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ハート探偵  作者: 住伏暗
高1編
26/38

第26話 アンVS1A


 わたしと1Aの戦い。奴の鎧、”キラーファウント”の心臓部分を叩いたわたし。だけどその衝撃は、全く伝わってないようだった。これが”スタークリスタル”って素材の硬さ?


「びびっといて、全っ然効いてないな?」

「………!!」


 こいつは、わたしの速さに驚いてる。返す言葉も出てこないようだ。

 ゴン!! ゴン!! ゴン!! ゴン!! 何度も繰り返し攻撃するが、鎧に穴が開く気配はない。ここでやっと、奴が口を開いた。


「ハッハッハ! 何度やろうと同じだ! この”キラーファウント”は、僕の全身を覆っている。ハンマーを突っ込めるほどの隙間はない……。キミの戦い方じゃあ、僕には勝てないのだよ…」


 奴がわたしに抱きついて、首の後ろに両手を回してきた。その片方には、ナイフが握られている。


「その首を切り取って、友達のみんなに見せてやる!!」

「やっべ……! 殺人術…。”柔流脱外(ストリーム・アウト)”」


 体中の力……感情を抜く。そうすればこの身体には、少しの摩擦力も無くなる。ツルツルのスラスラになって、奴の腕から脱出。


「ふぅ…危ねぇ………」


 距離を取る。ライフルとか遠距離武器を、いつ使ってくるか分からない。ハラハラするわ……。


「わたしを捕まえるのは不可能だよ。この技を使えば、石鹸並みに滑る肌質にもなれるんだから」

「身体の摩擦力を減らす技か。見たことないな…」

「そう?」


 わたしが先生の甘高さんから叩き込まれた、”ハート探偵”流・殺人術の技の一つだ。確かに、先生以外が使ってるとこは見たことない。


「”アイスボール”で全身を凍らされれば、摩擦力もへったくれもないだろう?」

「うん」


 頷く。言ってる通りだわ。


「ならば…」


 アイスボールを撃ってくるのか? あれで固められたら面倒だと、身構える。しかし奴が押した武器の発射ボタンは…。


「”水銃”!!」


 水鉄砲だった。それも、半端なく速いタイプの。


「えっ」


 正面から超スピードの水流をくらう。打撃が効かないから、痛くはないけど……、


「おい、今のは氷で来る流れだろ! …わわっ……!!」


 その水量に押されて、やばいわ。

 ドカァン! とドアを突き破って、わたしは廊下に弾き出された。


「ぶわぁ―――あっ!!」

「えぇ———!? 住伏くん!?」


 びっくりするみんなの声。みんなのいる所まで飛ばされたのか。


「危ないっ。時計台だったら、海まで落とされてたわ…」

「おい、アン! 何だ今の水…、大丈夫か!?」

「あぁ、お前ら…みんな無事? わたしは平気よ。そういう体質だから」


 エイジやうるさい男子たちだ。一方レイナさんや女子の人たちには、


「アン、肩のケガ大丈夫…?」


 と聞かれる。


「えっ…………」


 そういえばわたし…。思って左肩を見ると、血がべったり。


「痛でででで————っ!! なんで思い出させるのよ! せっかく痛いの忘れてたのにー!!」

「やっぱり!! 無理しちゃダメよー!」


 そうだ、肩を刺されてたんだよな。傷を見たら、急に痛くなってきたわ…。


「アン、やっぱ保健室に行った方が…」

「そうだよ! そんなケガ放っといたら……!」

「後でね。わたしがいなきゃ、誰があの悪い奴を止めるのよ」


 痛いの我慢しなきゃ。だって、この人たちが心配してる。


「でも…!!」

「大丈夫だよ。あいつは必ずぶっ飛ばすから! じゃ、行ってくるわね!」


 みんなに言い聞かせて、わたしは走って教室に戻った。みんなを殺そうとする奴がいるんだ。止めなくては。


「今のは忠告だ…。僕はいつでも戦いの場を、廊下に移すことができる。そうなれば攻撃の余波で、何人の友達が怪我をするか…。いいや、怪我では済まないかな? フフッ」


 1Aが笑う。


「お前!!」

「まぁそう怒るな。本当の所はな、イラついてるのは僕の方さ」


 えっ…、何の話だ? 奴は何かの話を始めた。


「もう知ってると思うが、昨年3月から葉後島で13日の自殺事件を起こしてるのは、僕たち”イニシャルキラー”だ」


 いや、そんな話なら若亭とか蒼男にしてほしいけどな…。わたしは、そんなに興味ないんだ。


「昨年4月のことになる。僕は組織の令で、葉後高校に生徒として潜入した。学校の動向を探り、計画の下見をするためにな。

 その後すぐだった。同じクラスの不良が、僕のことを馬鹿にして殴ってきたのだ…。あんな奴なんかより何倍も頭の良い、この僕のことを…!! イラついたから、ハートコントローラーで操って自殺させてやったよ」


