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第六十二話:怒涛の版図拡大、あるいは「五〇万人の最適化」

君主国家アルエドで開催されたG6首脳会談。それは、選ばれた強国たちが「世界の理」を共有する輝かしい舞台であったが、そこに呼ばれなかった諸国にとっては、自国の存亡をかけた絶望のカウントダウンでもあった。


「アルエドの物流網から外されることは、死を意味する……。それならいっそ、誇りを捨ててでもあの『理』の内側へ!」


その動きは、雪崩のように始まった。


まず動いたのは、大陸最大の版図を誇る獣人たちの国、「獣王国ガブリアス」。獣王ガブリアスは、自慢の牙を剥くこともなく、魔王城の正門前で膝をついた。 「アルス君主……。我ら獣人に、貴公の国の『高タンパク・高効率な飼料加工技術』と『全自動・毛並みケアパッチ』を恵んでほしい。属領となり、君が放つ『効率』の軍門に下ることを誓おう」


続いて、海洋国家「アクエラ」。海中では無敵を誇る彼らだが、近年の魔力変動による海流の乱れに苦しんでいた。 「陸に上がると干からびる我らを見捨てないで……! アルス様、海水を常に最適温度に保つ『広域・海洋温度管理システム』を導入してくれるなら、アクエラの海域すべてをアルエドの直轄港にして差し上げます!」


さらに、魔導士たちが寄り集まって建国されたばかりの新生国「マジルカ」。彼らはアイリスやエレナの「再教育」を受けた王都魔導士たちの噂を聞きつけ、「理論の正解を教えてください!」と、国家の全魔導書を差し出して降伏した。


極めつけは、国ですらない最大規模の山賊団。頭領ダリルが率いる五〇〇〇人の部下と家族を抱える武装集団だ。 「俺たちは国じゃねぇ。だが、この五〇〇〇人が路頭に迷うのは御免だ。アルス閣下、俺たちを『アルエド物流・高速道路整備隊』として雇ってくれねぇか!」


次々と押し寄せる「属領化」の申請。その総人口、およそ五十万人。 執務室で報告を受けたシルフィは、珍しく書類を落としそうになった。


「アルス様……! わずか数日で人口が五十万人も増加しました。食料供給、住居確保、そして身分証のパッチ適応……。通常なら数十年かかる作業量ですわ!」


「……やれやれ。みんな、そんなに一度に来なくてもいいのに」 アルスは眼鏡をクイッと上げると、手元のメインコンソールに「全世界・人口管理パッチ v2.0」をロードした。


「いいよ、シルフィ。五十万人くらい、今のアルエドの演算能力サーバーなら一分で『最適化』できる。 ガブリアスの獣人たちには、特注の『筋力トレーニング・アプリ』を。 アクエラの海には『全自動・浄化フィルター』を。 マジルカの魔導士には『物理計算式・魔法辞書』を。 そしてダリルの山賊団には、レイヴン父上の下で『地獄の交通安全合宿』を受けてもらおうか」


「「えええええええっ!? 五十万人を一度に教育するの!?」」


カイルとルナが絶叫する中、魔王城から巨大な魔導信号が発信された。 それは、五十万人の生活を一瞬で「アルエド規格」へ書き換える、慈悲深き侵略の光。


五十万人の新市民を得たアルエド。 それはもはや一つの国家という枠を超え、世界そのものを飲み込み、巨大な一つの「システム」へと進化していくのであった。

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