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ハート探偵  作者: 住伏暗
高2編
33/38

第33話(高2編-1) 金髪さん


 (一)


 2023年4月10日(月)


 葉後(はあと)高校の、2年花組(はなぐみ)の教室。

 わたしは、いじめに遭っている最中だった。


「くたばれ、バケモノー!!」


 にやついた顔の男子生徒が、わたしの体を突き飛ばす。

 だけど、わたしは何とも思わなかった。ただ、「またか」と心の中で呟くだけ。


 わたしの名前は、住伏(すみふし)(アン)葉後(はあと)島に住む人間。そして、葉後(はあと)高校に通う、高校2年生だ。

 今わたしは、名も知らぬ男たちに囲まれ、悪口を言われている所。

 多分、同じクラスになった生徒なんだろうけど、そんなの興味ない。友達じゃないんだから、誰でもいい。


「きしょいんだよ、ゾンビ男が!!」


 いじめっ子たちの中でも、一番背の高い奴が、わたしの髪の毛を引っ張る。その様子を、他の男子たちが笑う。


 自分はこういう事をされるタイプだと、わたしは自覚している。小学校や中学校でも、こんな扱いを受けてきたから。

 原因は、色々思い当たる。暗ーい性格とか、眼鏡を掛けた暗ーい容姿とか。


 けど、一番の原因は、わたしの目だ。他人とは違う、真っ黒で光の無い目。


 人は目に光が反射して、瞳にその色が浮かぶのが普通だと聞く。

 だけど、わたしの目は、鏡に近付いて覗いても、ずっと真っ黒のまま。その瞳に、光は浮かばない。こんな目をしてるから、昔から『死人』とか『ゾンビ野郎』とか言われている。

 家族や親戚は、みんな普通の目をしてるのに。どうして、わたしだけ……?


 そんな訳で、わたしが他人から嫌がらせを受けることは、日常茶飯事なのだ。今更、それを嘆くような感受性も、わたしは失っている。

 高1の時は、いじめられることは無かった。けれど、本来のわたしは、いじめられる運命なの。


「化け物ー!!」

「こっち見んなよ、どっか行けー!!」


 ただ面倒と思いながら、悪口を聞いていた。すると、



「やめろ!!」


 そこに、怒鳴り声がした。レイナさんのものだった。

 わたしのクラスメイトの、友寄(ともより)励奈(レイナ)さん。1年でも同じクラスだった、わたしの友達。


 彼女はわたしの前に立って、いじめっ子たちを通せんぼすると、


「アンをいじめないでよ」


 そう言って、いじめっ子たちを止める。彼らはそれに、面倒そうな顔をしている。そして、


「どっか行け———っ!!」


 レイナさんがそう叫ぶと、いじめっ子たちは去っていった。

 「はいはい、すいません」とか、そういう言葉を残して。


 レイナさんが助けてくれたおかげで、わたしは嫌がらせから解放された。



 (二)


