第8話 『暗殺』!
迂闊だった……まさか、あいつらが、あれ程の愚物だったとは……
状況から類推するに、『魔術師殺し』が、使われた様だ。
これは、要するに『魔法』に触れると、『爆発』する『薄色無味無臭』の『煙』だ。
『煙』故に、持ち運びに留意する必要こそあるが、極めて気付きにくい。
しかも、殺傷能力は、触れる『魔法』の威力に比例するなど、高性能な『魔法兵器』である。それが、『魔術師殺し』と呼ばれる所以だ。
恐らく、宝箱に偽装した『煙噴出装置』で、薄暗い室内に『魔術師殺し』を、あらかじめ散布しておいた。仕掛けたのは、ノーマン君あたりだろう。
しかし、疑問もある。これだけの『高額商品』を、如何にして調達したのか……
そうか! 僕の装備だ。あれらは、僕が若い頃から冒険で得た物だ。中には、希少品もある。当然だが、曰く付きの物もだ。現金もだが、果たして、上手く売れるのやら。
とどのつまり……
僕は、死んだ。否、『暗殺』されたのだ。他ならぬパーティーメンバーからな。
そう言えば、以前からノーマンが、中心になって僕の装備について質問していたな。
それすらも、今回の『暗殺劇』の『伏線』だった。そう言う事に、なるだろう。
事ここに至ると、『依頼』の真偽も、疑わしくなってくる。
それに、トミーや、スチュアートが、『知らなかった』とは、考えにくい。
やはり、あの3人が、結託している。そう考えるべきだろう。
僕としては、彼等の『成長』は、『魔王退治』の為、人類の為だと思い、『指導』してきた。が、これが、彼等の返答だとすると、ここは、きっちり落とし前をつけるべきか。
だが、『勇者』を虐待すると、世間からの風当たりが強くなる。それに、『勇者』が『魔王』に負けたら、批判の矛先が僕に向く。やはり、もう関わるべきではないのだろう。
「おひおひ……あんなに呆気なく『殺された』割には、冷静過ぎるだろう。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
勿論、僕だって『死』より『生』の方がいい。が、何事も『絶対』は無い。どんな『魔物』に殺されるか等、予知できる訳ない。だから、『手』を打っておいた。
それは、『輪廻転生』の『魔法』だ。予めかけておき、『死亡』した時に『発動』する『魔法』だ。『死亡』時点で有する『知識』『技術』『能力』を、保持したまま転生可能だ。
とても難易度が高いので、修得できたのも『知識』を、保持して複数回転生した僕位だ。
で、ようやく、『死者』を裁く『神』の基に辿り着いた。ここで、『能力』を使う。
「『お願い申し上げます』。僕を殺した連中が、いない世界へ、『転生』させて下さい。」
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次回予告
第9話 現状把握
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