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空手バカ異世界ー異世界に行ったら最強だった。空手バカの異世界珍道中ー  作者: サエキ タケヒコ
第2章 ゴブリンに襲われている少女を救ってみた
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ベルデ村 その1



「あそこがベルデ村です」


「やっと着いたか。じゃあ、打ち合わせ通りにやるぞ」


「はい」


 ルビーを先頭にして、オレたち4人は村の入り口に向かった。


 入り口の手前で農作業をしていた男が、ルビーを見ると悲鳴をあげて村に逃げ帰っていった。


 オレたちが村の入り口につくと、警鐘が鳴らされていた。


 手に(すき)(くわ)をかかえて、村人たちが出てくる。


 みんな表情が怯えていた。


「あっ、アンナだ。アンナがいるぞ」


「しかし、ホワイトウルフが」


 村人が集まったところでオレは手をあげて村人の注意を引いた。


「皆の者、この村の娘のアンナをゴブリンから助け、連れて帰ってきたぞ」


 村人は無反応だった。


 そんなことがあるわけはないという顔だ。


 おそらくアンナは偽物かなにかで、これは罠だと思っているようだ。


「アンナは偽物ではない。またおとりでもない。さあ、アンナ、行きなさい」


「お父様、お母様」


 アンナが両親を見つけて、そのもとに駆けていった。


「しかし、どうやってゴブリンからアンナを取り戻せたのだ」


「うおおおおおおんー」


 ルビーが遠吠えをした。


「うわあー」


 村人が腰を抜かした。


「このホワイトウルフがアンナを助けたのだ! ホワイトウルフの強さは皆の者も知っておろう!」


「おおおお」


 村人が感嘆した。


「だが、どうして魔物のホワイトウルフが人間を助ける」


「それはこの私がこのホワイトウルフの主人だからだ」


「そんな馬鹿な」


「こちらにおわす方を見よ」


 オレは背中に隠していたブラックを高々と差し上げた。


「これは……」


「ワイズキャット様」


「皆の者、頭が高い。ここにおわします方は、招福猫神(しょうふくびょうしん)様であらせられるぞ」


「ははあー」


 村人が土下座した。


「じゃあ、あとは任せたぞ」


 オレはブラックに囁いた。


「頭を上げい」


 ブラックが言った。


「この人間にホワイトウルフを使役させたのはこの私である」


「はははあー」


「今の乱れし世において、お前たち弱き民を、粗暴な魔物たちから守るためにしたことだ。ただし、このホワイトウルフはここにいるリュウジ殿の命令しかきかない。そこは間違えるな」


「承知いたしました」


「ということで我らは、お前たち弱き者の守護神じゃ。ところで私達は長旅で疲れている。分かるな」


「ありがとうございます。すぐに食事とお休みになられる場所をご用意いたします」


 村長らしき人が平服して言った。


 すべてはブラックの筋書きだった。


 ルビーを村人に受け入れてもらうためと、オレの力は秘密にしておいた方がいいということで、一芝居打ったのだ。


 なんだか、水戸黄門のドラマで助さんを演じているみたいで恥ずかしかったが、とりあえず、晩飯と宿もゲットでき成功したようだった。




 その晩は、大宴会となった。


 守護神をもてなすということで、村中、総出でご馳走を用意してくれた。


 まともな食事を取るのは柳に殺されてから初めてだった。


 僕は夢中になって食べた。


 酒も勧められたが、酒は遠慮して、ひたすら肉を食べた。


 タンパク質が足りていなかったので、ここでしっかりと補給するつもりだった。


 食事が終わると村はずれのコテージのようなところに案内された。


「リュウジ様はこちらをお使い下さい。なにか足りないものがあれば、何でもお申し付け下さい」


 そい言い残して村長は出ていった。


 僕はベッドに寝転んだ。


 ベッドで横になるのは久しぶりだった。


 服を脱ぐと、用意してあった浴衣のような寝間着に着替えた。


 布団の中に潜り込んだ。


 日が落ちて夜になると急に寒くなる。


 こちらの世界は気温の日格差が大きいようだ。


 布団はひんやりとして冷たかった。


「リュウジ」


 なにやら、足もとの方がごそごぞして、声がした。


 見るとルビーだった。


「一緒に寝てもいい?」


「えええええ」


 僕の返事をきかずに、ルビーは布団の中に潜り込んできた。


(温かい!)


 体温が高いのか、ルビーは温かった。


 それに獣臭くない。


 毛皮はすべすべして、清潔な感じですごくいい。


 思わず抱きしめた。


 マフマフして気持ちいい。


 耳が顎にあたった。


「おっ、この耳」


 触りたくなった。


 思った通りの触り心地だ。


「いやん。そんなところ触っちゃ」


 何と言って良いのだろうか、これはたまらない。


 僕はすっかり童心に帰り、お気に入りのぬいぐるみを抱いて寝る子供のようになった。


 抱き枕としてもルビーは最高だ。


 僕はまぶたが重くなってきた。


 すると、ドアが遠慮がちにノックされた。


 誰かが来た。






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