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ハート探偵  作者: 住伏暗
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第4話 ”ハート探偵”流・殺人術


草子愛亜(そうしアイア)を越えるだと?」


 わたしの言ったことに、奴は驚いてるようだった。その後急に大きく笑い出した。


「がははは! 何を言い出すかと思えば、それはあの”心嵐(こがらし)”を倒すという意味か!? だっはっはっは!!」


 何が面白いのか。”心嵐(こがらし)”というのは、あの人の”ハート業界”での呼び名だ。業界でも有名らしい。


「奴は”ハート業界”のトップに君臨する最強の”ハート探偵”だぞ!? 風の吹かぬ所に嵐を起こし、触れることなく敵を殺すと聞く。分かるだろ? 化け物だ…!!」

「うん」

「心王、アーサー…。数多の”ハート犯罪者”たちの夢が、その女どもの前に砕かれたんだとよ」

「何が言いたいの?」

「貴様のようなチビが勝てるような相手ではない。越えるなんてのは不可能だ! 笑わせるんじゃねぇ!!」


 ……。こいつ、つまんない男だな。


「何言ってんだお前、馬鹿か」

「何…!?」


 敵と対峙する時の構え。先生から教えてもらった。全身から感情…力を一部分に流す。それをいつでもできるようにしとけって。


「勝手に越えれないなんて決めんな。あの人はわたしの友達を助けてくれた。あの人を越えるほど強くなれば、わたしは友達を守れるのよ」

「だからそれが無理と、言ってるのが分からねぇか」


 奴がナイフを持ったのは右手。利き手は右かしら…。


「俺は教師で貴様は生徒だ!! 大人に楯突けばどうなるか…、その眉間貫いてやる!

 ”(まき)()き”!!」


 ナイフを持った右腕を振り被って、わたしの顔を狙って向かってくる。こういう時は相手との距離を保ちつつ、ど真ん中に蹴りを打ち込む……。

 その教えの通りに右足をみぞおちにぶち込むと、奴が吹き飛んだ。その弾みでナイフを手放す。しめた!!


「しまっ…!!」


 これで相手は生身の武器なしだ。今の内に……。


「”ハート探偵”流・殺人術…、」


 全身から感情を右手に流す。そして、


「”心臓破壊(ハート・バースト)”!!」


 その拳を全力で相手の心臓に叩き込む。心臓から、全身に衝撃を通す。

 それをくらうと、奴はダウンして動かなくなった。


「ば…!! 馬鹿な…。その痩せぎすのどこに、そんな力が…」


 あれ、まだ意識あるのか。随分と硬いことで。


「お前、警察に自首しな。わたしの友達(だち)をいじめた奴がこの学校に居ては困るんだわ」

「と…友達? あの暴力ボウズのことか…?」

「あいつはいい奴だ。わたしを殴ったことをわたしに謝ってくれた。あいつは今、お前のせいで苦しい目に遭ってんだ。だからわたしは、お前をぶっ倒しに来たのよ」


 わたしのことを想ってくれるような人は、そう多くはない。あのエイジって少年は、それをやってくれた。だから、友達…。


「そ……そんな理由で…友達だと……? 貴様……、いつか…それを、貫けなく…なるぞ………う…」


 奴が気絶した。勝った……。


「はぁ……、疲れた」


 ”ハート探偵”流・殺人術。先生に叩き込んでもらっててよかった。この馬鹿に痛い目を返せたし。すっきりしたわ。

 にしても入学早々ナイフ持った先公とバトルとは、この学校は治安が悪いのかしら。いや、偶然か。うん。だといいが。


 この後表社会の警察の人に来てもらって、いろいろと面倒なことになったのは言うまでもない。



 4月14日(木)


「おい、マジかよそれ!」

「あぁ。わたしを殺そうとして警察に捕まったからさ。このクラスの担任も、新しい先生が来るみたいよ」


 声がでかいな、このエイジって少年は。話してて疲れるわ。まぁとにかく今彼に言った通り、あのカクジって先生はクビになったわけだ。


「まぁわたしの友達(だち)に悪いことしたんだから、当然の報いだわ」

「な、何言ってんだ住伏…?」


 昨日は大人の相手で大変だったから、今日は平穏を願いたいものね。

 わたしと少年が話してると、少し離れた所で男子二人が、


「おい、あの二人が仲良くしてるぞ。どういうこった…?」

「アハハ、分かんねぇや!」


 とひそひそ話してる。何だ…何かいい気分しないな。


「おらァ!! こいつの悪口言うならわたしが相手よ! 殺人術持ってんだこっちはァ!!」

「ギャ――!」

「おい、やめろって住伏!」


 彼が止めるからやめたが、わたしの友達の悪口はよしてほしいものよ。


「なんで……?」

「ごめんな、あいついい奴なんだ…」


 ボコボコになった男子たちにエイジが説明をしている。

 彼に聞かれた。


「お前、なんでオレに優しくしてくれるんだ? 殴ったのに…」

「別に。あんたがいい奴だから、そうしてるだけよ」


 まぁ友達だし…。それくらいちゃんと守れる奴じゃなきゃいけないわ。”ハート探偵”になるんだから、わたしは。


「住伏お前、いい奴だな――!! うおーい!」

「わっ、お前も暑苦しい系か! 抱きつかないでよ!」


 陽キャに泣かれるなんて、あまり気分のいいことじゃないわね…。


 ハートコントローラーを使う悪人を一人排除し、始まったばかりの高校生活は続く。できれば、もう面倒事はなしで希望だわ。


 次回は12月1日(日)更新予定です。

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