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野良犬の遠吠え

作者: 三角

なにしゃべりゃいいのかわからんからさ、思いつきでしゃべることにするわ。いいよな?


神奈川のすみっちょで東京に憧れていた俺たち。

いつかは東京に出てって言い続けて気がつきゃこんな歳になっちまったな。


小・中と義務教育を終えて、近場の県立高校に進んでのんびりと過ごしてた。

お前と出会ったのは……どんくらいだったっけか。一年の時にはもう一緒だったか? まあいいや。


なんかしたいって言ってた。いつも、いつも言ってたよな。

顔合わせればいつもそうだ。


あ、そうだ。一年の夏休み前だよお前とはじめて話したの。

好きなバンドの話をクラスでしてて、お前だけイキってみんなが知らないバンド挙げてさ。


俺、そのバンドが好きだった。

だから嬉しかったんだよ。

そうか。そん時だったな。なんで忘れちまってたんだろう。ごめんな。


でさ、俺らバンド組もうってなってさ。

メンバー集めようぜって決めて、そのまま夏休みにはいった。

まずは練習からだよなってそん時ようやくバカな俺らは気付いて、安いギター買って練習をはじめた。どっちもギターなのは、お前がギターボーカルやるってごり押しするからだった。

バンド名、「野良犬」ダッセーよな。でもそれがいいよなって話してた。


練習は真面目にやったよな。楽しかったよ。結局夏休みほとんど費やしてもド下手なまんまだし、課題もなんもできなくてさ。

けどそれもロックだよなって笑いあってた。


あの三年間を無駄だったなんて俺は思ってない。今後も絶対思わない。


卒業したあと、お前は地元を出て就職して、俺は地元に残った。

お前が役所勤めかよって笑われたよな。俺さ、今じゃ親しみやすいって評判だぜ?


しばらくしたらまた地元で会って、一緒に音楽やろうって約束した。

そん時には現実を知ってて、プロになるなんてことは考えなくなったけど、音楽をやりたいって気持ちだけは変わらなかったよな、俺ら。


忙しいからって一年後には会えなかった。でも気にならなかった。

相変わらずお前は音楽の話しかしなくて、変わってねえなって思ったから。

安心したんだよ。変わらないって、すげえことだからさ。


なんだろうな。東京ってさ、空気悪いのか? いや、だってさ、お前クソ元気だったじゃんか。


それなのにさ、なんでガンなんかになるんだって。


あっという間すぎるだろ。なんもかんもがさ。病気がわかって、死んじまうまでさ、こんな短いのかよ。


最期にお前にも約束したけどさ、俺、音楽続けるよ。ひとりかもしれないし、バンドを組むかもしれない。センターにマイクスタンド立ててさ、伝説のギターボーカルは永遠だぜみたいなことしてもいいかな。


俺、弔辞が終わったら帰るよ。下北沢行くんだ。それで、歌う。お前シモキタで歌いたがってたもんな。

変わりに歌ってやるよ。

オリジナルだぜ? タイトルは「野良犬の遠吠え」ダセえだろ? でもロックじゃね?


歌うよ、全力で。遠吠えみてえにさ、わおーんって具合にさ、張り上げるよ、声。

そっちまで届くかな。

まあ、聞いててくれよ。届かなくても「聞こえねえぞ!」ってバカにしてくれよな。


けど、もしちゃんと届いたらさ、お前もななんか返せよな。

枕元に立ってもいいぜ。音楽の話またしようや。


じゃあな。

愛してるぜ……相棒。

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