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空手バカ異世界ー異世界に行ったら最強だった。空手バカの異世界珍道中ー  作者: サエキ タケヒコ
第3章 冒険者になってクエストをこなしてみた
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冒険者ギルド


「おい、止まれ」


 槍や剣で武装した警備兵が叫んだ。


 コリンの街の入り口にまで来ていた。


 コリンは高い城壁と堀に囲まれた辺境の城郭都市だった。


「魔物は町に入ることは許されない」


 警備兵がルビーに槍を向けた。


「まて、まて、このホワイトウルフは特別だ」


 オレはベルデ村の村長が発行した証明書と感謝状を示した。


「このホワイトウルフは、人間の味方だ。人間を傷つけたりはしない。それどころかゴブリンに拐われた少女を救出したんだ」


 警備兵たちはそれでも疑わしげにルビーのことを見た。


 これも想定の範囲だ。


 オレはブラックを抱き上げると高く掲げた。


「皆の者、頭が高い。ここにおわします方は、招福猫神様であらせられるぞ」


 ブラックを見ると警備兵たちが平服した。


「ははあー」


 この水戸黄門のような茶番劇はつくづく馬鹿らしくなるが、ルビーを連れて町に入るにはこの儀式をしなければならない。


 後は前回のベルデ村と同じ展開だった。


 無事に門を抜けてコリンの町に入った。


 町に入ると早速、冒険者ギルドに向かった。



 冒険者ギルドは酒場と一体になっていて、手前が酒場で、奥に依頼を掲示する掲示板とギルドの窓口のカウンターがあった。


 オレはカウンターに行った。


「すみません。冒険者として登録したいんです」


「はい」


 オレは名前やその他の事項を登録して手続きをした。


「それで、申し訳ないのですが、初登録の方は冒険者見習いから始めることになります」


「すみません、こちらの世界に疎いので、言われていることの意味がよく分からないのですが」


「これまでは、魔法で申請者のレベルやスキルなどを測定して、それにあったレベルを与えていました」


「はい」


「でも今は、ステータス確認魔法が使えないので、一律、冒険者見習いから始めて、実績に応じてレベルが上がるシステムに変更しました」


「それで、冒険者見習いだとどんなクエストを受けることができるのですか」


「冒険者見習いが受けられるクエストはありません」


「それでは、生活費が稼げないので困る」


「もっとも、何もできないということではありません」


「どうしたらいいんですか」


「他の冒険者のパーティに加えてもらい、ファーストミッションをこなしたら、冒険者見習いからFランク冒険者になります。見習いが取れて冒険者になると自分でクエストを受けることができるようになります」


「そうですか」


 とは言っても、異世界の初めて来た町で、パーティに入れてもらえる冒険者仲間を見つけるなんてたやすいことではなかつた。


 とりあえずオレは首からかける軍隊のドッグプレートのような見習い冒険者証をもらうと、カウンターから離れた。


「どうする」


 ブラックに訊いてみた。


「誰かのパーティに入れてもらうしかないでしょう」


 ブラックは涼しい顔をして言った。


「おい、そこの」


 酒場のテーブルから声がした。


 見るとあまり人相のよくない男がこちらを睨んでいた。


「冒険者ギルドは魔物禁止だ。出てゆけ」


「ルビーは町の許可をもらっている」


「そんなことは知らん。俺達冒険者は魔物征伐が仕事だ。その仕事場に魔物を持ち込むなんて非常識だろう」


「ルビーはオレの仲間だ」


「仲間だと、おい、みんな聞いたか。この見習い野郎は、魔物の仲間だと自分で認めているぞ」


 酒場から馬鹿にしたような笑い声した。


「なら、ここで征伐してやる」


「デニー、やめなさい」


 そう止める人がいたが、デニーと呼ばれた男は席を立つとオレの元に来た。


「外にでろ」


 オレは黙って外に出た。


 酒場にいた冒険者たちもぞろぞろと出てきた。


 総出でオレを袋たたきにするつもりかと警戒したが、どうやらギャラリーのようだった。


「土下座して謝り、その魔物を連れて町からすぐに出て行けば見逃してやらなくもない」


「断る」


 オレは即答した。


「なら、こうしてやる」


 デニーは剣を抜くと斬りかかってきた。


 それを見て、囲んでいる群衆から悲鳴が起きた。


 オレが一撃で殺されるのだと思ったのだろう。


 刃が迫ってくる。


 しかし、挙動が遅い。


 オレは半身になって横に避けながら手刀受けで剣を横に払った。

 

