベットから起きあがろうとしてオルトスとマスターの会話が聞こえ自分が"調べられていた"ことを知ったのである。
窓から光が射し込み部屋は明るい。
右手に当たるテーブルには太刀が立て掛けられ、白い髪結いとあの本が置かれていた。
日の光が本の中央部分にある水晶球に反射して突き刺すような強い光があった。
両手を開いたる閉じたりした後、両肩を内側と外側に動かし凝り固まっていた上半身をほぐした後、ベットから降りて髪結いをとると鏡の前に立ち髪を頭の根本から結い上げるように集め後頭部で結んだ。
服は誰かが着替えさせてくれたのであろう。
あのくたびれた黒い服ではなく、白いブラウスにズボンのような格好をしており改めて部屋を見てみるとベットの足下に紙で出来た茶色の箱があった。
その箱を見てみると"人形の縫い針店発送"と書かれたラベルが貼り付けられ、そんなに眠っていたのかと実感する。
窓を閉めた後、箱を開けた。
中には頼んでいた白い衣と腰に巻き付けるような大きな布、他には"この着物の着方"という取扱説明書が入っていた。
女性らしさを意識したものでかつ、動きやすさを重視したのか上の衣は両袖に切り込みが入り紐で繋がって肌が見える。
これでもこの国特有の熱気を配慮してくれた設計なのだと受け取っておく。
~着替え中~
数分たってコトハは渡された衣を着替え終えた。
窓を開き鏡の前に立つ。
白い上の衣には雪花絞りという蒼色の模様があり袖山の部分は切れ込みが入り紐で繋がれているため肌が若干露出している。
袖は手首の部分まであり袖振りも普通の着物と同じ長さである。
但し問題は袴であった。
確かに袴を注文したはずなのに白く端には青い波の模様の大きな布が入っていた。
後スパッツと呼ばれる腰から膝まで届く黒い股引のようなものが入っており、取扱説明書を読んでようやくその着方を理解した。
要は大きな布を腰に巻き付け腰紐で固定しそのスパッツを履くのである。
しかしそれでは前の部分まで隠れることが無く一緒に入っていた前掛けと一緒に縛ることで解決した。
さらに丁寧に靴下まで入っていた。
ブーツを履いていてどっちにせよ見えることはないが、裸足でブーツを履き続けるよりもましだろう。
自分の胸に手を当てる。
そして改めて自分が"女"だと言うことを思い知らされる。
「もう、過去は振り切った。
別にこれでいいじゃないか。」
自分を納得させるようにコトハ、彼女は呟いた。
いつも男として振る舞ってきたせいで、女性らしい服や言動を苦手としている。
それでも、それでも、私は志を掲げていながらまだ"偽っている"。
偽っていてはいけないとは分かっている。
だがどうしても不安になる。
きっと此処の人たちはそんなことを気にせず笑って許してくれるだろう。
とても暖かく、大きな人たちだ。
しかし、怖かったのだ。
その証拠に私もオルトスを避けていた。
踏み込まれたくない自分の領域には、入ってきて欲しくない。
これからの自分がどうなっていくのかも不安で思わず突っ走ってしまう。
本と太刀のおいてあるテーブルに目を向け歩き出す。
そして立て掛けてあった太刀を拾い上げ横に持つと、少しだけ刃を抜いた。
太刀は日光の光を浴びて反射し輝きを起こす。
刀を少し傾け自分の目元が映った。
濁った瞳をしていた。
(母上。
私は一体どうなるのでしょうか。)
心の中に母の顔が思い浮かぶ。
まだまだ未熟だな、と刀を再びしまいふっと小さくため息を付いた。
「お似合いですよマスター。」
突然声が聞こえ反射的に抜刀の構えをとる。
「驚かせて申し訳ありません。
エリュムスです。」
コトハの殺気を感じてかエリュムスはここですと言わんばかりに声を出す。
コトハも声の発生源を探し視線を動かした後やがて本にたどり着き、そこであのほんの中央にある水晶からあの時見た緑の騎士が小さな姿になって立っていた。
「・・・小人?」
「違います。」
コトハの言葉に突っ込みを入れたエリュムスは直ぐに言葉を繋ぐ。
「貴方は"審判の書"の所有者として選ばれました。
私はその書物の中に眠る"守護者"の1人です。
貴方が私の真の名と招来の言霊を唱えたことによって目覚めることができました。」
「待て、・・・確かに私はお前を喚んだのかもしれない。
だが、あの時私は自分の意志ではなく体が勝手に動いたような感じだった。
それに審判の書とはなんだ?
お前は一体何者だ?
なぜ審判の書とやらがルットが持っていた?」
「マスター、質問は一つに絞ってください。
審判の書とは再生の運命を委ねられたものに渡される証。
そして本のマスターを守るのが我々守護者です。
ルット、と言う存在は知りません。
貴方の言い方だとその方が我々をマスターの元へ運んでくださったのでしょう。」
エリュムスの言い方に何処か引っかかりを覚え殺気と刃を仕舞いながら、本に歩み寄りそっとエリュムスに触れようとした。
しかし手は触れることなくエリュムスを貫きそのまま通り過ぎた。
驚いて手を引っ込めるとエリュムスがコトハの次の質問になるであろう答えを出す。
「私は現在このほんの魔力の力を借り姿を投影しているだけにすぎません。
私が実体化をするには貴方が本を持っているか魔力を接続できる状態でなければいけません。」
「あ、ああ。
いや、私が聞きたいのはお前いつから意識があったんだ。」
「強力な魔力の重圧を感じてからですかね。
ハッキリと意識を持ったのはマスターに真の名を喚ばれてからですが。」
「・・・一応聞くがまさかそこからずっと意識があったのか。」
「はい。
ですからその格好が似合っていますと。」
彼女はその言葉を聞いた瞬間絶句、そして殺気を放ち少しづつ刀をゆっくりと抜き始める。
シューと鋭い音が鞘から放たれる。
「エリュムス、私が着替えていたところも見ていたのか。」
「はい。」
「1つ入っておく。
決してこの部屋で起こったことは他言厳禁だ。」




