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一;給食費の罠

 俺は、毎日退屈だった。

大人が、俺にいつも説教するときの一言は決まって、

「お前も丸くなれ。」

だった。

そんなの糞くらえだった。俺は丸くなんてなれなかった。だから毎日喧嘩して、喝アゲして。

それじゃだめだってことなんかわかってた。わかってたけど丸くなんてなりたくなかった。

いつも俺に説教する大人どもの言う

「丸い人間」になんて、なりたくなかった。

だけどそんな俺が、ある奴を知って変われた気がするんだ。

今日は、そのときの話をしてみたいと思う。気入れて読んでくれよ。


 それは俺が中二の頃だった。その頃には俺はちっとは有名な不良で、学校で俺に話しかけてくる奴なんか一人も居なかった。学校でなにか事件が起こるたび俺が疑われる。今日もクラスの誰かの給食費がなくなったらしい。俺はすぐに生徒指導室呼び出された。

「お前、盗まれた給食費知らないか?」

そう俺に聞いてきたのは生徒指導の・・・名前はなんていったかな、教師なんか大嫌いだから名前なんて覚えてないけど、まぁ、生徒指導の教師だ。

「知らねぇよ。」

俺は、他人の給食費を盗むほど金に困っていなかった。

そんな俺の言葉を無視するように教師は言葉を続けた。

「お前が何でそんなに荒れてるかは知らないが、他人の物を盗むのは最低だ。」

教師は、警察が泥棒に言うような、諭す口調で話し出した。

俺はこんな奴の話なんて聞いちゃいなかった。だって俺は盗んでないんだから。

教師は延々と説教をした後、俺に盗んだ金を返せとまで言ってきた。

「早くこの問題が解決できれば、相手だってあまり傷つかずに済むんだぞ。」

俺はこの言葉にキレた。言葉では言い表せないほどキレた。

「ふざけんな!コラァ!俺が取ったって証拠はあるんか?あぁ?テメーいい加減なこと言ってっとぶち殺すぞ!」

そう言って俺は相手の教師の胸倉をつかみ殴りかかった。

そのとき生徒指導室の扉を開けて‘女’が入ってきた。

「やめて!あなたが先生を殴っちゃったら、その罪を認めてることになるのよ。」

‘女’が俺にそう言った。

俺は、その女が誰か知らなかったので、喝アゲするときのようにこう言ったんだ。

「テメーに関係ねぇだろうが!黙ってろや!」

だけど女はおびえる様子も無く冷静にこう言った。

「黙らない!だって私はあなたが盗んでないことを知ってるから。」

俺はその言葉を聞いて驚いた。これまで俺のことを弁護してくれる奴なんて居なかった。

担任の教師ですら、俺が金を盗んだと思っている有様だ。

そのとき、教師が口を開いた。

「話を聞かせてくれるか?え〜と、お前は確か二年一組の・・・。」

教師はこの‘女’の名前を知らないらしい。

‘女’がそれに呆れる様子も無く。

「安部リサです。」

と自己紹介をした。

「あぁ、安部か。で、こいつが盗んでないのを知ってるってどういうことだ?」

教師がさも、信用してなさそうに聞いた。

一応聞いておく、見たいな感じだった。

そのときには俺も落ち着いていたので、椅子に座って安部の言うことを聞いていた。

「はい、給食費は盗まれていないんです。あの騒ぎは、竹下君のことを嫌っている男子たちが盗まれたふりをしているんです。」

竹下、これは俺の名前だ。この機会に自己紹介しておこうか。

俺の名前は竹下透。年は、中二だから十四歳だ。

誕生日は・・・まぁ、そんなことはいいか。

で、この安部とか言う女が言ったこととは。

まず、金を盗まれた男子というのは前に俺がぶっ飛ばした奴らしい、そのときのことを恨んでいて仕返しをしようと企み、実行したというわけだ。

「なんで、私がこのことを知っているかというと、昨日の帰りあの人たちがこのことを話しているのを聞いたからです。だから今日あの人たちをずっと見てたら竹下君が学校に来る前に給食費を二年の男子トイレに隠して、竹下君が学校に来たら騒ぎ始めたんです。」

ここで、教師は安部に聞いた。

「それは本当の話か?」

安部はすかさず、

「はい。ここにその盗まれたって言われてる給食費を持ってきました。」

そう言って、自分のポケットから給食費の袋を取り出した。

「うむ、ここに給食費があるってことは、お前の言うことは正しいらしいな。

 良かったな竹下、金がこうして出てきて。じゃあ二人とも今日は帰っていいぞ。」

そういって教師は生徒指導室から出て行った。

俺は、黙って安部にお礼を言うことなく部屋から出ようとしたら、安部が声をかけてきた。

「ねぇ、一緒に帰らない?」

俺は驚いた、この俺と一緒に帰りたいと言う女、いや、人間がこの世に居たなんて。

俺は、いつもの人を遠ざけるような口調で。

「・・・なんでアンタと一緒に帰らなきゃいけないんだ?意味分かんねぇし。」

と言ってさっさと帰ろうとすると、

「いいじゃん、もう外暗いし、一人じゃ怖いよ。」

安部にとってはこの言葉は心底本当らしかった。俺は今日のことに一応感謝していたから、しぶしぶ了承した。

「・・・わかったよ。お前ん家どの辺り?」

遠いかったら嫌だったので聞いてみると、

「そんなに遠くないよ。歩いて二十分ぐらい。ここからだと向こうのほうかな。」

安部が指をさしたほうを見ると見事に俺の家と反対方向だった。

俺はため息を付き、

「さっさと行こうか。」

と言って生徒玄関のほうに歩き出した。






この話は十話までで終わらすつもりの短い物語です。最後までお付き合い下さい。

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