第6話 ダンジョン探索~勇者と会話
「……オッサン。」
場所がらに鑑み、小声で話し始めるトミー。
「何かな、トミー君、」
こちらも同様に、声量を落とす。
「あんたよぉ、アビイに手ぇ、出してんのかよ。」
余りに、唐突な発言だったので、大きな声を出しそうになった。一体全体何だ……
「は? ……無い無い無い。あり得無いよ、トミー君。その様な事実は『無い』。むしろ、それは、『デマ』だよ。その様な『デマ』を、何処で耳にしたのかね。」
「そりゃ、普段の様子を、見りゃ、そう見えんだろ。オッサン。」
「冷静になりたまえ、トミー君。『いい年こいたオッサン』が、若い女性と、交際出来る訳無いだろう。」
「……本当なんだな。」
「嘘など無い。君が普段見ているアビイ君は、僕の『魔法』を頼りにしているだけだと思うよ。」
「……あんたも、まんざらでもない。そうじゃねぇのか。」
「僕も気を遣うよ。常時一緒に行動するパーティーメンバーに、過剰な『塩対応』をする訳にもいかないからな。」
わざとらしいが、肩をすくめる。
「……ふぅん。なら、オッサンは、アビイに手を出さないって訳だな。」
「勿論だ。僕からは、そんな事……交際などしていないし、今後もしない。これで、信じて貰えるかな。」
ここで、洞窟から出て来たのは、リボンを身体に巻いたヤモリだった。
「おい、みんな。ノーマンのメッセージが、きたぞ。」
スチュアートに、指摘されるまでも無い。これは、『伝書動物』の『魔法』だ。
要するに、動物に手紙を括りつけ、指定した人物や場所へと、届けさせる『魔法』だ。
「……ノーマンの奴、『盗賊』は見つけられなかったが、『魔物』を見つけたらしいな。安全なルートも書いてある。」
トミーが、手紙を読んでいる間に、僕はヤモリに『ご褒美』として、干し肉を与える。
お礼を言うまでも無く、ヤモリは、去って行った。
「いやいや……そもそも、ヤモリは、言葉を話す事なんて、あり得ないだろう。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「オッ、なら、ようやくトツニュウかよ。」
「だな。俺達も行こう。問題無いよな。オッサン。」
「トミー君、スチュアート君……是非に及ばずだぁっ。」
随分、前置きが長くなってしまったが、こうして、トミーが作った『魔法』の『光』で、明るく照らされた洞窟の中へと、侵入する。
* * *
次回予告
第7話 ダンジョン探索~閉じる罠
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