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空手バカ異世界ー異世界に行ったら最強だった。空手バカの異世界珍道中ー  作者: サエキ タケヒコ
第3章 冒険者になってクエストをこなしてみた
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新たな旅立ち


「セイヤー」


 ウルトが刀を一閃させた。


 オレはかろうじてそれを避けた。


 続いて第2撃が来る。


 後退した。


(マズイ。このままではやられる)


 すると新魔王の少女がブラックの方を向いた。


「ねぇ、ワイズキャット、あなたの魔力を私に貸してちょうだい」


(なんの話だ?)


「もう、しょうがないわね。でもこのままだとあのバカが死ぬから仕方ないわね」


 ブラックが少女の肩にの上に乗った。


 少女は両手を前に突き出した。


 すると、青く輝く魔法陣が出現した。


「ば、馬鹿な、魔法だと?!」


 ウルトが後退りした。


 少女の手から火炎の魔弾が撃ち出された。


 その魔弾はウルトを直撃した。


 ウルトは刀を取り落として、倒れた。


「今よ!」


 ブラックが叫んだ。


 ルビーがウルトに襲いかかり、ウルトの腕を食いちぎる。


 オレも駆け寄り、腹を蹴り上げた。


 ウルトは動かなくなった。


 カリムダスランは目を丸くした。


「まさか。魔法だと。 魔王の復活……」


「カリムダスラン、父を裏切り、弟を殺し、そして私に手をかけようとした罪、許しません」


「ひ、ひぃ~」


 カリムダスランは怯えた顔をした。


 オレは彼女が魔王らしく魔法で裏切り者を焼き尽くすのを見守っていた。


 だが、魔王はいつまでたっても魔法を撃たない。


「何をしているのです! 早く彼を討ちなさい!」


「はいっ?」


「あなたが殺るのです」


「えっ。オレ?」


「そう、助けてもらったんだから、それくらいお返ししなさい」


 ブラックが彼女の肩の上から言った。


「へっ。仕方ね~」


 オレは、カリムダスランのもとに歩いていった。


「おい、立て」


「貴様!」


 カリムダスランは健気にもオレに殴りかかってきた。


 オレはその拳を左手で弾き、同時に右拳を顎に打ち込んだ。


 そして、連続技でボコボコにした。


 カリムダスランは意識を失い。ズタボロになって倒れた。


「こんなもんでいいか」


 いくら相手が魔人でも抵抗不能になった者を殺すのはなんとなく嫌だったので、腹を蹴り上げて終わりにした。


 新魔王だという少女は何も言わなかった。


 遠くから人の声が聞こえてきた。


 もしかすると奴隷館の追手かもしれなかった。


「そろそろ行くか」


 オレは歩き始めた。


 ルビーとナオミがついてきた。


 一拍遅れて、ブラックを肩に乗せた新魔王の少女もオレの後についてきた。




「あれは何だったんだ」


 オレはブラックに魔法のことを訊いた。


「実はワタシ、体内で少しだけマナを合成できるの」


「それって……」


「そう魔法が使えるの。それにそのマナ、つまり魔力を他人に移転することもできるの」


「ええええええええ。どうしてそんなことができる」


「だから神様として民に崇められているんだってば」


「そうだったのか!」


「彼女はワタシのその能力のことを知っていた。だからあの場で、魔力を分けてくれと頼んできたのよ」


「そうか。それでか」


「あなたの生命を救うためだったんだからね」


 ブラックは恩着せがましく言った。


「あ、ありがとう」


「うん。分かればよろしい」


「だったら、ブラックと新魔王が二人で組めば、この世界は二人のものじゃないか」


 ブラックは困ったように横を見た。


 新魔王が申し訳無さそうな顔をしていた。


「この度は、助けていただいてありがとうございました」


「いえ」


「それで、そのワイズキャット様とのことですが……」


「どうなの」


「ワタシが生成できるマナの量は少ないの。せいぜい初級魔法を一発分くらいなの」


「そうか。だからカリムダスランに魔法攻撃できなかったんだ」


「そうです」


「じゃあ、世界制覇ってわけにはいかないね」


 新魔王はうつむいた。


 睫毛が長くてうつむき顔も美しかった。サキュバスと人間とのハーフの母親の血は争えない。


「そこで、リュウジ様にお願いがあります」


「お願いって?」


「私もリュウジ様の旅のお仲間に加えてほしいのです」


「……」


「父も兄弟も殺され、母も私が攫われた時に、私を助けようとして殺されました。そして、この身に流れる魔王の血のせいで世界中から狙われています。でも、強い拳士であられるリュウジ様と、魔力を供給できるワイズキャット様のそばなら生きながらえることができるかもしれません」


「どうする?」


 オレはみんなを見た。


「ワタシは賛成」

 

 ブラックが新魔王の肩の上に乗った。


「ルビーは?」


 ルビーは新魔王を睨んだ。


「リュウジにちょっかいを出さないと約束するならいいわ」


「もちろんです。二人がご夫婦だとういうのはワイズキャット様から伺っております」


「ならいいわ」


「おい、それは違うって」


 だがオレの否定の声は、ルビーの遠吠えで打ち消された。


 なんだかげっそりと疲れたオレは最後にナオミに訊いた。


「ナオミはどう?」


「私には反対する理由はありません」


「じゃあ、決まりね」


 ブラックが満足そうに言った。


「分かった。君も一緒に旅をしよう」


「ありがとうございます」


「ところでまだ名前を教えてもらっていなかったっけ」


「失礼しました。シルビアです」


「シルビア、よろしく!」


 そうして、オレは彼女たちと旅をすることになった。




 この半年あまり色々なことがあった。貧乏空手家のオレは、カネに目がくらみヤクザに空手の指導をしたばかりに、対立する組織に目を付けられて殺された。

 

 だが異世界に転生して、ルビーやブラックと仲間になった。


 そして、今、ナオミと魔王であるシルビアも仲間になった。


 魔力が枯渇して魔法の無いこの世界に、肉体を武器に変えたこのオレと、一発だけ魔法を撃てる新魔王と不思議猫のコンビ。それにホワイトウルフ。


 本当に変なパーテイだ。


 ナオミはオレに空手を教えてくれとせがんでいる。


 ポーターとして体を使い、体幹が出来ている彼女は技を教えればすぐに強くなるだろう。


「リュウジ!」


「リュウジ様~」


 考え事をしていて、みんなより遅れたオレを、彼女たちが呼んでいる。


(まっ、いいか。何だか楽しそうな旅になりそうだ)


 オレは彼女たちに手を振り返した。


 旅はまだ始まったばかりだ。



 エタっていた作品を「第1部仲間との旅立ち編」として完結させました。


 魔法が使えない異世界で、空手家と一発しか魔法を撃てない美少女魔王の冒険は、もし、需要があれば、別途書いてみるかもしれせんが、本作は一応これで完結です。


 なお、作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら


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 作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。


 ここまでお読みいただきありがとうございました!!!


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