第21話 お見合い~あとは若い人達に任せて
ここで、室内に二人きりになった。とは言え、ここから彼女の『本音』を探らないと。
「まず、確認したい。僕は、かつて大病を患った。その点を、何処まで理解しているのかな。」
「はい。『白血病』と『脳腫瘍』ですね。ですが、『完治』したと、伺っております。」
「だが、それらは、全て『癌』だ。再発の可能性は、否定できない。そう診断された。即ち、僕の家族は、妻を含めて、病気が再発した僕の看病しなければならない。受理できるかな。」
「問題ございません。私は、龍善様の『妻』になるのですから、夫の看病は当然です。」
「ちなみに、僕が『介護』を必要とした時、僕の妻は十全に介護しなければならない。但し、僕は妻の介護をできない。施設に放り込むだけだ。受理できるかな。」
「問題ございません。夫の介護は当然です。それに、龍善様に介護が、できるとも思えません。むしろ、龍善様が、お金を払って、私を施設に入れて下さるのは、喜ばしい事です。」
「僕は、家事などできない。君は、『家業』と『家事』を、全て十全にこなす事。」
「問題ございません。龍善様に、料理などできるとは、思えません。全てお任せ下さい。」
「『家業』で、稼いだ『お金』は、『玉衣家』のものだ。この場合、僕が決定する。以上だ。」
「問題ございません。龍善様のお好きなように、差配なされば宜しいかと。」
こちからの、確認事項は、ネタ切れだ。本当に、ここまで全部承諾するとは……
「……で、1つ提案があります。天気もよろしいですし、お庭に出ませんか。」
「だが断る。」
「拒否する。僕の身体には、過度の紫外線は、悪影響でしかない。」は、「だが断る。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某狂漫画家とも無関係に相違ない。
「では、私を『妻』に、娶って頂けますね。龍善様。」
……随分、押して来るな。が、どうしても分からない。彼女の『本音』だ。これが、分からないと安寧安心安全は無い。まさか、お父さんを騙そうとしている可能性もあるからな。
手持ちの『魔法』で言えば、『表層思考』を読む程度なら、詠唱と印を省略可能だ。
こんなもんでいいだろう。……で、『思考感知』を使おうとした、その瞬間だった……
美鶴さんの姿が、消えていた。何処に行ったのか、分からない。まさか、最初から存在していなかったのか。などと思考を巡らせていると、ようやく『ある事』に気付いた。
刃っ! ……僕の喉に、押し当てられている! が、これは、『刃物』じゃない!
これは、この店の住所と電話番号が、記載されたカードだ。だが、これを手にした者の手にかかれば、カードを、カミソリと同じ切れ味にする事が、可能だろう。
「お戯れが、過ぎます。龍善様。」
美鶴さんの声だ。が、この距離に置いても『表層思考』を読めない。何て女性だ……
ならば、合点もいこう。では、『音声』で、悲鳴の大音量を流す。更に、『発病』で、持続時間式の『インフルエンザ』になる。結果、僕は入院する羽目になった。
* * *
次回予告
第22話 幕間4
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