Story.6 メリルとLv.1訓練攻略 2
セビルさんに『どっちに行く』と聞かれたメリルは、暫く考えたあと、
「…じゃあ、右で。お前たちはどう思う?」
答えたかと思うと、逆にこちらにも聞いてきた。
……いや、そっちで合ってるから…特に何も言うつもりは無いんだけど…どう切り替えした方が良いものか……。
「今回はメリルの進級のために来たんだから、メリルの判断に任せるよ」
返答に困っていたワタシの隣で、セビルさんが返した。
だが、当のメリルはというと、セビルさんの返事が気に食わなかった様で―――
「なんだそれは。
そうだ、お前たち進級した後だったな。ということは此処の攻略法、知っているんじゃないのか?
その上で私に判断を仰ぐとは…よっぽど記憶力が悪いのか、それとも―――」
一息おいて、
「私を試しているのか」
と、睨みつけてきた。
セビルさんは慌ててフォローしようとする。
「いや、試すっていうか…メリルを試しているのは俺達じゃないし…学園側というか…えっと……」
……が、どうにも上手くメリルを大人しくさせられない様だ。
汗ダラッダラじゃんセビルさん。
此処は一発、正直に話しますかねぇ。
「攻略方法は知ってるよ。」
メリルの視線がワタシに移った。
相変わらず、睨んでいる様。
「実際ワタシらは情報サークルから得た攻略情報を便りに進級してるのが事実だし。
情報サークルってのは、ワタシらとほぼ同じ時期に入学してきた…まぁ、メリルのいう所の『最近増えた生徒』っていう新入生だけで構成されているんだよね。
ワタシ達の間では、旅団って言ってるんだけど。
そして旅団内では、訓練施設の情報が出回っててね。
ほぼ同時期に入学した生徒って言っても、それぞれ行動ペースは異なるから、中には5学年になったってヒトもいるくらいだよ。
そうやって先に進級した人達が、情報を置いてってくれてるワケ。
旅団は新入生だけしか入れない事になってて、存在すら在校生は知らないはずだよ。」
「そんなモノが…あるのか…」
「えーっ、それじゃあ俺入れないって事!?」
戸惑うメリルと違い、ウィルバーは食いついてきた。
「二人はさー、そこに入ってるわけ? いいなー俺もそういう情報欲しい!!」
「…はぁ。そうだよ、ワタシとセビルさんは、その旅団で知り合ったんだ。
知り合った当時、目的が同じだったからPTを組んで…そのままズルズルと一緒に行動してるの」
「もっとも、僕はその旅団、すぐに脱退したけどね」
溜め息をつきつつウィルバーに答えるワタシの隣で、セビルさんは苦笑した。
そーいやそうだった。ワタシがPT申請した直後、セビルさんは旅団を脱退してたな。「やっぱり僕にはああいうところは合わなかった」って言ってたけど……。
ワタシはただ、情報が欲しくて入ったし、実際有力な情報が得られるから、入ったままなんだけどね。
ってゆーか。
ウィルバー騒ぎすぎだ。「入りたい入りたい!」ってなんども繰り返すなよ。
セビルさんと二人で宥めようとしてるけどさ、全然落ち着かない!
ウィルバーの相手するのって、ホント疲れるな…。いちいちわめくなっつーの……。
仕方が無いからウィルバーの相手を一旦やめて、メリルに向き合う。
「とりあえずLv.3訓練までの情報は手に入れて整理してある。
そこではその情報を便りに進級狙って行くけど、とりあえず此処とLv.2はメリルのための進級だから、メリルに判断してもらうからね」
「情報を共有したいのは山々なんだけど、新入生間でしかやり取りしちゃ駄目だって事になってるから」
ワタシの後に続けて、セビルさんが付け加えた。
「わかった。お前たちが卑怯な手で進級していることがな。
さっきも言ったが右だ。もし私が間違えていても、私が3学年に上がるまでは、訓練に付き合ってくれるんだろう?」
ニヤリと黒い笑みを浮かべながら、メリルが言う。言い終えると、薄暗い通路へと進んで行った。
ハッキリ卑怯だと言われるとは思わなかったな…。
ちょっと驚いたけど、まぁ、いいか。
セビルさんと二人、メリルの後を追いかけた。
ウィルバーは、というと。
「俺も入りたい!」とまだ繰り返し言っていたが、これ以上相手にするのは面倒だから、無視。
無視を続けていると、慌てて追いかけてきたが。