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ハート探偵  作者: 住伏暗
24/32

第24話 殺人マシン、キラーファウント


 昼休み、一年空組の教室。わたしは、ワンエーと名乗る殺し屋と対峙していた。


「まさか、僕のハートコントローラーを使用不能にするとは…。だが、キミの快進撃もここまでだ。住伏暗!」


 クラスのみんなには、廊下に出てもらった。これで存分に暴れられる。こいつは、必ずぶっ飛ばすんだ! そう決めたわたしに、そいつは言った。


「キミの仲間の元にも、僕の仲間を送り込んでいる」


 !


「仲間…?」

「『若亭』と『蒼男』って言ったかな…? ククッ…」

「え」


 あの二人…、いないからどうしたのかと思ってたけど……。あいつらの所にも、殺し屋が来たのだろうか。


「彼らには一年空組の防衛を任せていたようだが、今頃はもう殺されているよ。僕の優秀な仲間によってね……」


 あ、あいつらが…?


「お前、いい加減なことを言うな!」

「ふん。なら証拠を見せてやる。二人の死体を持ってきてもらっているよ。いいぞ、出てこい。2A(ツーエー)3A(スリーエー)!」


 そいつが呼ぶと、バリィン!! と窓ガラスを破って、何者かが入ってきた。ツーエー、スリーエー……ワンエーの仲間?

 わたしは困惑した。だって、そいつらが明らかに疲弊した様子だったから。え、殺し屋のはずじゃ…。


「はぁ、はぁ…。ぐっ……!」


 と息を切らしている。


「おいどうした2A。まさか今更、人を殺すことに疲労を感じたのかい? ハート(ジャック)の死体は、ちゃんと持ってきたのか?」


 あの女が、ツーエーのようだ。ワンエーがそう呼んでる。あいつが、若亭の所に…?