 自殺した不良……。心当たりがある。4月にここで起きた、三年生の飛び降り自殺。


「だがそれが島での事件と繋がってるのではと、ハート(ジャック)や蒼神に目を付けられてしまった。さらにはアン、キミまでもがそいつらに協力すると言い出した……。

 このままではまずい。僕が倒されては、葉後高校への復讐という計画に支障が出てしまう…。だが………、そうはならない。ここで全員殺すからだ。キミも、ハートJも、蒼神も、一年空組のみんなも。僕を救ってくれたあの人……、」


 奴が”キラーファウントのみぞおち部分のボタンに指を掛けて、


「”X”のためにな!!」


 と押す。するとビュンビュン! と何かが発射され、こっちに向かってきた。


「うわっち…!!」


 触れてはいけない気がしたので、横にずれて避ける。それは矢のような物で、教室の壁に突き刺さる。矢の先端からシュ―ッと、焦げて煙が上がっている。


「何これ…」

「”毒針”だ。くらうと命はない」

「ふーん…。危ない物持ってるな」


 ただでさえライフルとかレーザービームとかあるのに、毒針まで……。厄介だな…。


「さぁ、まだまだ行くぞ! ”アイスボール”連続発射!!」

「うわおお…!?」


 大量の氷の球が、わたし目がけて飛んでくる。当たったら体が凍るんだよな。これじゃあ、近づくことすら…。


「くっそ、あいつ調子乗って…むかつくな……」


 奴に隙を作れたら…。武器の発射ボタンを押せなくなるような……。考えながら逃げるわたしの目に、飛び込んできたのは。


「ぐう…。ぐう…」


 すっかり気を抜いて昼寝している、蒼男の姿だった。


「蒼男の奴、こんな物騒な状況でよく寝れるな…。あっ、そうだ…!」


 一つ、いいことを思い付いた。びびりな彼なら、きっと…!


「うぅん…、ヒーローハンバーグがいいよママー……」


 幸せな夢を見てそうな彼の元に行ってわたしは、


「心王が蒼男のこと殺しに来たぞー!!」


 そう叫んだ。


「どえりゃああ!!」


 トラウマを煽られて、彼は飛び起きた。そして、


「うわあぁ————っ! 心王が来たぞ——————っ!!」


 パニックになって、教室中を走り回りはじめた。足を渦巻きにして、ぐるぐると。


「ママ―――――!! 親父————!! オシハ、ツバサーっ!! 逃げろォお——!!」

「蒼神…!? ちょっ…お前暴れるな!! くっ……!」


 やっぱり、1Aも混乱してる。蒼男は逃げ足が速いから、あいつでも軌道が読めないのよ。


「蒼男、右よ! 右に行ったら逃げれるよ!」

「みぎ~~~!!」


 彼が右に曲がる。


「今度は左よ!!」

「ひだり~~~~っ!!」


 左に曲がる。


「そこに心王がいる!! ぶっ飛ばしな!」

「うあ~~~っ! 心王~~~~!!」


 真っ直ぐ突っ走る彼。その先には、


「な…………!!」


 1Aがいた。


「バウンドスラッシュ―――っ!!」


 寝ぼけた蒼男の体当たりによって、1Aが倒れた。よし、隙ができた……!


