第54話 記者会見~その2
「さて、1名欠番が出たが、質疑応答の時間は、残っている。次の質問者はいるか。」
次の質問者を決定させると、その者は、起立し社名と名を名乗る。
「では、質問します。ネットニュースに、リンクを張る形で、記事を書いた記者の個人情報を、暴露したのはどなたでしょう。『総統』閣下。」
「僕だ。」
「その行為、法的倫理的観点からの、根拠を説明お願い致します。『総統』閣下。」
「諸君らは、『勘違い』をしている。で、諸君らの『勘違い』を正す前に1つ。」
ここで、人差し指で『1』を示した。
「諸君らの『記者魂』は、どちらの方角を向いている。」
「……それは……私達に、『記者魂』が無い。とでも言いたいのですかぁっ!」
「諸君らは、大好きなのだろう。『国民の知る権利』とやらが。故に、教えてやったまでだ。昨今では、農作物に生産者の顔写真を、添付する世の中だしな。」
「そんな! それでは、『個人情報保護法』を蔑ろにするつもりか! 言論統制に余念がない『独裁者』と何の変りもありません! 即刻停止すべきです! 『総統』閣下。」
「それが、『勘違い』だと言っている。そもそも、『個人情報』を暴露してきたのは、諸君らの方だ。ワイドショー等で、被疑者や被害者の実家や顔氏名を報道しただろう。故に……」
ここで、一拍おいて、様子を見る。問題なさそうだ。
「最初に、諸君らの『記者魂』を問うた。『国民の知る権利』とやらを、振りかざした諸君らの振る舞い目に余る。故に『自業自得』が当たったのだ。」
「しかし、取材にも影響が出かねません。報道活動を委縮させたいのですか。『総統』閣下。」
「僕を『凡百な独裁者共』と同一視するな。僕は『言論統制』をしない。自由に言ってくれて構わん。が、無責任な者が、無責任な発言を、無責任に垂れ流す事を看過しない。特に……」
「『不法侵入』や『盗聴盗撮』など、警察沙汰になる事例もあった。諸君らの『記者魂』とは、『倫理』以前に、『法律』にも抵触している。尚……」
会場内の人間には、何時の間にか手にした『ブーメラン』で、さされた様に見えるだろう。
「僕は、『自主規制』を強制しない。何故なら、『自主規制』できない業界には、僕も遠慮なく対応する。それだけだ。『因果応報』に注意したまえ。以上。」
その記者は、がっくりうなだれて着席した。……否、真っ白に燃え尽きたボクサーの如し。
「次の質問です。人材派遣会社に臨時法人税を10兆円、その幹部に1千億円課したそうです。が、その様な『特定業界』を狙い撃ちする政策の本意を、お答え願います。『総統』閣下。」
「『本意』……まぁ、連中は『中抜き』で、私腹を肥やしている。冷水を浴びせたまでだ。」
「では、次の質問です。NHKに、スクランブル放送を義務化し、スクランブル放送実現まで、受信料を徴収禁止し、違反すれば臨時法人税10兆円とされた。事実ですか。『総統』閣下。」
僕が、肯定した所で、時間切れとなった。今日の記者会見は、終了だ。
* * *
次回予告
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