第9話
無事、物見台まで移動完了。
村の中でも一番の高所にある場所。
かなり広く村の町並みが見渡せる。
ここから見た感じでは、村の家々の連なるメインロードの町並み。
その外の川や田畑。
農作業をしているWGたち。
村のダム。
川の魚を巨大な引き上げ漁で捕るという大味な漁をしているWGたち。
そして自警団のG倉庫を囲む防壁も見える。
思いのほか広いけど、逆に思いのほかこじんまりって感じでもあるね、この村。
「よう、良く来たな。」
「うっス。よろしくで。何をどこら辺からやらせてもらえるっスかね?」
物見台の高倉に居たミハエルさんに、どんなところからやらせてもらえるか聞いてみる。
ミハエルさんは割と彫りの深い顔で、口の上だけ髭を伸ばしている黒髪で短髪のメガネの姿の方。
高倉は、物見台でも、このゾンドより高い位置にあって、村の全景が眺められる。
「どうも、2週間くらい前に、流しのTHが、うちの村の自警団にKGを売りつけたらしくてな。この村は、今まで穏やかだったが、護衛の為に買ったKGが逆に仇になるってパターンもあるかもだからな。で、自警団が、うちに防壁の増築を依頼して来たんだ。だが、ぶっちゃけるとFGとかに襲われれば防壁なんてあってもなくても関係ないんだがなぁ。まあ、自警団の連中からは一応のカッコ付けの為か需要があるからな。とりあえず、自警団のG倉庫周辺の防壁の増築に行ってもらえるか?」
なるほどねぇ。
防衛用にKGを手に入れて、逆に狙われるパターンもあるワケですか。
そして、防壁ってだいぶ意味なさそうなモノなのね。
まあ、仕事になる分には良いか。
「うぃっス。じゃあ、そっちの方に行ってみます。そこからの指示は現地で誰かから聞けるっスかね?」
「だな、現地に着いたら、オレら工事社のスタッフが居るはずだから、後は、そっちで聞いてみな。」
「うっス! 行ってきまっス!」
物見台を飛び越えて……とかカッコ良さ気だけど、やると流石にゾンドでは脚部ユニットが持たないので、回り道で自警団の倉庫周辺まで移動。
「おお、オイラにしては、割と軽快にゾンドが動くじゃないか。」
『この程度の操縦ができなければ、逆に異常だと判断します。』
「うっへぇ。ですよねぇ~。」
自身への感銘に対して38が冷静にツッコんでくる。