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ハート探偵  作者: 住伏暗
高1編
11/38

第11話 秘密兵器

 暴力表現あります。


「くたばれぇ!!」


 若亭にハート探偵キーック!


「えぇ————!?」

「あつ!!」


 その場に崩れ落ちる若亭。やっぱり体ボロボロだったか。


「てめ…!!」

「これ以上無理したらあんた死ぬわよ。じっとしてなさい」


 ドクターストップというものだ。わたしは医者でもないけども。


「エンマくん、若亭を守ってて」

「わ、ワカバさん死なないでー! 何やってんですかアンさぁん!!」

「あ、あいつ…後で殴る…!」


 仲間を蹴り倒したわたしに、キョウ男はドン引き。


「お前、友達には手ぇ出さねぇって、さっき言ってなかったか……?」

「まーノリだ今のは。キョウ男も下がってなさいよ。危ないわよ」

「わ、私救急箱取ってきます! ワカバさん待っててくださぁーい!!」


 わたしは奴と向き合った。この学校で最強という不良、小田切倉成。


「この不良は、今度こそわたしがぶっ倒すわ。わたしの友達(だち)に怪我させる奴なんて、この学校に居させらんない」

「ふん」


 鼻で笑われた。


「また同じことを……。貴様が俺様に勝てるわけがない」

「どうして?」

「俺様が誰よりも一生懸命に鍛えてきたからだ。勝つためにな」


 こいつ、つまらねぇ男だな。奴の語るのを聞いてわたしは思った。


「思い出したくもねぇぜ。自分がクラスで一番弱かった中学生時代。周りの奴らに媚びへつらい、頭を下げる日々…。痛めつけられる体、クラス中の前で強いられる体操の屈辱………。そいつらから自由になるため、俺様は強くなった。毎日死ぬ思いで体を鍛え、そしてそいつらを服従させてクラスのトップに居座った。

 その時の快感ときたら、忘れられねぇぜ…。今まで自分をいじめてたクズどもが、自分に頭を下げて裸で天突き体操をする。ハートコントローラーを持つ前に、この腕っぷしの強さで俺様は人を従わせていたのさ」


 何やら壮絶な過去を持ってる風な話し方だな。


「この俺様の腕っぷしと、ゲイテからもらったハートコントローラー。これらがあれば、この“ハート業界”を支配することも夢じゃねぇ」

「夢だよ」

「いいや可能だ! “ハート犯罪者”、“ハート警察”、“ハート探偵”。これら全ての人間を従え、そして俺様はこのジャポン社会をも支配する! そして分からせてやるのさ!! 俺様を苦しませた全ての人間に、俺様が最強だとな!!

 腕っぷしが弱い奴は自由になれねぇ!! それがこの世のルールだ!!」

「じゃ、わたしの方が強ぇ!!」


 こんな奴の事情とか生い立ちなんて、知ったことか。


「見せてやるわ。裏社会の無法者(”ハート探偵”)としてのわたしの戦い方」


 カッターシャツの中に隠し持ってた物を取り出す。重い鉄の塊。折り畳み式の持ち手を伸ばせば……。


「ハンマ―――――!!」

「ハンマー…?」


 キョウ男が驚く。できた武器はそう、ハンマー。物を叩いて砕くための道具よ。


「さっき靴箱に入れてたのを取ってきたのよ。こんなの堂々と持ってたら怒られるけど、ここは人気のない場所。存分に戦えるわ」


 物騒な武器を持つのは趣味じゃないけど、目の前にわたしの友達(だち)をいじめる敵がいるなら…話は別よ。


「さぁ、行くぞ!」


 右手にハンマーを持って戦いの構え。するとここで、


「ワカバさん、救急箱持ってきま…、痛っ!」


 医療道具を取りに行ったエンマくんが戻ってきたが、足を引っ掛けて転んだ拍子に中身がばら撒かれた。そして飛んできた包帯がわたしの右手にコツンと当たり、


「わっ!」


 ぽろっと、わたしはハンマーを放してしまった。そしてそれはきれいな弧を描いて、時計台の外に飛び出した。

 ひゅ———っと落ちていき、下の砂浜にボフンと土煙を上げたハンマー。その一部始終を見たわたしは、


「何してんだお前はぁ~~~~~!?」

「えぇ~~~私のせい!?」


 顔が真っ青になった。どーしましょ、どーしましょ!?


