Story.5 メリルとLv.1訓練攻略
第一階層のエントランス。
係員の女性はいつもの口調でいつもの様に説明し、いつもの様にワタシ達に護符を渡し、いつもの様にワタシ達を施設内に押し込むと、扉を閉め、鍵を掛けた。
…たまには、こっちの返事を聞いてから押し込んでくれよ…。
扉を睨んでいると、背後からセビルさんに声を掛けられる。
「ラフィリア、装備のチェックを」
「あぁ、ハイ。」
バラバラと手持ちの装備品を広げ、一つ一つ、装備品の状態を確認しつつ、装備していく。と、頭装備を装着した時に、メリルが眉間に皺を寄せて、言った。
「……なんだ、それは」
「ん? 猫耳。カワイイっしょー♡」
笑顔で答えたワタシに、メリルは怪訝な顔つきで更に言う。
「……お前は一体何がしたいんだ? それで戦えるとでも思っているのか!?」
「これ一応防御装備だよーん☆ 何にも装備してないよりは、マシだよ」
「…最近、急に…防衛学園に生徒が増えたが、お前の様におかしな奴ばかりだ!
メイド服を着てる者、浴衣姿の者、水着姿も居たな!! その上、緑色のレオタード姿の者も居たぞ!!!」
メリルは、突然怒鳴りつける口調に変わった。
ワタシにはあまり堪えて無いが、それに気づきつつも、構わずメリルは続ける。
「……そういえば、お前も少し前までは緑色のレオタードを着ていたよな? 同系色のカツラまでつけていなかったか!? 一体何を考えている!!」
「あの格好は…アレはアレで、あの格好でしか発動出来ないスキルとかあったし、まぁ趣味の一つかな。それに、新入生間で流行ってたしー」
「お前たちは…!!」
まだ何か言いたげだったが、とりあえずメリルはそこでやめた。
ワタシには何を言っても無駄だと思ったんだろう。
視線をセビルさんに移し、憐れみの表情で言う。
「……お前、こんな女と普段からPT組んでて…大変だな」
「…慣れたし。」
そう。慣れって怖い。
セビルさんも最初は戸惑いがちだったけど、今じゃワタシが何かしてても全く気にしてない。
むしろ常に受け入れ態勢。
凄いね!!
そうこうしてる内に、気付けば周囲を三匹の大型ネズミに囲まれていた。
「…ちっ、奥に行く前に、気付かれたか!」
メリルは舌打ちしつつ、戦闘態勢に入った。
彼女は続けてワタシ達に言う。
「ラフィリア、セビル。3学年の実力、見せてみろ!!」
「わかった!」
「えー、この前の影戦で見せたじゃーん。今更ぁ?」
良い返事をしてジャンプスキルを発動させたセビルさんを見送りながら、ワタシは言った。
横でウィルバーが、『俺も居るんだけど…』とどこか淋しそうにしながら言ったが、ワタシとメリルの耳には届いていない。
「全く…いちいち口答えするな! ナックルシュート!!」
「ハ~イ。ライトニングボール♪」
メリルの攻撃で一匹倒れたが、ワタシの攻撃では倒れなかった。死に掛けにはなったけど。
ありゃー。しまったー。(←危機感ゼロ
そこへ、降りてきたセビルさんが、無傷のもう一匹を倒す。
その後、おまけのウィルバーが死に掛けの一匹を倒した。
おー、お疲れおまけウィルバー。
*****
戦闘終了後、ネズミの落としたアイテムやら、持ち帰れそうなネズミの肉を拝借する。
「…ラフィリア、なんだあの気の抜けた攻撃は?
お前3学年じゃないのか!? ……なんだその本、ボロボロじゃないか!!」
「ん? そだよー。こいつ弱装備だしー、ボロボロだしーで火力悪いんだー☆
でもそろそろホントに壊れそうだから、壊そうと思って持ってんの。大丈夫、余分に武器持ってきてるからー♡」
持ってきた皮袋に、肉を詰めながら答える。ワタシの足元には、件のボロボロになった装備品の本。
メリルはまだ何か言いたげだったが、セビルさんに止められ、ぐっと口を塞いだ。
「もういいから。ほら、奥の道、左右どっちへ行く?」