「す……すまないアロン。いや、1A…。奴に…、ハートJに、ハートコントローラーを破壊された…」


 その女は、ワンエーに告げた。見ると服のポケット部分から、赤い染みが垂れている。


「…何!?」


 ワンエーの顔つきが変わる。


「は、破壊されたってどういう事だよ!? ハートJは今…!」

「ほ、本当にすまない…。奴の拳銃で、ポケットの中のコントローラーを……」


 若亭の拳銃で、ポケットの中のコントローラーを撃たれた。そう言ってるな…。確かにツーエーの持ってるコントローラーには、銃弾が貫通した跡があった。

 するとそこに、


「破壊したとは、人聞きの悪い言い方だな…」


 と聞き慣れた声がした。


「あ!」


 嬉しくなって、わたしは叫ぶ。


「そいつがハートコントローラーを使おうとしたから、自亭はそれを防いだだけだ。壊さずに証拠として押収したかったのは、こっちの方なんだけどな……」


 いつの間にか、若亭が教室に入ってきていた。穴の開いた窓ガラスにもたれながら、拳銃をカチャカチャしている。


「…!! ハートJ……! なら、3Aはどうした!? あいつが蒼神を殺しに向かったはずだ…!」


 始末したと思ってた若亭が生きてるせいで、奴ら焦ってるみたいだ。そしてその矢先に、


「ぎゃぁああぁぁ~~~!! 助けてぇ———! 撃たれるぅ―――――!!」


 若亭の隣の窓をぶち破って、教室に飛び込んできたのは蒼男だった。こいつもまた、何かに追われてるような感じだった。


「あ———!! 蒼男!?」

「あっ、アン! 助けてオレ今ピンチー!!」

「うわっ、ぐえっ!!」


 猛スピードで走って、わたしにぶつかってきた蒼男。衝撃でわたしは転がり倒される。


「びっくりするなぁもう…。蒼男に若亭、お前たち生きてたのか!」

「おう住伏亭。その顔は、そっちも無事そうだな」

「無事じゃないよ。お前らがいなくなったせいで、クラスのみんなが狙われて大変だった……」


 しがみついてくる蒼男をどかして、起き上がりながら答える。それに対して若亭は、


「悪いな。あの馬鹿の相手してたら、教室から離れちまって…」


 首を傾けてツーエーを見ながら言った。若亭も蒼男も元気だけど、傷だらけだ。厄介なことになってたんだろうな…。


「待て蒼神ィ~~!!」


 また窓が割れて、誰かが入ってきた。ワンエーやツーエーと同じく、透明の鎧を付けた坊主頭の男。


「わぁ来たぁー!! お助け―――っ!!」


 そいつに怯えて、蒼男がわたしの後ろに隠れる。こいつはあの坊主に追われてたのか。大変だったな…。


「蒼男、あいつも殺し屋?」

「うん! 聞いてよアン! オレだって、何とかあいつの持ってるコントローラーは壊したんだよ!? でもあいつ、やばい機械付けてるんだよぉ! あんな危なっかしい奴いないよ、うおおおぉ!!」


 泣きついてくる彼。そのセリフを聞いて奴らが、


「まさか3A…! お前も……!?」


 耳を疑ったようだった。『計画と違う……』って感じに。


「あぁそうだ! あいつが俺のハートコントローラーを、剣でぶった斬りやがったんだよォ!!」

「そんな馬鹿な、あの臆病なガキが…!?」


 まったく…。


「怖いよ———っ!! 痛いよ———っ!!」


 蒼男はびびりだけど、敵にとっては侮れない奴らしい。生きてるなら、それでいいわ。にしても窓ガラスを三枚も割って…、後で先生に怒られるぞ。

 殺し屋たちが、何か話している。


「ハートコントローラーが壊されたから、何だと言うんだ。僕らにはこの、”キラーファウント”がある! そうだろう!!」

「1A……。…そうだな。この”キラーファウント”は、殺し屋の源泉……。これを着れば、誰でも殺し屋になれるんだ。我々を救ってくれたあの人のためにも、しくじるわけには行かない!!」

「あぁ…。そうだよな。こいつら………、ぶっ殺してやる!!」


 敵は三名いる。わたしの友達を皆殺しにしようとした1A。若亭を殺そうとした2A。そして蒼男を殺そうとした坊主男、3A。


「蒼男、若亭。奴らが何をしたのか、知ってるかい?」


 わたしの質問に二人は、


「あぁ、あの女から聞いたよ。……こいつらが元凶だったようだな」


 葉後島の、連続自殺の。


「人の命を弄ぶなんて、許さない……。それにこいつら、アンの友達も殺そうとしたんだよな……」


 やっと島で暗躍してた殺人鬼の姿を捉えて、若亭はすっきりしたような表情だった。蒼男が腰の鞘から剣を出す。確か剣の名前は、”神勝(カミマサ)”と言ったか。


「絶対ここでぶっ飛ばしてやるぜー!」


 意気込む蒼男だったが、


「あん?」

「おあぁあ——っ!!」


 3Aにガン飛ばされて、蛇に睨まれた赤子って感じになる。びびったり張り切ったり、忙しい奴だな…。抱きついてくる彼を払って、わたしは前に出た。


「行くぞ!」


 敵が何人いても、全員倒すまで!

