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「なんてことがあったのよね」
「あ、それ、私も学校でいつも聞かれる。友達とか先生とかみんなに」
「で、純は、どう答えているの?」
「愛梨ちゃんと同じだよ。正直に答えるんだけど、みんな全然信じてくれないの」
「やっぱり」
私たちは、例の魔法の水差しが売り出された後、ターレさん(フロンちゃんのお父さん)の了解をとって、こっちの世界へ持ちかえり、自分たちで使っているのだ。
ただし、こっちの世界へ持ち込むのにあたって、この製品をお金儲けにつかったり、むやみに家族以外の他の人に貸したりしないことって条件をつけられたのだけど。
『こちらの世界には薬機法(旧薬事法)など、さまざまな法律や規制があって、この水差しは明らかにそれらの規制にひっかかっちゃいますからね。なんといっても、こちらの世界の基準に従えば、この水差しで作られる水には、実際にどんなに優れた魔法の効能があったとしても、ただの水にすぎないのです。水は単に水でしかなく、水以外のなにものでもないというのが、こちらの常識なのです。なので、あなた自身のためにも余計なトラブルの芽はさけるようにしてください』
くぎを刺されてしまった。
まあ、最初から、これをヘンなことに使うつもりはなかったのだけど。
チッ…… たくさんお金儲けができると思ったのに……
けど、あの水差しについている黒くて四角いもの、なんか私たちが着ている聖女の服の襟もとについている装置に似ている気がする。言葉を通してではなく、双方の頭の中へ直接言葉に乗せた意志を伝えあう翻訳機。
原理は同じなのかな?
たぶんそうなんだろうな。あれも魔法の装置なんだろう。
しかし、このお肌。私の友人ではないけど、いつまでも触っていたいなぁ~
「えっと、愛梨ちゃん?」
目の前にある赤ちゃん肌を堪能していた。純の。
「あ、ごめん。つい、手が勝手に」
「もう。ふふふふ」
ちょっとうれしそうだ。
そのまま、ギュッと抱きしめた。
「でも、そろそろいい加減、対策を考えなくちゃね。毎日毎日、同じことを聞かれて、同じことを返すしかないって、このままじゃ人間関係にヒビがはいっちゃうかも」
「だねぇ こないだも先生最終的にムッとした顔をしてたし」
「やっぱり、そうなんだ」
「うん。愛梨ちゃんも?」
「うん。友達の私の頬をつねる力が、だんだん強くなってる気がする」
「大変だね」
「お互いにね」
苦笑を交わしあった。
「でも、対策ってなにがあるのかな?」
「う~ん、なんだろう。なにかヒントがあるといいのだけど」
「う~ん……」
なんて、二人して腕組みしてウンウンうなりながら考えるのだけど、なにも名案が思い付くわけもなく。
そんなところへ、
「お二人とも、こんなところで何をしてるですか? 考え事ですか?」
「あ、フロンちゃん。おつかれ~」「おつかれ~」
「おつかれさまです」
フロンちゃんにも事情を説明して、一緒に考えてもらうことにした。
もちろん、なんにもアイディアはでない。
結局、列車で何駅か行った先の町にあるどこのお店のスイーツが美味しい、とか、どのお店が居心地がいいとか、そんな話になっただけだった。
ってか、こんな花の美少女三人(さりげなく私も入っていたりする)が集まって、スイーツがどうのこうのって話にしかならないって、どうなのだろう?
恋バナとか、恋バナとか、せめて、恋バナとか、三人ともなにかないのかな?
はぁ~




