第29話 動画~財務省:その1
今日は、インターネット向けライブ配信用動画の撮影日だ。勿論、『只の』動画ではない。
場所は、『総統執務室』。これは、国会議事堂の会議室の1つを、流用した物だ。
入り口の正面、デスクの上に脚を乗せて着席。尚、動画撮影者とカメラは、左側に配置。
* * *
開放したドアの外側に、今回のゲストが、姿を見せた。よし! ライブ配信動画開始!
「失礼致します。『総統』閣下。」
「入りたまえ。何時始めても、一向に構わん。」
一礼の後、入室して来たのは、財務省事務次官、同財務官、同主計局長だった。
「では、お言葉に甘えまして、申し上げます。所信表明演説についてです。『総統』閣下。」
「……ああ、あれか。本当なら、話し足りないのだが、尺の都合でああなったのだ。で?」
「大変、聞きごたえのある、濃い内容の物でした。近年聞いた事の無い内容でした。」
「前置きは、いい。時間の無駄だ。さっさと、本題に入りたまえ。」
「では、率直に……『壮大』過ぎる『創作』ですな。『財源』として、公務員の給与削減を、掲げていますが、全く足りません。国家公務員は、64万人程度です。たかが知れています。」
「知っているさ。削減金額が、約3兆円程度なのだろう。紙幣を刷れば済む話しさ。」
「それこそ、『誇大妄想』……『パンが無ければケーキを食べればよい』と同じ論法です。」
「具体的な話をしたまえ。数字を用いてな。それも、『精密』に『精細』に『精緻』にだ。」
「先程、『紙幣を刷る』と仰いました。それは、『国債を発行する』と言う事ですか。」
「何故か、この国ではそうしないと、『紙幣を発行できない』のだ、そうするさ。」
「では、『総統』閣下は、『国債の累積発行額』が、『1200兆円』になる事をご存じないのですか。これは、国の『借金』です。こんな『負の遺産』を『子々孫々』に残すおつりか!」
「……それだけか。それ以外に、報告すべき事項は、欠片も無いのだな。」
「早々にプライマリーバランスを、黒字化すべきです。赤字国債など、只の一時凌ぎです。」
「……で、本当に、それ以外、報告すべき事項は、微塵も無いのだな。」
「その通りです。どうか、ご英断をお願い申し上げます。『総統』閣下!」
「諸君らの『言い分』は、よく分かった。で……。」
ここで、机上に投げ出した両脚を、床に降ろし、人差し指で『1』を示した。
「諸君らの意見を論破する前に1つ。諸君らの『羞恥心』は、どちらの方角を向いている。」
「……それは……私達が、『厚顔無恥』だ。とでも言いたいのですかぁっ!」
「では、『論破開始』だ。先程、言ったな。『国の借金が1200兆円』だとな。」
「その通りです。故に、ご英断が、必要なのです。『総統』閣下!」
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次回予告
第30話 動画~財務省:その2
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