旅行の帰りに
旅行の帰り、バスの中で揺られていた。
あけみちゃんが隣に座ってくれている。
疲れからうとうとしていた私は、とうとう目を開けているのが難しかった。
『やっほー!』
新雪が積もっている。
秘密の旅行。にはちょっと薄着。
しまったなぁ。北国の寒さを舐めていたかもしれない。
でも、ずっと楽しみにしてて。寒さなんか気にならないくらい、胸があったかくて。
わくわくしていた。
『うへへ。では、記念すべき第一歩を』
『そこ危ないよー。滑るよ』
『きゃあああっ!』
つるっ。すってん。
忠告通りというか。アホというか。
物の見事に大股を開いてすっ転んでしまったわけで。
初っ端から盛大に躓いてしまう辺りが、どうにも私っぽくて。
笑っちゃった。
『ほら、言わんこっちゃない。怪我してない?』
『うん。だいじょぶだいじょぶ』
『時間はたっぷりあるんだから。いきなり飛ばし過ぎないでね』
『はーい』
『海の幸、いっぱいだぁ』『美味しそうに食べるよねえ』
『きれいだねー』『うん。きれい』
『ひゃっほー!』『いぇーい!』
『うふふ』『あはは』
あっという間の何日かで。
……目、覚めちゃった。
なんか楽しかったこと、もっともっと、いっぱいあったような気がしたんだけど。
起きたらもう、楽しかったなあってことしか覚えてなくて。ふわっとしてて。
だから。まだ。もうちょっと夢の中で浸っていたい、かも。
柔らかい感触と、甘い香りが鼻孔をくすぐる。
いけない。私、もたれかかっちゃってたみたい。
「あ。ごめん」
「ふふ」
ぼんやりしたままの眼で見上げると、あけみちゃんが優しく微笑んでいた。
「重かったよね?」
「ぜーんぜん。可愛かったからつい、そのままにしちゃった」
「そっか……ねえ。もうちょっとこうしてていい?」
「いいよー」
私は彼女にしなだれかかりながら、また懲りもせずうとうとする。
楽しい夢の続きが見られそうだった。
ふと、視界の端にそれが映り、とても幸福な気分に包まれた。
まだ誰にも言ってないけど。
私たち、ずっと恋人繋ぎだね。