 2Aがわたしを見て、


「最大の要警戒人物だと……? あのチビが…。そうは見えないぞ…」


 一人でぶつぶつ言っている。そして、


「1A、お前は休んでいてくれ。住伏ごとき、私が討ち取ってやる!」

「お前なんかに、いい所持たせるかよ2A! アンは俺がやるっ!!」


 2Aと3Aが、わたしにナイフで斬りかかってくる。


「あの方と私たちの、正義を実現するためにっ!! ここで住伏暗! お前を消し去る!!」

「この葉後高校を地獄に変えるためになぁ! おらぁっ!!」


 二人まとめて来るなんて…。まずはこいつらを倒すか……。そう考えて動こうとしたが、要らぬ労力だった。

 若亭と蒼男が、その刃を受け止めたからだ。

 2Aのナイフを、蹴りで弾き飛ばした若亭。


「なっ…、ハートJ…!」

「正義面した奴の相手なら、自亭がやる」


 剣でナイフの刃を防いだ蒼男。


「くっ、蒼神ィ…!!」

「これ以上、この学校の人たちに手ぇ出させるか…!!」


 おお…。


「おお、二人ともかっこいいー! 蒼男なんて、つい今までびびってたのに…!」


 二人の行動の速さに、わたしが思わず声を上げると蒼男が、


「バカ、めっちゃ頑張ってるだけだよ! 怖いよー!! アンが危なかったからー!」

「そ、そうか…。わたしなら余裕だったが……」


 こっち向いて、泣きながら返してくる。何だ、返事するってことは余裕あるじゃないか。

 その一連の様子を見ていた1Aが、


「アンを舐めるな!! 2A、3A!!」


 と、後ろから野次を飛ばしてきた。それに2Aと3Aが、ナイフを持った手を止める。わたしに指先を向けた1Aは、真面目なテンションで話す。


「そいつの強さは見かけ以上だ……。他の人間にはない、並外れたジャンプ力…。打撃が効かない謎の体質…。キレた時に見せる異常なパワー……。

 アンの友達が一人も死んでいない現状も、アン自身の強さに起因しているんだ…………」


 えっ、何…? あいつ怖い。


「なんであいつ、わたしのこと褒めまくってるんだ…?」

「自亭たちのことを、隠れて見てたんだろ。それで、住伏亭を特に警戒している」


 若亭に言われて気付いた。この”イニシャルキラー”って奴ら、やっぱり監視してたのね。わたしがいろんな悪い奴と戦ってる所も。じゃあ、わたしたちの戦い方も知ってるのか……?


