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ハート探偵  作者: 住伏暗
高2編
37/38

第37話(高2編-5) 魔法のような杖


 (一)


 2Cたちが着用している鎧の名は、”キラーファウント”。

 そのコンパクトなボディに、全6種の兵器が搭載された、『殺し屋の源泉』。それを着れば、誰でも殺し屋になれるという。


 ”キラーファウント”に備えられたライフルから、大量の銃弾が放たれ、わたしを襲った。


 ユメさんがわたしに、


「危ないッスー! よけるッスー!!」

 と叫ぶ。


 ピョン!

 わたしは、銃弾をジャンプでかわした。


 2Cが、


「さすがね。聞いていた通り……。でも、空中では避けられないでしょう!?」


 と、空中にいるわたしに、ナイフを投げつける。

 そのナイフは勢いよく、わたしの心臓に向かってきた。


 やばい、当たる…!! と、わたしは覚悟した。


 そこに、その人は現れた。


「や―――――——っ!!」


 ピンク色の髪をした女の人が、わたしの前に来て、飛んできたナイフを蹴り飛ばした。


 ナイフが回転しながら、宙を舞う。

 カランと床に転がり落ちたそれを、彼女は拾い上げた。そして、


 バキッ!!


 と真っ二つに、へし折った。


 わたしは「あっ…」と声を出した。

 その人に、見覚えがあったから。さっき校舎に入っていった、マントを羽織った女の人だ。


 その女の人に、2Cが聞く。


「誰だい…?」


 それに彼女は、ビシッ!! と見栄を切って、


「アタシの名は山村(やまむら) (レイ)! ヒーローになる女よ!!」


 と名乗った。

 ヒーローって口上。それにマント姿も相まって、まるでアニメの主人公みたいな人だった。

 マントが、炎の赤色を反射させて、ゆらめいている。


 零さんは、捕まっているユメさんに、


「待っててよ、人質ちゃん! アタシが今助けるわ!!」

 そう呼びかけると、


「その子を放しなさい!!」


 ユメさんに付けたリードを握っている2Cに向かっていき、


「とりゃ—————っ!!」


 と、2Cの鎧の中心に、クロスチョップをお見舞いした。

 その後、


「どーよ!! 少しは頭を冷やしなさいってのよ、殺し屋どもめ!!」

 そう奴らを煽る。


 しかし、わたしは安心しなかった。

 分かっていたんだ。その程度の力じゃ、2Cたちは倒せないって。


 そして、その見積もりは、当たっていた。


 零さんのチョップは、奴らの着た”キラーファウント”で防がれ、全く効かなかった。


「んん? その程度…?」

 2Cに煽り返され、零さんは、


「あれ…? えい! えい!」

 と何度も叩くが、カン! カン! と甲高い音がするだけで、鎧には傷一つも付かない。


 2Cが、零さんに説明する。


「私たちの鎧、”キラーファウント”はスタークリスタルって宝石で出来ていてねぇ。いかなる衝撃でも、絶対に割れない代物なのよ」


 奴の言うことを、わたしは既に知っていた。『スタークリスタル』ってのは、”ハート業界”という裏社会に出回る、希少な素材のこと。

 奴らの”キラーファウント”は、そんな”スタークリスタル”で作られているのだ。


 2Cが零さんを睨み、


「ヒーローだとか、綺麗事を言う奴は嫌いでねぇ…」


 と言った後、ボウッ!! と右手から、大きな炎の玉を撃ち出した。


「”キラーファウント”には、6種の兵器が仕込まれているのよ。この右手には、火炎放射器が備わっているのよ……」


 2Cが笑う。

 全身を焼かれた零さんは、その場に倒れ込んだ。

 それを2Cはドスドスと、何度も蹴って痛めつける。


「キャハハハ! くだらない正義感しか持たない馬鹿が! 私たちの計画に首を突っ込むんじゃないわよ!!」

 と罵りながら、


「何がヒーローよ!! 私たちの友達は、救ってくれなかったくせに!? 笑わせないで!!」


 そう言う2Cの顔は、確かに何かを憎んでいる顔だった。零さんのことが、かなり気に障ったんだろう。

 大量に血を流す零さんを見て、ユメさんが、


「もうやめてッス!! 零ちゃん、ボクのことは置いて逃げるッス――!!」


 彼女に呼びかける。

 しかし、零さんは強がる。


「大丈夫……。アタシは、ヒーローだから……。こんな奴らに、負けないもん…!!」


 そうやって意地を張るけど、零さんは立ち上がれなかった。怪我がひどいせいで。

 そんな零さんの姿を、3Cが大笑いする。


「バーカ!! 逃げりゃいいだろ!? こんな奴は見捨ててよ!」


 と言って、3Cが、ユメさんの頬をぶった。

 ドガッ!! と、握った手で、加減なしに。


 ユメさんのほっぺたに、ツーッと血が滲むのが見えた。


 それを見た瞬間、わたしは熱くなるのを感じた。心が、3Cたちへの憎しみでガ——ッと。

 わたしの友達を傷付けて、2Cたちめ…!!


