いろいろないろ
はじめは誰もまっしろだという。
何も描かれていないキャンバス。
でも、色も形もみんな一緒?
そんなわけ、ない。
あるわけ、ない。
だったら、私はもっと色んな物が手に入っても可笑しくない。
顔だって、視力だって、遺伝子的なもの。って言えば誰もが納得する。
なら、しょうがない。
しょうがないって、何だろうね。
諦めきれるの?
私は、でなきない。
まっしろのキャンバスに皆優しい色を与えていく。
赤、黄、青、黒。
量も模様もそれぞれの色に染まってく。無邪気に、受け入れる。
電車できゃっきゃっと楽しそうに話すお母さんと幼児。ポスターの色を見て、
「あか!あお!」
と指差していく。
「うん。赤だね。青だね。」
お母さんは優しくただ頷く。
暫くその様子を見ていた。そうしていたら、その子がふとこちらを向いた。
「ねぇ、これはあか?」
1面一色で塗られたポスター。
ポスター一面に広がる赤。誰が見ても、赤。だから、この子も赤だとわかるのだろう。
「お姉ちゃん。あか?」
純真無垢な瞳で貫く。
「まっしろだよ。なんにもない。」
私はそう答えて丁度よく止まった駅に降りた。背中から聞こえた声が
「ありがとう」
って言った気がした。
受け入れた優しい色を振り返るとき。
幼い子は気づく。これは、ただの赤ではない。白ではない。黄ではない。黒ではない。
どこかくすんでいて、一種類に分類すべきものではない、と。