第32話 幕間6
「はぁっっっ!」
患者が、跳び起きたのは、簡素な木製寝台だった。
「おや、お目覚めでしたか。お疲れ様です。手荷物は、そちらになります。」
下級神官服を着た男から、話しかけられた。
「……し……しあ…………シアイ! 試合は! どぉーなったぁっ!」
「おや、ご存じない。『魔法』で、完全治癒した筈ですが……記録によれば……。」
木製のクリップボードに止められた書類をパラパラとめくる男性神官。
「笑止千万。」
男性神官の「『爆裂火炎』による『焼死』ですね。勝者『カインド魔術師団』以上です。」は、「笑止千万。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
「随分、高威力の『魔法』を使われましたから、痛みを感じる前に、意識を失ったのでしょう。勿論、『緊急避難魔法』で、保護されておりましたから、死ぬ前にここへ転移出来たのです。」
「……そんな……。」
「まだ、混乱していますか。本日一杯であれば、ここでお休みしても、問題ございません。」
「……そんな……俺達は、負けたのかよ……。」
この時、両隣の寝台から、跳ね起きたのは、2人の男達だ。
呆然と愕然と唖然とした2人に、さっきと同じ事を話す男性神官。
この時、正午を報せる鐘の音が、鳴り響いた。
「お昼ですね。では、私はお昼休憩に行きます。ごゆっくり休んで下さい。」
そう言於いて、立ち去る男性神官。取り残される3人の男達だった。
「そんな……オレタチ、マけたのか……。」
「何故だぁっ!」
「お前のせいだぁっ!」
「ああ! こら! お前だって、役立たずだったぜぇっ!」
「ざけんな! 元をただせば! お前が、アイテム売れてねぇからだろ!」
「んだとぉっ! こらぁっ! お前だって、預けた金の引き出しに失敗しただろ!」
「イイカゲンにしろぉっ!」
ここで、スチュアートの鉄拳制裁が炸裂。2人の頬を打ち据えた。更に、宥めようとした。
「いいやぁっかましいい!」
2人がかりで、スチュアートの顔面を、叩きのめす。よろめき鼻血を出すスチュアート。
結果、乱闘騒ぎになった。昼食時でもあり、発見はかなり後になった。
* * *
次回予告
第33話 動画~質問コーナー:『パレスチナ問題』
ご愛読ありがとうございます。
面白ければ、ブックマークと、星をお願いします。
励みになります。