「悪いな蒼男、今の内に…!」


 ハンマーを持って、突撃。


「”心臓破壊(ハート・バースト)”!!」


 鎧越し、胸に向けてハンマーを振り下ろす。だけど、さっきと同じ手応え。撃ち抜けてない。


「もう一丁~~!! ”ぐるぐる心臓(ハート)”……!」


 もう一回ジャンプ。今度は回転しながら…、


「”破壊(バースト)”!!」


 ただひたすら心臓を叩き続ける。これで計四回やったけど、まだ壊れる気配はない。


「もう一丁~~!!」

「くっ…この…!!」


 五発目をやろうとするわたしの前に奴は、


「鬱陶しい!!」


 右掌を出してきた。げっ…これは……! 思ったのも束の間。

 そこから大きな炎の塊が放たれた。視界が燃えた後、真っ黒になる。さっき若亭もくらった、扇状の火炎放射……。


「ゲホッ…、あっつあつあつあつあつあっつい…!! ゲホゴホ!!」


 体が焦げる。せっかく近付いたのに、また標的が離れてしまった。


「へにゃら…、みんなぁー………ぐう…」


 蒼男はまた寝てる。けど、もう同じ手は通じないだろうな…。奴に見切られてるから。


「どんな小細工しようと、僕に近付くなど不可能なんだよぉ!! ”レーザービーム”!! ”ライフル”ゥ!!」

「うわっ!! わ…!」


 奴の鎧から、次々に危ない物が撃ち出される。頭を低くしながら、走って逃げるわたし。そこに、


「”アイスボール”!!」


 冷気の球。あれをくらったら、何もできなくなる…。


「やばい、これだけは絶対避けなきゃ…! たっ!!」


 足から胸にかけて、あらゆる高さに狙ってくる氷玉を飛び越える。ようやく窮地を脱したと思った、そこに。


「”水銃”!!」


 空中にいるわたしに、奴は水鉄砲を発射した。それはわたしの胸に命中し、


「ぐわ!!」


 圧によって、わたしを壁に押し付けた。水圧と壁に挟まれて、わたしは動けなくなったのだった。


「何、これ…逃げれないの…!?」

「ハハハ!! ”水銃”による磔だ! これで身動きは取れまい……。”レーザービーム”で頭を撃ち抜いてやるっ!!」


 何それ嘘でしょ!? 攻撃が来ると分かってて、避けられないなんて…! そうだ、手足で壁を押せば…。そう考えた矢先に、


「おっと。脱出しようとしても無駄だぞ? 両手足も、水の釘で止めておいてやる…」

「ぎっ!? くそ…!!」


 両手両足にも、水を打ち込んできた。水圧に負けて、手足を動かせない……。


「これでキミはもう、僕の攻撃から逃げることはできない!!」

「…ぐ……!!」

「さぁ! 計画の邪魔者を消す時だぁ!!」


 やばい!! ビームを撃ってくるぞ!! これで頭をぶち抜かれたら、あの人たちのこと……。焦るわたし。

 ん? 頭…? 一つ思い付いた。

 そうだ…。頭さえ動かせれば、こっちのものよ……。


「くそっ、消えてたまるか………よ!!」


 頭を思い切り、後ろの壁に打ちつける。


「頭突き――――っ!!」


 その反動でわたしは、水の拘束から抜け出した。頭で壁を蹴ったんだ。


「何…!? そんな、馬鹿な…!!」


 奴が驚く。普通の人にはできないけど、体がバウンドする質のわたしなら……。

 レーザーが右胸の近くを掠める。


「うぇっ…、よし…!!」


 頭にくらう事態は、回避できたからいいや。体はもう解放された。なら…、


「砕けろ、”キラーファウント”!! ”心臓(ハート)”……!」


 ただ攻めるのみ…!


「小賢しいんだよ!! ”ブーメランアックス”!! ”ライフル”!! ”スプレッドファイア”ァ!!」


 頭狙いのブーメランアックス、足止めのライフル、それに火炎放射。一気に来た……。


「これでもう避けられないだろう!! 黒こげになれぇ!!」


 アックスの下をくぐり抜けて、ライフル弾はくらう。火炎放射は突っ切る。痛い、熱い! そのまま走る。それを見て奴はびびってる。


「なぜだ!! なぜ倒れない…!?」

「どりゃあ————————っ!!」

「待…!!」

「”破壊(バースト)”ォ!!」


 両腕でハンマーを振って、またも心臓に。


「っ!! ……!!」


 効けよーっ!! 衝撃を、鎧の中まで通す。銃弾の通った左足の力が抜けて、その場に崩れる。

 後ろから、ブーメランアックスが戻ってくる。

 両手で床を叩いて跳ぶ。アックスの上で宙返りして、


「おりゃあああああああっ!!」


 右足でアックスを、奴の鎧に蹴り込む。刺され——っ!! と念じながら。

 しかしこれでも、”キラーファウント”には傷一つ付かなかった。


「…はぁ………、はぁ……はぁ……」


 息が切れる。だけど、焦ってるのは1Aだって…。


「なぜあきらめない…。お前は……」


 もう少しな気がするんだよな。”キラーファウント”を壊すの。こいつから、みんなを守るの。


 次回は5月4日(日)更新予定です。

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