「アンは、僕が()る……。キミたちは、ハートJと蒼神を殺れ!」


 1Aの指示に、2Aと3Aが頷いた。


「…!! わ、分かったよ。1A…!」

「ったく。親友の1Aがそう言うなら、しゃーねーな…」


 2Aが、若亭を標的に定める。


「なら、私はハートJを倒す。3A、お前の担当は蒼神だ!」

「あっ、てめぇ勝手に! 俺の獲物たちだぞ!?」


 背中に引っ掛けていたブーメランアックスを手に取り、2Aが投げてくる。


「ブーメランアックス……喰らえっ!!」


 向かってくるそれを、勢いよく蹴り上げる若亭。そのまま天井に刺さる斧。彼が2Aに接近する。


「”ハート探偵”流・殺人術…。まずは自慢のその鎧、粉々に砕いてやろう……」


 拳を握って、


「”鎧撃ち(アーマー・ストライク)”!!」


 奴の”キラーファウント”って鎧の中心にぶつけた。


「やった!」


 完璧な攻撃だよ。これならあの鎧も……。わたしはそう思った。しかし。


「へへへ……」

「ふん…」


 3Aと1Aは、鼻で笑っていた。え、どうして…。それは、その鎧には傷一つ付いていなかったからだ。


「う、嘘でしょ!? なんで壊れないのよ…!!」


 驚いた。わたしと若亭が使う”ハート探偵”流・殺人術でも、壊せない物なんて……。若亭が、


「こいつら…、鎧も”スタークリスタル”製か……。何となく、そんな気はしてたが…」


 面倒そうに顔をしかめた。スタークリスタル……。当の2Aが、


「ほぉ。よく気付いたな…。我々の着る”キラーファウント”は、最強の硬さを誇る”スタークリスタル”で出来ている」

「チッ。めんどくせぇ物付けやがって……!」


 イラついて舌打ちする彼。”スタークリスタル”って、さっき1Aも言ってたやつだ。あのめっちゃ硬くて折れなかった、透き通ったナイフ…。


「蒼男、スタークリスタル”って何?」

「え、あぁ。オレも若亭から聞いたんだけどさ……」


 わたしの質問に、蒼男が答えてくれる。若亭からの知識と前置きした上で、”スタークリスタル”という物について。


「”スタークリスタル”ってのは、宇宙から降り注ぐ宝石のことらしいんだ。表社会には知られてない資源で、”ハート業界”だけで出回ってるんだって……」


 宇宙…? ”ハート業界”で、そんな物が…? 全然知らなかった。聞いてもないのに3Aが、


「”スタークリスタル”は一度溶かしてから固めることで、硬さが増す性質なんだよ! そうなればどんな衝撃を受けようと、絶対に壊れねぇ物になる。そうやって作られたこの鎧は、殴られようと斬られようと……傷一つ付かねぇってわけよ!!」


 と割り込んで解説してくる。どんな衝撃を受けても、絶対に壊れない鎧……。それを聞いた蒼男が、


「ぜ…、絶対に壊れない鎧なんて…そんなの付けてる奴らに勝てるのかな…!?」


 と弱音を吐いてる。あの”イニシャルキラー”って奴らは全員そうみたいだ。壊せない素材で全身を覆ってる。

 あの状態じゃ、攻撃は通らないのか……?


「いや、確かにこの”スタークリスタル”の鎧は壊せねぇが…まだ方法はあるよ。それは、」


 何か言おうとした若亭に被せるように2Aが、


「それだけと思うか?」


 と鎧の肩部分に付いた、ボタンのような物に指を掛けた。それに反応して、


「あっ………! 若亭気を付けろ!!」


 蒼男が叫んだ。


「いやいや、気を付けろって言われても何を…」

「撃たれるぞ!!」


 蒼男の警告と同時に、2Aがボタンを押す。すると。

 ドドドドドドドドド!!

 奴の鎧の肩部分から、大量の銃弾が放たれたのだ。


「うおっ!!」


 若亭は瞬時に避けて、空振った弾が教室の壁に打ち込まれる。


「あの肩のでかいのは、ライフルかよ…!!」


 際限なく出てくる銃撃が、走る若亭を追い続ける。


「危ねぇアン!!」

「おわっ…」


 流れ弾に当たりそうになったわたしに、蒼男がタックルして守ってくれた。乱射されるライフルに、敵側も困った様子だった。


「おいおい、2A暴れ過ぎだ~。勢い余って、獲物を全部殺さないようにしろよ?」


 そう言って離れた所から見ている。しかしそれも聞かずに、2Aはなおも続ける。


「ライフルだけじゃないさ。最強の硬さを持つ鎧に、六種の武器を搭載した究極の殺人マシン。これが我々の”キラーファウント”!!」


 究極の、殺人マシン……。


「私は抜きん出た戦闘能力は持たない凡人だ。そんな人間でも、このマシンを身に着ければ! 最強の武力を手に入れられるんだ!!」


 ”キラーファウント”について、奴は雄弁に語った。それは鎧であり、殺し屋を生む機械なんだと。鉄壁のガードを誇るボディの所々に、武器の発射口とボタンがある。


「まだ見せてない武器は大量にあるぞ? どうやってお前を倒してやろうか…」

「…!! うっ……」


 若亭、きつそうだな…。あんなに連射されちゃ、近づくこともできない。さっき蒼男が『撃たれる』って言ってたのは、これのことか………。


「”スプレッドファイア”!!」


 ボウッ! 右掌から、大きな炎が飛び出す。


「炎…!?」

「やばい、よけきれない……若亭!!」


 若亭が、大きな火の扇に呑まれた。


「若亭—————っ!!」

「ゲホッ…!」


 足が止まった。まずい、このままじゃ狙われちゃう…!


「あいつ…!!」

「待て、行くな! 返り討ちになるぞ!!」


 ちょっと放してよ蒼男!! あの女を止めなきゃ、若亭が…!