 剣が、くの字に曲がった。


 唖然とするデニーの手元を前蹴りで蹴った。


 剣が飛んだ。


「さあ、次はどうする」


 道に落ちた曲がった剣をデニーは信じられないように見た。


「ま、まさか魔法を使えるのか?」


「魔法? そんなもの使っていない」


「なら、どうしてこんなことができる。レベル5以上の身体強化魔法を使わない限り、素手で剣を払って曲げるなど不可能なはずだ」


「おまえの剣が粗末なだけだ」


 鉄の細い板に申し訳程度に刃を引いた粗悪品で、とても剣とは呼べない代物だった。


 デニーは悔しそうに俯いた。


「まだやるのか」


「このまま引き下がれるか」


 デニーが殴りかかってきた。

 

 オレはその殴ってくる腕を思い切り叩いた。


 受け即攻撃だ。


 受け技で攻撃してくる敵の部位を痛めつけるのだ。

 

 これも空手の基本的な戦い方だ。


「痛え」


 デニーが腕を抑えて倒れた。


「骨が、骨が折れた。痛え、助けて」


 デニーは路上をのたうちまわった。


 路上で倒れているデニーの元に何人かの冒険者が行って手当を始めた。


「君、名前は何という」


 口に髭をたくわえた大柄の男が言った。


「リュウジだ」


「私はビルという。少し中で話をしないか」


 ビルは顎で冒険者ギルドの酒場を示した。


「いいだろう」


 オレはビルの後をついてギルドの酒場に入った。


 ルビーたちもついてきた。


 席に座るとビルの横に皮の鎧をつけた若い女性と男性が座った。


「飲み物は何にするか」


「酒以外ならなんでも」


「じゃあ、ルートビアにするか?」


「ルートビアは異世界(ここ)にもあるのか」


「ああ」


「ノンアルコールだよな」


「もちろん」


「じゃあ、それを」


「まず、自己紹介からしようか」


 オレは頷いた。


「私達は冒険者でパーティを組んでいる。私がリーダのビルだ」


「私はサラよ」


 隣の若い女性が言った。


「オレはジョーだ」


 左側の金属の鎧を来ている若者が言った。


「オレはリュウジで、こっちがブラック、その隣がルビーだ」


「おお、招福猫神様ではないですか」


 ルビーを見て、ビルが目を丸くした。


「ああ、別にかしこまらなくていいから」


 オレは平伏しようとするビルたちを制した。


「で、話っていうのは」


「実は、リュウジさんのお力を借りたいと思いまして」


 ルビーが連れと分かると、ビルの口調が急に丁寧になった。


「力を貸す?」


「端的に言えば、私達のパーティに入っていただけないかということです」


「皆さん、冒険者ですよね」


「最初に申し上げた通りです」


「そのパーティに入れてもらえるということですね」


「はい」


 オレはブラックを見た。


「いい話じゃない。受けたら。一緒にミッションをこなしたら冒険者になれるんでしょ」


 オレは頷いた。


 ビルの方を向いた。


「分かりました。お申し出をお受けしましょう」


「おおお」


 ビルは両脇のサラとジョーを顔を見合わせて、喜びの表情を見せた。


「それにしてもリュウジさんはどうしてあんなにお強いんですか」


「それは……」


 何と答えていいのか分からなかった。


「それは、私の警護者だからよ」


 ブラックが偉そうに言った。


「おおお、やっぱり招福猫神様のボディガードだったんですね」


「そうだ。ちなみにリュウジは私の警護者になるために、人里離れた山にこもり何年にもわたり精霊たちの指導により体を鍛えてきた。だから、世間のことには疎くて、子供でも知っているような常識が無い。その点は理解してやってくれ」


「承知いたしました。招福猫神様を警護するために人里離れた山で修行を積んできたということでしたら納得です」


「ちなみに、このホワイトウルフは、その山での修行中にリュウジとパートナーになった。この者も私の警護者だ。人間には一切危害を加えないから安心せよ」


「分かりました」


(おい、おい、俺達は助さん、角さんかよ)


「ちなみに、そのホワイトウルフがリュウジさんのパートナーというのはどういうことでしょうか」


「ああ、夫婦よ」


 ことなげにブラックが言った。


 サラが「ええええ」と言ってドン引きした。


「ち、違いますよ。誤解です。今のは冗談です」


「もう、なに恥ずかしがっているのよ」


 ルビーがうっとりした目をしてオレの腿にスリスリと頭を撫で付けた。


「わ、分かりました」


 ビルが慌ててこの話題を打ち切るように言った。


(おい、おい、何が分かったんだよ)


「では、そろそろ本題に入りましょうか」


 ビルが真面目な顔をして言った。





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