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ハート探偵  作者: 住伏暗
高1編
21/38

第21話 校則違反


 廊下に出た瞬間、教師らしき男にどつかれたわたし。ごめんなさいって言って、行こうとすると、


「待ちなさい!!」


 と呼び止められた。肩を掴まれ、


「キミ、先生にぶつかっておいて、その無愛想な態度は何だ?」

「……」


 はぁ、めんどくさい…。ぶつかってきたのは、向こうからだと思うのだが……。そいつが続ける。


「先生にぶつかったのだから、ちゃんと丁寧に謝りなさい!! それ以上無礼な態度をするなら、校長先生に報告して指導を仰ぎますよ!!」


 わたしが黙っていると、


「何とか言ったらどうなんだ!?」

「………」


 早くどっか行かないかなぁ、このおっさん。完全にいじめの標的にされたな、わたし。

 近くで見てたレイナさんが、


「待ってください! 今、先生の方からぶつかってきましたよね…!」


 と反発する。だがそんな彼女に向かってそいつは、


「黙りなさい!!」


 乱暴に声を上げた。レイナさんがびくっと怯む。こいつ……。


「この生徒は、教師であるこの私に礼儀を払わなかったゴミクズだ。こいつを庇うなら、キミにも指導をしますよ」


 わたしに指を差して、


「こんな奴は社会に出た時もマナーを守れず、必要とされないんですよ。そして幸せになれず、その恨みを社会にぶつけ、非行に走るのです!!」


 よく喋るな、この男は。一体この場で何の話を……。わたしに目線を戻し、


「キミは未来の犯罪者だ!! それを私が正してやってるんだ!! 私に頭を下げなさい!!」


 ぱんっとわたしの頭を、持ってた黒板消しで軽く叩いた。

 未来のっていうか、もうすでに犯罪者だけどな…。大人の見てないとこで、ハンマー振り回したりしてる。


「おい、やめろォ!!」


 エイジがキレて、その先公に突っかかろうとする。操られてなくても、殴りそうな勢いだ。右手はもう、握られている。


「ちょっと、やめときなさいよ。意味のないこと…」

「なんでだよ!! こいつ今アンに……!」


 こんな男の相手をするのは、面倒だから。だからやめましょ? わたしがエイジを止めてる様子に、そいつは、


「ふん、まぁいい。後でゆっくり話そう」


 目を細めて、


「キミのせいで、授業に遅れそうだ。キミも早く教室に入りなさい。後でまた来てもらおう。しっかり指導してやる」


 そう言い捨てて去っていった。…次の授業、わたしたち移動だけどな。あのおっさんの背中を見て思っていると、


「住伏くん、これ使ってよ」


 レイナさんがハンカチを出してきた。そういえば頭が、黒板消しに付いてたチョークの粉で………。


「アン、なんで何も言い返さないんだよ!」

「なんでって、わたし以外に迷惑かかってないもの」


 エイジの質問に答える。一応大っぴらにいじめられたのは、わたしだけだから。自分のためにキレるなんて、疲れるだけなのよ。


「住伏くーん、怖かったでしょー!! よよよ————っ!!」

「気にしてないわよ。それより早く行かないと、授業に遅れちゃうよ」


 ミカさんの心配が過剰ね。あんな奴、怖くも何ともないのにさ。

 教室から出てきた男子が、


「ついてないよなぁアンも。ありゃ『生徒いびり』で有名な教師だよ。名前……、苗行(なえゆき)砲偽(ホウギ)…だっけ」


 と。


「『生徒いびり』? なぁにそれ」

「何かと理由付けて、よく生徒に怒鳴り散らしてる。嫌ーな先生だよ」

「ふーん」


 へー、みんな知ってるんだ。さっきわたしにやったようなことを、しょっちゅうやってるらしい。それは、普通に迷惑な大人だな…。


「住伏くんにぶつかったのだって、絶対わざとよ! ほんっと信じらんない!!」


 レイナさん、怒ってるなぁ。なんでわたしのことなんかで。


「まぁ気にすんなよ住伏くん! がっはっはっは!!」

「はいはい」


 ばしっばしっと、背中を叩いてくる。こんな冬でも、暑苦しい男子。

 この日はわたしがいじめられただけで、済むと思っていた。だから何事もなく過ごした。しかしそれも、三学期には変わることになる。



 2023年1月24日(火)


 バフッ!!

