第74話
「しかし、始めて見た時から、もしやとは思っていましたが、まさか本当にサーティーシリーズが現存していたとは。いやはや、出会いというのは奇なるモノですね。」
マカロニさんが、驚いた顔をしてから、ウンウンと、一人頷いて、良く分からない事を言って来る。
「うん? サーティーシリーズ? 何スか、それ?」
オイラの、その問いに、
『私の製造番号に対する呼び名の事です。過去の技術者には、製造番号が30番代なのでサーティーシリーズと呼ばれていました。また、サーティーシリーズは、全て球形をしており、他の外部接続OSとの差別化が見た目で分る様に設計されています。』
と、38が応えて来た。
「うん? 見た目が球形なのがサーティーシリーズってのは分ったっスけど、それが、マカロニさんが、驚くくらい、何か凄いモノなんスか?」
良く分からず、マカロニさんに聞いてみると、
「言っても分からないと思いますが、サーティーシリーズは、過去の時代に作られた外部接続OSの中でも最高傑作と言える性能で、量子コンピューターという分類の、超性能のコンピューターのシリーズなのです。その上で、38番という事は、サーティーシリーズの中でも、ほぼラストロットなので、ほぼ最強の性能と言っても過言ではないです。いやぁ、まさか、現存している実物を見られるとは思いませんでした。」
マカロニさんが、メガネを輝かせながら、中指でメガネをクイッと上げる。
興奮冷めやらぬといった感じだ。
『いつもマスターは、私に不当な評価を下していて、常々、不服に思っていたところですが、私を正当に評価してくれる方が現れて、とても喜ばしいです。これから、仲良くして下さいね。』
と、38が、のたまうが、
「こちらこそ、よろしくお願いします。是非、どういう構造になっているか、分解して分析してみたいところですね! その球状ボディーの中に、どんな大胆な姿が秘められているのか、是非調べ尽くしたいところです! ああ、その球状ボディーに秘められた姿を調べ尽くせたら、どれほど素敵でしょうか! ハァハァ!」
と、マカロニさんが、何か息も荒く言って来る。
『マスター! この方からは身の危険を感じます! どうか、この方から、私を守って下さい! 「さんぱち」でも「みはち」でも、呼び名は何でも良いですから!』
珍しくいつも冷静な38が叫んで来る。
しかも、すんごい卑屈に懇願してくる。
物凄い変わり身の早さだ。
よっぽど怖いんだな、マカロニさんが。
いや、オイラも、ちょっとコレは引くけど。
「うん。マカロニさん、うちの38を分解するのはナシの方向性で。オイラが寝ている間とかも、勝手に38に触らないでやって下さい。」
とりあえず、助け舟を出してやる。
「まあ、所有者のロクスリー君が、そう言うなら……残念ですが、仕方無いですね……。」
心底、残念そうに肩を落としながら言って来るマカロニさん。




