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act.5 慟哭 (4)
冷凍された真印の死体を前にして、僕はそんなことを考えていた。
カバーの下に波うつ長い銀の髪。
まるで水の中で眠っているようで、おとぎばなしの人魚姫みたいだ。
高田院長が、頭部だけカバーをとって見せてくれた。
うっすらと微笑を浮かべているようにも見える、安らかな死に顔。
小奇麗にかたまった零印の顔より、よっぽど生きているような感じがした。
生きていた頃の真印の表情を思い出そうとしたけれど、なぜかうまく思い出せない。
淋しい。
急に、そんな言葉が浮かんだ。
淋しい。
淋しい。
淋しい。
それは水溜りに落ちる雨のように、僕の心に波紋を立てた。
淋しいよ、淋しいよ、淋しいよ
……お母さん!
気づいたときには、声をあげて泣いていた。
なぜか、わかってしまった。
僕の母親は、零印じゃない。
レヴニールという死人の女でもない。
この人だ。
真印おばさんは――叔母さんなんかじゃない。
理由はない。でも、わかる。わかってしまう。
僕の「お母さん」だ。間違いない。
彼女が僕の、ほんとうの母なんだ。




