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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生存競争『オーバーラン!』

作者: スプライト

 どうもスプライトです!

 今回は一発ものになります!

「はいはーいっ! みっなさーんっ! 今夜もやってきました『生存競争』のお時間ですよー! はやくはやくっ、位置についてくださーいっ!」


 あちこちに散らばり、各々の時を過ごしていた俺達はその声で立ち上がり、集合を始めた。

 ここは――真っ白な部屋だ。とてもとても大きな、真っ白い部屋――いや、箱といった方が正しいかもしれない。なにせこの場所には窓も扉もない。しいていえば、不定期に開く大きな『穴』が入り口――いや、出口だといえるけれど。

 ――ともかく、俺達は気が付くとこの場所にいた。


「みっなさーん! お元気ですかー? 私はとっても元気ですよー! あ、ご紹介遅れました! 初めましての方は初めまして、二回目以降の方はつつしんで拝聴してね? 私の名前は大羽オオバランだお! 『オーバーラン』こと、ランちゃんだおーっ! 超絶美少女天使だよっ、キャピっ☆ ……って、見えないか(笑)!」


 声は部屋全体に響き渡っているが、それがどこから発されているのかはわからない。天井から聞こえてくる気も、今は閉じている穴の向こうから聞こえてくる気もする。


「本当なら説明なしに理解してて当たり前なんだけど、私は優しい優しい天使様だから、頭がすっからかんな皆さんでもわかるように、この生存競争――レースについて教えてあげるねっ!」


 深く息を吐いて心を落ち着かせ、二度目になる説明に耳を傾ける。――そう、俺はこの説明を受けるのは二度目なのだ。一度目は混乱で動けなかった――不参加でレースが終わっていた。

 でも今回は違う。自分の置かれた状況を理解し、既に決意も済ませていた。


「ま、説明っていっても、皆さんはもう死んじゃってる、ってだけなんだけどっ! キャハっ☆」


 とはいえ、一字一句たりとも聞き逃す気はない。なにせ、自分の存続に関わっているのだから。


「死んじゃったからには、お金に溺れて自分を幸せだと勘違いしてたカワイソーな人も、誰にも愛されず一人でおっんだ惨めな人も、人を殺した罰なんて受けちゃったごくろーさまーな人も、幸せが何かすら知らないままのお馬鹿な赤ん坊も、みーんなこのレースに参加するの! 善悪? なにそれ、おいしいの? みたいなっ! キャハハハハっ☆」


 周囲では、まだここに来たばかりなのだろう人達が泣き喚いてたり怒鳴ったりしている。だが、自称天使の声だけは、はっきりと耳に入ってくる。聞きたくないと叫んで耳を塞いでも、その声は耳のずっと奥まで届いてくる。だが、今はそれがありがたい。俺には足を引っ張られてまで『勝利』できるだけの自信はない。重要な情報を聞き逃し、ミスして負ける……なんて結果はごめんだった。


「もうすぐその部屋におっきな穴が開くんだけど、そこから落ちた所でレースはスタート! 部屋の端っこの方に居れば落ちない……かも? でもま、残ってたところで干涸ひからびて死ぬだけどねっ。チキンちゃんにはお似合い、みたいなっ。……あっ! 天使はチキンじゃないよ! 私達の羽を鳥みたいな下等生物と一緒くたに考えてくれちゃってるトリアタマ君は、今ここで殺してあげるねっ☆ ……なーんてね、うっそだよーんっ! 鳥よりも下等生物な皆さんにどう思われたって、私が何か感じるわけないじゃなーいっ! ねえねえ、騙された? 騙された? キャハハっ☆」


 この大きな部屋の端には棒のようなものがたくさん転がっていた。――あれは元々人間だった物だ。死んでこの部屋にやってきたものは、およそ一週間もすればああなる。いや、三日目にはもう動けなくなり、レースの参加資格をほぼ失う事になる。そして最後には棒でさえなくなり――崩れさり、壁や床に取り込まれるように消えるのだ。

 だから、二日目――今日。これが俺にとって最後のチャンスだ。

 ……二日連続してレースが開催される時にやってこれた俺は、その時点でかなりの幸運を手にしているといえる。レースはある意味、既に始まっているのだ。


「――って、あわっ!? もう時間がなくなっちゃう! えーっとね、穴から落ちて、走って、ゴールしたら、生き返る権利がをゲット。はい説明、終わり! あとはなんかもう、適当に頑張ってねっ! ……あ! もちろんだけど、負けても死ぬからね! ま、負け犬なんて存在しても邪魔……っとっと、言い間違えちゃった、テヘっ☆ 死んじゃうのは、邪魔だからとかじゃなく、敗北なんて恥を背負い続けないで済むようにとゆー私からの配慮な訳ですよっ。私ってばやっさしーっ! こりゃモテまくっちゃうのも仕方ないね! 当然だね! 超絶美少女慈母天使様だねっ! あ、慈母っておばさんっぽいからやっぱりなし! あの言葉って、実は『ババア』って言いたいのを誤摩化してるだけ――」


 話の途中で突然、部屋の中央が大きくくぼんだ。悲鳴と怒声が飛び交う中、俺は『位置につく』。


「――って、あわわっ! ほんとに始まっちゃった! えーっと、はいっ! スタートです! よーいドンっ……じゃなかった! レッツ――」



「――死ぬ気で走れ(オーバーラン)!」



 決壊したように床が波打ち、穴が大きく広がった。真っ暗な穴の底を、睨みつける。

 集中力を高めて続けていた俺は、強く地面を踏みしめ、そして一息に飛び込んだ。

 浮遊感と共に、俺達は穴の向こうへ一気に雪崩れ込んだ――……


















 ――穴の先には、ティッシュが待っていた。


 ……以上、お目汚しをばっ!



 「自分で解説しちゃうの!?」コーナー


 ・卵細胞(ova)……雌性で不動の配偶子。卵または卵子とも呼ばれる。他に、キャラクター名を付ける際のアイデアとして用いられる事もある。


 ・オーバーラン……鉄道車両や飛行機等の乗り物が決められた停止位置を行き過ぎること。転じて、限界を超えて走る事を指す……かも。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] オチを見た瞬間、「え、白じゃなくて肌色だよね?」……と思ってしまった自分自身。 [一言] 面白い作品わありがとうございました。
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