「ハンマーが落ちたじゃないの!! あんな棘ばっかの奴と素手で戦えってのか!?」

「アンさんがワカバさんを蹴ったから私は救急箱取りに行ったんでしょうがぁ! アンさんのせいでしょ!!」

「お前らふざけてんのかこんな時に!!」


 喧嘩してたら若亭がキレた。とにかくこれはまずい事になった……。使おうとしてたハンマーが使えなくなった。するとキョウ男が、


「あのさ、オレが取ってこようか? ハンマー…」

「ほんと!?」

「ほんとですか!?」


 キョウ男いい奴だなー……。 というわけで、


「じゃあお願い! この時計台から出たとこの砂浜に埋まってるから!! その間なんとか素手で戦っとくわ!」

「おう!」

「エンマくんは若亭を守っててくれ!」

「わっ、分かりました!」


 キョウ男がハンマーを拾ってきてくれるようだ。彼が時計台の階段を降りていくのを確認して、わたしは再び奴の前に立った。


「じゃ、やろうか」

「大丈夫か? 何かトラブルがあったようだが……」

「うん」


 目の前で見てたろうが。問題はないわ。


「要は素手でお前をぶっ飛ばしたらいいわけだ。ちょうどいい特訓になりそう」


 手の指をパキパキと鳴らす。この棘男のど真ん中、撃ち抜いてやるわ。


「“心臓破壊(ハート・バースト)”!!」

「貴様の攻撃は隙だらけだ。そう来ると分かるなら、対応策を打つものだろう」


 わたしが奴の急所を右手で殴ろうとしたその時、


「“針地獄(ハリジゴク)”!!」


 奴がその右手の軌道の先に、両手の棘グローブを出した。


「い!?」


 勢い止まらず、棘の山に右手を埋めることになった。ぶすぶすと針が刺さって、


「ぎゃああ———!! 痛ってえ—————!!」


 血が出たー! 痛ぇー!!


「な、なんですかあれ! 手袋の棘でガードを…あれじゃ触れられない!! 卑怯だ…!」

「卑怯? それが戦いだよエンマくんよぉ。この棘グローブで守る限り、貴様らは俺様に触れることすらできねぇのさ」


 卑怯と言わないにしても、むかつくなぁ…。


「くっそー厄介だな。そのハリネズミのパチモンみたいな手袋…」

「余裕こいてる場合か!?」

「い…」


 やばい、こっちに向かってくるんですけど棘!


