食べ歩き日記
初投稿なので、読みずらい文章が苦手な方は注意
学校から歩いて5分。
人通りの多いところにその喫茶店はある。
店名は覚えていない。
慣れた動作でドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
心地よいソプラノボイスが耳を打つ。
「一名様ですか?こちらへどうぞ」
彼女の後をついていく。
「注文が決まりましたらお呼びください」
微笑みと共に彼女は去っていく。
去り際まで美しい。
立つ鳥跡を濁さずという言葉がある。
正しくこの状況を表現するためにできた言葉なのであろう。
ただ、注文は既に決まっている。
呼び止めなかったのは様式美ってやつだ。
「すいません、注文いいですか」
「はい、少々お待ちください」
彼女を待つ。それだけで心が豊かになる。
「はい、注文お伺い致します」
「あのぉ、このチョコケーキと紅茶をください。」
「生クリームはお付けいたしますか?」
「あ、お願いします」
「了解いたしました」
微笑みと共に彼女は去っていく。
「だが、それでいい。」
ケーキと紅茶を待つ僅かな時間、告白した相手から 返事をもらう。
……そんな時間にも似ている気がする。
ふと……彼女の気配を感じる
「お待たせしました」
テーブルの上に出てきたのはいい香りの紅茶と
山盛りの生クリームが乗ったチョコケーキ。
「こちらでよろしいでしょうか?」
返事の代わりに紅茶を口に含む。
「ごゆっくりどうぞ」
舌を火傷してしまった。
慣れないことはするものじゃないな。
視線をテーブルに戻すと紅茶と生クリーム。
一つおかしいことがあるとすれば生クリームにケーキが埋もれてしまっていることかな?
周囲を見回してから紅茶に生クリームを乗せる
紅茶はストレートこそ至高だという人もいるが、男もいろいろ女もいろいろ紅茶の飲み方だっていろいろであってもいいと思う。結局おいしければなんでも良いのだ。
紅茶に白い半固形状の物体がメルトする光景を楽しみつつケーキを頬張る。
「んむ」
程よい苦み、上品な甘さ、至福……。
ケーキと幸せを同時に噛みしめる。飲み込むのが惜しい。
そのまま紅茶を飲むと、柑橘系の香りがチョコの香りと共に鼻腔を駆け回る。うわぁ、幸せだ。
幸せな時間はあっという間に過ぎていった。
立ち上がってレジで会計を済ませ、外に出る。
去り際を見送る彼女もやっぱり素敵だった。
「……また来よう」
次はいつ来ようかと考えながら、帰路に就く。
店に入る前よりも世界が明るくなった気がした。