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第七十三話:魔導インフラの極致、アルエド・アップデート

ゲームを通じたストレス解消とデータ収集という、ある種の「精神的インフラ」が整ったところで、アルスは次なるステップへと視線を移した。五十万人の新市民、そして続々と属領化を希望する国々を支えるには、今の魔王城周辺の設備だけでは物理的にキャパシティが足りないからだ。


「……シルフィ、現在の物理リソースを再分配しよう。娯楽の次は、この広大な領土を支える『循環型システム』の構築だ。……演算開始」


アルスの眼鏡が青白く発光し、アルエド全土のホログラムマップが書き換えられていく。


【拡充パッチ案:アルエド・グランド・リフォーム】

1. 魔導ハイウェイ「シルクロード・パッチ」の全通 ダリルの工作部隊と獣人たちの怪力により、大陸を縦断する超高速道路が完成。路面には「慣性制御魔法」が常時展開され、馬車や魔導車両が時速百キロを超えても揺れ一つ起きない。


ダリルの報告: 「閣下! 整備中に襲ってきた魔物どもは、全部ガードレールの支柱代わりに叩き込んでおきましたぜ!」


2. 海底都市「アクエラ・バブル」の連結 海洋国家アクエラの技術とアルスの「水圧相殺演算」を融合。海中と陸上を巨大な透明チューブで繋ぎ、新鮮な海産物が一秒で王都の市場へ届く物流網を構築。


海皇の歓喜: 「これで陸の『とんかつ』と海の『深海ウニ』が同時に食卓に並ぶ……。もはや神の国だ」


3. マジルカ・タワー(魔導発電プラント)の設立 マジルカの魔導士たちが持て余していた魔力を、アルスが開発した「超伝導魔力バッテリー」へ一括集約。街全体の街灯、調理器具、そしてインターネットに至るまで、すべてが「基本使用料無料」で供給される。


「……ふぅ。これで生活水準のベースラインは整った。リザ姉さん、防衛の進捗はどうかな?」


リザはオンラインゲームで鍛えた「複数同時認識」の感覚を活かし、最新の防衛システムをチェックしていた。 「バッチリよ、アルス。城の周囲に配置した『自動追尾型・物理剥離砲』の照準、ミリ単位で調整しておいたわ。これなら天界の軍勢が押し寄せてきても、服だけ綺麗に剥ぎ取って無力化できるわね」


「……それはそれで、国際問題になりそうな無力化パッチだね」


さらには、ミーナが監修する「巨大食料生産プラント」も完成。 アルエド一号(米)を自動で炊き上げ、各家庭の「魔導配膳ポッド」へ転送するシステムまで稼働し始めた。


「アルス様、これでアルエドは一つの完成された生命体システムのようになりましたわね。……ですが、あまりに快適すぎて、民たちが働かなくなるのでは?」 シルフィの懸念に、アルスは不敵な笑みを浮かべた。


「大丈夫だよ、シルフィ。人間は『暇』になると、より高度な『知的好奇心』や『芸術』を求めるようになる。……次は、この余った労働力を使って、『月面進出パッチ』のシミュレーションを始めようか」


アルスの野望は、もはやこの大地すらも狭すぎると言わんばかりに、星々の海へと向けられようとしていた。



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