「“(ハリ)ィ・超特急(エクスプレス)”!!」


 両手であらゆる方向からラッシュをかけてくる。下からの肋骨狙い。上からの頭狙いのスマッシュ。斜め上からの頭狙い。真横からの肩狙い。攻撃が正確で、かつ速い。


「あぁ! アンさんがタコ殴りに!!」

「…いや。心配無用だ」


 そりゃどうも…! 確かに大丈夫よ。グローブの手首部分には棘がないから、そこを弾けば対応できるわ。とはいえこの速さじゃ防ぐのもきついが。


「すごい…。全部の攻撃を防いでる。アンさん、なんて反応の速さ…!」

「伊達に“ハート探偵”の特訓してたわけじゃないので…!!」


 腕だけであらゆる方向からの攻撃に対応すること。これも殺人術の一環で先生に習ってるのよ。


「おい住伏亭! 守ってるだけじゃ何もできねぇぞ!!」


 分かってるわよそんなもん! 今隙を探してんだ。


「“(ハリ)ィ”…!」


 奴が両手を頭上に振り上げた。今だ! 右足を前に踏み出して、後ろから左腕を振り切る。


「おら!!」


 “心臓破壊(ハート・バースト)”!! 当たった。


「うっ!!」


 奴が後ろにさがった。頭の位置が低くなってる。今のうちに、


「もう一発…。“心上(ブレーン)”…、」


 頭のてっぺんに、拳を打ち込む。


「“撃ち(ストライク)”!!」

「随分と脳筋な戦闘スタイルだ」


 すかっと、避けられた。そして、


「“(ハリ)ィスイング”!!」

「うっ!!」


 後ろから棘で斬るような攻撃。


「ちっ、掠った…」


 左ほっぺたを袖で拭いたら、血がべったり。これ、洗っても取れるかな。

 あの野郎、またこっちに走ってくるぞ。


「ふん!!」

「よっ」


 ジャンプ! で、わたしは棘をかわした。


「えっ、飛んだ…!?」

「なにぃ!?」

「身長180センチくらいある、クラナリのパンチを飛び越えるなんて…! すごいジャンプ力!! しかも……奴の頭上に………!?」


 ジャンプ力に関してはかなり鍛えてるんで。助走なしでも三メートルくらいは余裕で跳べるわ。


「“バウンド”……、」


 今わたしにはクラナリの頭が遥か下に見えてる。この高さから落下すれば、重力も味方して下向きにかなりの力が働く。それを利用して奴の頭を……、


「”ドローップ”!!」


 踏みつけ!


「踏んだぁ!?」

「がはっ……!」


 よしよし、効いてる効いてる。ドロップキックが。


「………なんて身の軽さ…。アンさんすごい……!」

「てめぇ…」


 クラナリの雰囲気が変わった。


「ふざけてんじゃねぇ!!」


 下からこっちをすごい形相で睨みつける。そして、


「“針地獄(ハリジゴク)”に落ちろ!!」


 奴が頭上を棘グローブで防御した。またあれだ。


「やべ、棘は踏めねぇ! とっ…どへ!」


 なんとか直撃を避けて、地面に落ちた。まぁなぜか痛くはないんだけど。体を起こすと、


「このっ…! あれっ、どこ行った…?」


 奴の姿が消えた。なんで……。わたしが戸惑っていると…。

 サクッと、右腕の肘が切れた。


「痛っ…、斬られた…!? どこから……!」


 一瞬だけ奴が目の前を横切るのが見えた気がする。でも、また見えない。奴の姿が……。若亭が、


「まさか、見えないほどの速さで走り回ってるんじゃ…。だとしたら、どこから攻撃してくるか分からねぇぞ!」

「え?」


 その通りだとしたら、やばい。そう思った瞬間、またザクッと痛みがした。今度は左の肩。


「うっ…!!」


 ザクッ、ザクッ、ザクッと、次々と色々なとこが斬られてく。本当だ。攻撃がどこから来てるのか分からない……。


「伏せろ住伏亭!!」

「痛ててててて!! やばい、見えない!」


 たまらず伏せる。だけどこんなの、早くなんとかしないと死ぬぞ。


「貴様はもう、俺様の姿を捉えることはない」


 奴の声がいろんな方向から聞こえる。嘘でしょ、本当に見えないほどのスピードで走ってるの!?


「曲芸師のようなことしやがって!! 俺様を馬鹿にしてんのか!? 戦闘は遊びじゃねぇんだぞ!! 貴様のような悪ふざけをする奴が、最初に負けるんだよ!!」


 真面目にやってるって…! にしても早く奴を見つけて止めないと…!!


「もうてめぇには付き合いきれねぇ、ここで殺す!! うおおぉおおおお!!」

「く、クラナリが怒ってます!!」

「伏せろ引内亭! こっちにもとばっちりが来るかもしれねぇ!!」


 ザクザクザクザクザクザクザクザク!! と、時計台の中は地獄絵図になった。やばい、ほんとになんとか………!

 しばらくして、攻撃が止んだ。


「はぁ……はぁ…はぁ…。どうだ……。思い知ったか。俺様の強さを……」


 奴が止まったらしい。


「おい…、どけ…!」


 わたしは途中から、攻撃を受けずに済んだ。誰かがわたしの上に覆い被さっていたからだ。それは、


「キョウ……!!」


 キョウだった。ここに戻ってきていたのか。


「はぁ……、はぁ…。…ゲホ…!!」


 彼の吐いた血が、わたしの顔に落ちた。


「なんで…」


 あちこち斬られて、彼は大量に血が出てる状態だった。


 次回は1月19日(日)更新予定です。


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