「”アイスボール”!!」


 次は左腹部から、氷の球が出てきた。


「なっ……冷気…!!」


 若亭の左足に当たると、ブワーッと白く広がる。そしてカチーンと、彼の足を固めた。


「うああぁぁあああ!!」


 足が凍った。


「な…なんだあれ! …足が!?」


 左足が動かなくなったことでバランスを崩し、若亭はその場に倒れた。


「その凍った足を抱えながら、”キラーファウント”の猛攻を避けることはできまい!」

「…! くっそ……!!」


 2Aの左掌が、若亭に向けられた。


「この左手からは、レーザービームが出るようになっている。これでお前の頭を貫いてやろう!!」


 レーザービーム…? そんな物まで付いてるのか?


「うわあぁっ、若亭——!!」


 慌てた蒼男が助けに行こうとするが、


「動くな!!」


 と制される。


「お前たちが動いた瞬間、このレーザーの発射ボタンを押す。ハートJはもう助からんぞ!!」


 右手の指を、左手首のボタンの上に添えながら言った。


「そんな……!」

「なに、すぐに終わるさ。痛いのは一瞬だけだ。頭を焼かれて即死だからな」


 ピンチだ……。あのレーザーとやらが出た時が、若亭がやられる瞬間なのか…? 何か、何か彼を助ける手はないか……!?

 すると倒れた状態のまま若亭が、


「その鎧、心臓部分に隙間があるよな」


 と呟いた。


「何だ今更。遺言なら聞く気はないぞ?」

「なぜそこに穴を開けてるか、気になってた……。尤も、銃口すらも通らん程度のわずかな穴だが…」


 若亭が続ける。確かに、言ってる通りだ。その鎧には、穴が開いてる。左胸の位置に。そしてその下は…、おそらく防具は付けてない。穴は小さいけど、針とか銃弾くらいは通せる……。


「その理由はおそらく…………。

 お前らは殺し屋として、自分たちにウィークポイントを残しておきたかったんだ………。人を殺すことにスリルを、快感を味わうためにな…」


 その指摘に、2Aたちは何も言わない。無表情で否定しないってことは、図星なんだろうか。だけど、若亭がピンチな状況は変わらない。どうするつもりなのか……?

 彼は言った。


「自亭の拳銃なら隙間を通して、お前らの心臓に風穴を開けることが可能だ」


 ! 拳銃…。


「隙間から銃弾通して、てめぇの胸撃ち抜く」


 若亭が宣言した。奴らが驚く。


「ハッ、何を言ってるんだお前は…。私は今からこのボタンを押し、レーザーでお前を撃ち抜くんだぞ? その一瞬で腰のベルトに付けたホルダーから拳銃を出し、鎧の隙間を的確に狙い、私の胸を撃ち抜くと言うのか? 死に際だからって…、戯言にも程があるぞ!」


 2Aが嘲笑するのに彼は、


「じゃあ、さっさとレーザーの発射ボタンを押してみろよ…」


 と強気だ。

 これ、早撃ち対決だ……。2Aがレーザーのボタンを押すのと、若亭が取り出した拳銃の引き鉄を引くのと。どっちが早いか…。だけど、不利だぞ若亭は。彼にはやる工程がいっぱいあるのに対して、2Aはボタンを押すワンタッチだけだ。しかも、指もすでに掛けてあるし…。


「おいアン、若亭の早撃ち記録って…」


 蒼男が聞いてくる。


「知らないわよ。あいつ、そんなの教えてくれないもの」

「だけど可能性は限りなく低ぇぞ…。ほんとにできるのかな………」


 分からない。だけど、若亭のあの強気の笑みは…、本当に2Aに勝つつもりだ。


「ふん…。我々”イニシャルキラー”の目的は、葉後高校を生徒が大量に死ぬ地獄に変えて潰すこと!! ”ハート警察”が誇る悪魔の命も、ここまでだ…!!」


 そう話す2Aの声は、高揚して上ずってるように聞こえた。勝利を確信して、若亭の死に様を想像してるんだわ。

 撃ち抜かれるのは、どっちか……。教室内は、静寂と緊張に包まれた。


 次回は4月20日(日)更新予定です。

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