 顔に白い黒板消しを押し付ける音が、教室に響いた。


「ケホッ……」


 彼女がせき込む。


「せ…先生………?」


 誰かの焦った声が聞こえる中、わたしは唖然としていた。

 ホウギが黒板消しで、アキさんを殴ったんだ。


「ハッハッハッハ! これが指導だぁ——————!! ハ―――ハッハッハ!!」


 泣いてる彼女を見ながら、奴は高笑いしている。それを見て、心の中の線が切れた。あいつのやったことのせいで、あの人が……? わたしの心に、憎しみが積もっていく。

 表社会で暴力を使うと、面倒なことになる。分かってるが、でも。これが、先生のやることなの………?

 もう我慢できないわ。席から立ち上がって、奴の前へ歩いていく。その間にまた、視界が赤くなった。奴の前に立つと、


「あ? 何だキミは。私の指導の邪魔をするならキミも…」


 その顔に平手打ちする。奴が黒板の方に倒れ、壁に叩きつけられた。その衝撃で壁がへこんで、穴が開く。そんなに力は込めてないのに。やっぱりこの状態のわたしは、力が増してる…。


「な、何を…!!」


 奴が打った頭を押さえながら、こっちを睨んでくる。あ? 何か文句あるのか?


「お前、わたしの友達(だち)泣かしたろ今」


 倒れてる奴の前に座り、その頭をクレーンゲームのように右手で掴む。


「こ…これは指導だ!! 私は教師だぞ! 教師の私に手を上げるなど、貴様は…!」


 いろいろほざいてるけど、びびってるのがバレバレだ。馬鹿馬鹿しい。


「生徒の悪口言う先生がどこにいんだよ」


 立ち上がり、持った頭を吊り上げる。あの人の泣いてる顔なら、さっきここに来る時に目に入った。確かに泣いてたわ。


「この人に悪口言って暴力ふるったせいでこの人が傷付いてこのことがトラウマになって一人で抱え込んでってことくらい、教師なら想像できるだろ、なあ」


 人に悪口を言うのがどういう事か、分かってんのか!!


