第六十話:世界を計算(パッチ)する会議、G6開催!
魔王領の「利便性」が天界までをも制覇した結果、ついに世界は一つの転換点を迎えた。アルスは今後の円滑な経済運用と資源管理のため、魔界大陸をも巻き込んだ史上最大の世界首脳会談を提唱する。
しかし、そこで問題となったのは魔王領の法的地位である。アルスは事務作業の効率化のため、シルフィに命じて一晩で国家設立の手続きを済ませてしまった。
「……というわけで、今日からこの地は『君主国家アルエド』として独立したよ。僕が君主、エドワード(カイル)とルナが王位継承者。シルフィ、国旗のデザインは一番視認性の高い配色にしてくれたかな?」
「はい、アルス様。黄金比に基づいた完璧な紋章を既に各国の外務局へ送付済みですわ」
こうして、魔王領改め君主国家アルドを会場に、通称「G6(Group of Six)」と呼ばれる首脳会談が幕を開けた。
【G6 参加首脳陣】
1・自由国家ランクル: 大統領。既にアルスの経済圏に依存しており、会議中も株価が気になって仕方がない。
2・聖王皇国アシュタリア: 皇主。リーズの実家。天使たちの認可が降りたことで、アルスを「現人神」に近い扱いで敬う。
3・サンライズ王国: 東方の島国。アルスたちの祖国であり今や同盟国。アルスの開発した「超伝導刀」の技術供給を受けるため、終始低姿勢。
4・ドミニアン帝国: 武力至上主義。リザがかつて暴れたせいで、皇帝はアルスの顔を見るたびに震えている。
シュテイン連邦国: 科学技術国家。アルスの「物理学パッチ」を魔法の一種だと思い込み、必死にメモを取る。
君主国家アルエド: 君主アルス。主催者。
会議室に集まった首脳たちは、あまりの緊張感に沈黙していた。だが、アルスが最初の一声を放ったのは、政治的な宣戦布告ではなく、極めて実務的な提案だった。
「……えー、各国の関税手続きがアナログすぎて、物流のレイテンシ(遅延)が許容範囲を超えている。今日集まってもらったのは、世界共通の『魔導・電子決済システム』の導入と、大陸間をつなぐ『超特急魔導列車』の路線敷設パッチを承認してもらうためだ」
「ま、待たれよアルス殿! それは我が国の主権を……!」 ドミニアン皇帝が勇気を振り絞って異議を唱えようとしたその時、ドアが開いた。
「お待たせいたしました、皆様。首脳会談特製、魔界の深層ハーブを使った『思考明晰ティー』と、天界の果実のタルトでございます」 給仕として現れたのは、魔界留学から帰還したミーナと、なぜか給仕係の見習いとして働く上級天使セラフィエルだった。
「なっ……! 魔界の猛毒食材が、こんなに美味に……!?」 「それに、天界のセラフィエル様が……お茶を注いでいるだと……!?」
首脳たちは、その料理の美味しさと、背後に控える圧倒的な「武力」、そして天界・魔界すらも手なずけたアルスの「管理能力」を目の当たりにし、完全に戦意を喪失した。
「……わかった。アルス君主、君の提案を受け入れよう。もはや抗う方が非効率的だ」 自由国家大統領が署名すると、他の首脳たちも雪崩を打つようにサインを書き込んだ。
「話が早くて助かるよ。これで世界のGDP(総生産)は来期で200%向上する計算だ。……あ、会議の後はみんなでホテルの『G6専用・サウナパッチ』を楽しんでいってね。外交には裸の付き合いが一番合理的だから」
こうして、世界は「アルエド」という特異点を中心に、物理学的に再編された。戦火による統一ではなく、「便利さ」と「美味しさ」による世界統一。アルスの眼鏡が、今日も計算通りにキラリと光った。