 その日の放課後。海辺の帰り道で、レイナさんに会った。

 彼女はわたしを心配してるようで、「大丈夫?」と聞いてきた。


「どうして?」


 わたしが聞き返すと、さっきの嫌がらせのことを、心配してるらしかった。

 なぜ心配してるか。それは、今日のいじめが初めてじゃないから。さっきの奴らからは、何度もされている。高2になってから。


「なんでアンがあんな目に遭うの!? もう、ムカつくー!!」


 とキレたレイナさんが一息ついて、


「わたしじゃ、何にもできないかなぁ…」


 そう思い詰めた顔で言うので、


「いや、そんな悩むほどのことじゃ…」


 わたしは彼女をなだめる。


 レイナさんは、わたしを気に入ってくれてるようだった。

 わたしが酷い目に遭うと憂うし、うれしいことがあれば、彼女も嬉しそうにする。


 高1の時にわたしは、よく文化祭とかの手伝いに参加していた。そこに、レイナさんも来ていた。

 特に役に立った覚えはないけど、わたしの働きようを気に入って、友達と認定してくれたらしい。


 そんな小さい理由で、いじめっ子から守ってくれる。レイナさんは、優しい人。

 彼女のそういう所が、わたしも好きだった。



 突然、レイナさんが叫んだ。


「あ—————っ!! 誰か倒れてる!?」


 彼女が路地裏を指差す。そっちを見ると、確かに人が倒れていた。

 女の人だろうか。髪の毛が金色で、ボサボサと乱れている。


「わたしの友達じゃないな」


 わたしが、その人を放って立ち去ろうとすると、


「待て——っ!!」


 レイナさんが、わたしの耳を引っ張って怒った。そして、倒れてる人の元に駆け寄って、


「大丈夫ですか!?」


 と声を掛ける。


「知らない人を助けるなんて、お人好しなのね…。まぁ、あんたが言うなら、助けようか」


 わたしも、その人の前に座る。

 わたしの知り合いに医者がいるから、電話で呼ぼう。そう考えながら、その人の手に触れてみる。

 その時だった。


 その人が急に起きて、わたしの顔を右足で蹴り飛ばした。


 視界が真っ黒になった。その人の蹴りで、わたしの頭はカベにめり込んだのだ。


「僕に近付かないで!!」


 その人が、声を荒げる。

 いや、近づきたくても無理だけど。壁に刺さりながら、わたしは思った。



 (三)


「あ———っ! 僕ったら何てことをー!!」


 金髪ボサボサのその人は、両手で頭を抱えて叫んだ。そして、


「ごめんよ。僕の身体に手を出す、不届き者と勘違いして…。まさか、殺気のない少年と少女だったとは……」


 わたしがコンビニで買ったパンを食べながら、謝ってくる。

 謝られると気まずくなって、


「気にしないわよ。痛くなかったし。それよりこの人が、倒れてたあんたを心配してたよ」


 レイナさんを指差して、わたしは言った。

 それに金髪さんが、


「いやぁ、ここ3日間何も食ってなくてさぁ…」


 そう言って、カレーパンを一瞬で平らげてしまった。その後、


「飯をおごってくれて、ありがとな———っ!!」


 と、わたしに抱きついてきた。

 暑苦しいな、この人。そう思った。


 その人に着てる服は、どこかで拾ったようにボロボロだった。

 右目の上に1本、太い傷の跡があるのが、前髪の隙間から見える。何かの怪我の痕だろうか。


 考えていると、金髪さんは切り出した。


「僕さ、『住伏(すみふし)(アン)』って人を探してるんだ。君たち、何か知らないか?」


 あれ? と思ってレイナさんを見ると、目が合った。彼女が『早よ言え』って、目で訴えてくる。

 仕方ないなぁ。わたしは、


住伏(すみふし)(アン)ってのは…、多分わたしのことだけど」


 と名乗り出た。すると金髪さんは、


「えっ、君が!? 住伏くん!?」


 驚いてるようだった。わたしの顔をじーっと見て、


「う~ん。思ってたのと違うなぁ。チビで弱そう…」


 と、がっかりしたように溜め息をついた。


「よく言われる」


 わたしも、そう返した。

 チビってのも、思い当たるんだよな。原因に。


 落胆してた金髪さんが、次の瞬間、


「ま、いいや。君のこと、ずーっと探してたんだ———っ!!」


 わたしに飛びついてきた。「キャ――ッ!」と声を上げて、うれしそうな様子で。

 めんどくさいな、この人。そう思った。


「離れてよ。あんた、誰よ」


 金髪さんを押し返しながら聞くと、


「僕? 浮荒味(ふすさみ)結二(ユニ)だよ」 


 と、その人は名乗った。

 フスサミ…? 変わった名前だなぁ……。


「君たち、葉後高校の子だろ?」


 結二(ユニ)さんの言葉にレイナさんが、


「そうだよ。なんで分かるの?」


 と不思議がる。それに結二さんが、


「そりゃあ分かるよ。だって僕も…、」


 何かを言い出そうとした、その時だった。



 何者かの野太い声が、路地裏に響いた。


「ようやく見つけたぞ!!」


 その声の方に、わたしは振り返る。


 透明色のナイフを持った大柄な男が、そこには立っていた。

 その男は、わたしたちに言った。


「俺の名は、2B(ツービー)。組織、イニシャルキラーに仕える、殺し屋だ」


 そいつが言った『イニシャルキラー』という組織名に、ピンと来た。わたしは多分、その組織を知っている。嫌な響きだわ。


 『葉後(はあと)高校への復讐』。イニシャルキラーは、それを目的に掲げる、殺し屋集団だ。


 次回は、11月9日(日)更新予定です。

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