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歯車の宮殿  作者: 高倉麻耶
act.3
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act.3 凍結 (4)

 なんであんなこと言ったんだろう。

 「おれ」のときと「僕」のとき、自分の性格が変わる気がする。

 二重人格、とまではいかない。分裂気質というわけでもない。

 <仮面>というのが、いちばん近いかもしれない。

 普段の自分は「僕」のほう。

 でも、「おれ」のほうが本音のほうなのかな。

 だとすれば、本当は、僕はアガサが嫌いなのかもしれない。


 いや……違う。


 もやもやした後悔の感情が、胸の奥でじっとりと重く澱んでいる。

 どうして僕は、自分の望まないことをしてしまうのだろう?

 本当のことはわかっている。

 あの二人と、仲良くしていたいんだ。

 あの親密な空気の中に、僕も同じように混ざっていたい。

 でも、それができない。

 なぜ?

 だって――彼らは、仲が良すぎる。

 あの二人の間には、何か特別な絆がある。

 それがどんなものなのか、僕にはわからないけれど。

 「ある」ということだけはわかる。

 僕はそれが欲しいんだ。自分もその、秘密の何かを手に入れたい。

 だけど望んでも手に入らないものは、どうしたらいい?

 アガサと、マギのことは好きなんだ。

 でも、二人は僕のことをそんなに好きになってはくれない。

 僕はもっと好きになってほしい。

 そんなこと言えない。

 だったら……僕が、あいつらを嫌いになればいい。


「きらいだ」

 両手で顔を蔽ったまま、つぶやいた。

「きらいだ、きらいだ、きらいだ、きらい」

 皮膚に、少しずつ爪を立てる。


 僕はひとり。

 家の中にいてもひとり。

 誰とも仲良くなれない――アガサとマギのようには、なれない。

 幼馴染がいないから?

 そうじゃない。

 気の合う相手がいないから?

 違う。

 どうしてなのか、わからない。

 わからないけど、ずっと違和感だけがある。

 何かが足りない。

 でも、何が足りないんだろう。


 ずっとずっと、僕には大事な何かが、ない。


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