「た…助け……」


 わたしにびびり散らかしたのか、奴が涙目になる。


「チッ…………」


 こんな弱っちぃ老いぼれにアキさんが泣かされたと思うと、すっごくイラつくわ。どがっと床に投げ落とす。


「ぐぼぁ…!!」


 教室を見回す。アキさんと仲良さそうな人は、何人かいるが……リツカさんね。文化祭の仕事、一緒にやってくれてたし。


「ねぇ、リツカさん」

「!? っ!?」


 そんなびびらなくても。


「アキさんが顔を洗いに行くの、ついてってよ」

「…! はっ、はいー!!」


 何だか、異常に怖がられてるような気がするわ。この人たちの前だから、力は抑えてたつもりなんだけど…。


「だ…、大丈夫…?」


 アキさんがわたしに。それを合図に、視界にかかった赤フィルターが消える。何だか気分がすっきりするな。


「大丈夫って、こっちが聞きたいわよそれは…」


 だがそれに続いて男子たちも、


「おいアン、大丈夫か…?」


 と。まるでわたしが、何か変みたいに。


「何? 何かおかしいの、わたし…」

「だって、住伏くん今さ……」


 レイナさんが何か言おうとした時、


「ふざけるな!! 私は校長の帝我先生に、認められた教師だぞ!?」


 ホウギが立ち上がり、


「キミのことを報告してやる! そうすればキミは、私を殴った罰として退学だ!!」


 と目を血走らせながら、わたしに指を差してきた。こいつ、この期に及んでまだ教師面するのか。何だかムカついたから、


「その前に、生徒泣かしたお前がクビだろうが!」

「アン、もう十分だよ! 落ち着きな!!」


 もう一発殴ろうとするが、男子に止められる。肩をぐっと抑えて。その間にホウギは、


「校長先生~~~!! 助けてぇ~~~~!!」


 ふらふらした足取りで、教室から出ていった。まったく…。


「情けない奴め…」


 あまりに呆れて、口から本音が…。

 女子の人たちが、アキさんの元に駆け寄る。


「アキちゃん、大丈夫!?」

「あぁ、大丈夫だよ」


 答える彼女は、顔にチョークの粉がかかってる。レイナさんが、


「あの先生、アキちゃんにこんなことして……。クビにさせてやるわ…」

「ど、どうやってよ……」


 やっぱりいい人ね、レイナさんは。

 一方、わたしの所にはキョウ男が来て、


「お前、教師に手ぇ出したら学校側が黙ってないんじゃないか? あの先生だって同じとはいえ…」

「た、退学とか言ってたけど、大丈夫かなぁ……」


 リオンに言われて、軽く気分が落ちる。だから人前での暴力は、面倒になると思ったのに……。


「まぁーその時はその時だ。わたし、疲れたから寝るっ」

「え、寝るって…おい。今…!?」


 机の上に腕を組んで、そこに頭を置く。なんか視界が赤くなってガーッとなった時は、パワーは出るけど疲れるんだよな。体がだるいわ……。ほんと、何なんだろあれ…。

 クラスのみんなが、あれこれ話してる。


「さっきまであんなにキレてたのに…、次は昼寝とはな……」

「この子の目が赤ーく光るのを、わたしは見た! あれ、何だろうね…?」

「なってたなぁー! オレも見たよ。すぐ元に戻ったけどなー」


 わ、わたしの話…? 目が赤ーく光るって、そんなことあるかしら。


「もしかしてアンって、宇宙人!?」

「まさかぁ! それはさすがにないわよー」


 いろいろ言われてるな…。どんな奴だと思われてるの、わたし。会話を聞きながらわたしは、うとうとし出した。



 放課後の中庭に、


「何ぃ~~~!?」


 と、若亭の叫びがこだまする。そんな大声を出したら、不審に思われるわよ。


「明日から三日間、学校に来れなくなっただとー!?」

「なんで? 何かあったのか?」


 若亭と蒼男に、事情を説明。


「先生を殴ったら、学校側から停学をくらっちゃって…。三日間、ここを出禁にされたの」


 教員を生徒を殴ることは、当然校則で認められてないから。それを破ったわたしに対しての、処分とのことらしい。


「てめぇこの面倒な時期に、面倒事を起こしてんじゃねぇよ!!」

「ごめんなさい」

「まぁまぁ若亭…」


 若亭に怒られて、落ち込むわたし。だって友達がいじめられてたんだもん。何もしないわけにも行かないじゃないのよ…。


「でも良かったじゃないか、退学にならなくてさ!」

「校長先生が、停学止まりにしてくれたらしいよ。教師側にも非はあるからって。逆に先公の方は、解雇にしたんだって」

「へぇ~、話の分かる校長先生で良かったなー!」


 わたしに停学を報告してきた、担任の先生が言ってた。わたしが殴った苗行先生は、クビになったと。


「まぁ安心してよアン。お前が出禁の間、お前のクラスの人たちはオレらが守るからさ! あの人たち、友達なんだよな?」

「そう! わたし、その話をしたかった!」


 蒼男、よくその話を振ってくれたわね。


「…まぁそうだな。この学校に殺人鬼がいる可能性は高い。住伏亭がいない間にクラスの奴らが狙われたら、たまったもんじゃないものな」


 そう、そうなのよ若亭。


「ただ、今のままじゃあ守る気しないな。お前の友達」

「え」


 え。


「人に何かしてもらいたいなら、それ相応の言葉がないと…」

「……」


 言われてわたしは、「確かにー!」と思った。だって停学になったのだって、完全にわたしのせいだし。


「………わたしの友達(だち)、守ってよ。ね、一生のお願いよ」


 わたしが二人にぺこりと礼をすると、


「…分かった。お前がいない間、クラスの奴らは自亭たちが守っておこう。殺人鬼を探し出すついでにな」

「やった——!! 恩に着るわ若亭ー!」


 よ、よかったー…。若亭は性格悪いし、引き受けてくれないかと思ったわ。


「アンの友達だろ? 言われなくても守るよ!」

「あら、そう? ありがと」


 蒼男も助けてくれるようだ。悪いな、わたしのミスで。まぁ、やったことには後悔しないのだが……。


「まぁ、わたしも近くまでは来とくよ。何かあった時のために。バレたら怒られるだろうけどね」



 そして停学の一日目と二日目は、何事もなく過ぎた。そして、三日目。



 2023年1月27日(金)


 ちょうど昼休みが始まるくらいの時間。学校のグラウンドの片隅に、一本立っている大きな木。その裏にわたしが隠れて、校舎の方の様子を窺っていた所だった。

 そいつは現れた。


「誰?」


 わたしの問いかけに、その女は答える。


「”initiAl(イニシャル) killer(キラー)"A班、コードネーム”4A(フォーエー)”……」


 イニシャルキラー? コードネーム…? 何かの組織の話でもしてるんだろうか。


「お前の友達を殺しに来た」


 次回は3月30日(日)更新予定です。

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