 その時、後ろから結二さんの声がした。


「住伏くん! これを使いな!!」


 わたしは安堵した。結二さん、やっと来てくれたのか……。


 彼女のトスした鉄球が、ギュルギュルと高速回転しながら、わたしの足元に落ちてくる。

 わたしは零さんに、


「零さん、伏せてて!」

 そう呼びかけた後、


「ユメさんを守るのは、このわたしよ!!」


 鉄球を、思いきり蹴った。

 「”心臓砲撃(ハート・シェル)”!!」と、技名を叫びながら。



 (二)


 その後のことは、驚きだった。


 蹴った鉄球が、壁や床、天井を何度も反射し、2C・3C・4Cの3人を、一気に弾き飛ばしたのだ。

 その威力は凄まじく、奴らの”キラーファウント”を、まとめて破壊してしまった。奴らのタトゥーの刻まれた上半身が、無防備になる。


 わたしは、何も考えずに蹴っただけなのに。結二さんは、こうなるように鉄球に回転を加えてトスしたのか。


 2Cから解放されたユメさんの元に、結二さんが駆け寄って、


「ユメちゃん、無事かい!?」

 と声を掛ける。ユメさんが、


「ひどい目に遭ったけど、ボクなら大丈夫ッス…。………あっ! それより、零ちゃんを助けるッス! ボクを助けようとして、怪我をしたんス!!」

「あ、アタシはこの程度、平気よ! ヒーローだもん!!」


 ユメさん・結二さん・零さんが会話をしていると、後ろから、


「つ…ついに来たわね。”(ワイ)”……。待っていたわよ」


 2Cがフラフラと立ち上がって、結二さんに向かって言った。


 ”キラーファウント”が砕けるほどの衝撃を受けたにも関わらず、2Cたちは生きていた。

 結二さんを見つめて、奴らは『Y…Y…』と連呼していた。まるで何かの、呪いのように。


 わたしは、気にかかった。『Y』って、結二さんのこと……?


 結二さんが、2Cたちに警告する。


「お前たち。この家庭科室の火を消せ。そして、葉後高校から立ち去るんだ!!」


 それを無視して、4Cがナイフを振りかざして、


「ここでY! キミを消せば、(エックス)にほめてもらえるんだ!!」

 結二さんに襲いかかる。


 やばい! 結二さんが…!

 わたしは、4Cを止めようとした。しかし、結二さんはそれを、


「いいんだ。住伏くん」

 と制した。そして、


「みんな、ここは僕に任せて!」

 そう言うと彼女は、長い魔法の杖のような武器を構えた。


「この超化学の杖、”キラータクト”で、奴らを止めてみせる!」


 『キラータクト』。それが、その杖の名前だった。

 結二さんは、唱えた。


「”キラータクト”に宿りし、炎の鳥よ! 僕の憎しみに応え、奴らを焼き尽くせ!!」


 そして彼女は、杖の先端から、巨大な棒状の炎を撃ち出した。


「”炎の矢(レッド・バード)”!!」


 結二さんがそう呼んだ炎の鳥は、ボオッと燃え盛りながら、飛んでいく。

 そして、その軌道の先で、炎は2C・3C・4Cの胸を、撃ち抜いた。


 決定的ダメージを与えられた2Cたちは、


「え……、X…。エイイチ…くん……」

 とボスの名を、腹の奥から絞り出しながら、気絶した。



 (三)


 結二さんの使う武器、”キラータクト”。それは、火・水・電気を自在に操れるという、化学を超越した杖だった。

 彼女がタクトから放った水で、家庭科室の消火をしながら、


「便利だろ? 僕、こういう発明は得意なんだ。親父がマッドサイエンティストだったから、色々教えられてね」

 と、得意げに話す。

 それを聞いて、わたしは気付いた。そういえば、結二さんの家族の話って、聞いたことない。


 結二さんは、零さんのことを気に入ったようで、


「ねー零ちゃん、僕たちのクラブに入ってよー! 君、ヒーローの才能あるよー!」

 と、彼女を”ハート探偵クラブ”に勧誘している。


 でも彼女は、


「い、嫌よ! アンタたちと一緒じゃなくても、アタシ勝てるんだから!!」

 と拒否している。


 わたしには、一つ気になることがあった。


 さっき2Cたちが、結二さんを『Y』と呼んでいた。


 奴らのボスが『X』と呼ばれているのを、わたしは知っている。

 アルファベットで。


 イニシャルキラーの殺し屋は、『1A』とか『2C』とか、一人一人がコードネームを持っている。

 だとしたら、結二さんは……。


 考えていると、ユメさんが、


「みんな無事で、よかったッスね!」

 と、うれしそうに話しかけてきた。いきなりで驚いて、わたしは、


「あっ。そうね…」

 と微妙な返事をする。


 わたしは、心の中で結二さんに語りかけた。


 『結二さん。そろそろ、ほんとのこと教えてほしいわ』。


 次回は、12月14日(日)に更新予定です。


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