29.法廷での話2
ご都合主義で進んでいます。
なんとなくで読んでください。
まず間違いないはずだ。
ずっと感じていた彼の魔力はわたしと反する魔力なのだから。
しかも、彼は鑑定士としての素質を持ち、店長と知り合い。そして、わたしが感じ取れる魔力を外に放っているという事は、店長から魔力…というか魔法の使い方を習っている可能性が高い。
「あまり知られていませんけど、鑑定には二種類の方法があります。一つは従属系、もう一つは支配系。ほとんどが従属系ですけど、なかには支配系鑑定を行う人がいます。それがヴァルファーレ・ゼノン・ルイージュ様です。これはどちらの魔法系統の素質かによって分かれます」
「つまり、素質的に言って空間魔法は使えないと?」
「はい、今すぐの証明は難しいですが」
もちろん、これを簡単に証明する方法はない。それに、魔法が使えるかどうかはこの際どうでもいい気がした。
わたしはずっと気になっていたことがあった。
なぜこれが皇室宝物殿からの盗品だと言われていたかだ。わたしはこれをリアムドさんから鑑定依頼された時から彼のものだと思っていた。
むしろ、今回話を聞いてちょっと理解できないこともあった。
「一つ気になるのですが、正直なぜこれが盗品だという前提で話が進んでいるのか良くわかりません。わたしはこれを鑑定したときからこれはリアムドさんが受け継いできたものだと認識してます」
「それは、どういう意味か述べなさい」
裁判官が問うてくる。
わたしは、この迷宮産魔道具の現主について説明した。
「この品は初めから主登録されていました。みなさんも知っての通り、迷宮産魔道具は主登録しなければ使えません。簡単な方法としては血の契約。ただし、中には珍しい登録の仕方もあります。それが魔力登録というものです」
あまり知られていないけど、一族の宝として一族の名で登録する方法がある。ただし、これには魔力が扱えるという事が前提になる。
血ではなく魔力で登録するというものだ。
魔力は血族で似る。よって魔力で登録すると、その血が続く限り、その魔道具は同血統でしか扱えない物となる。
しかし誰もが扱えるものではない。
血統の中でも最も主にふさわしい人物を自分の主として迷宮産魔道具が選ぶのだ。
「一般的ではありませんが、昔はこういう登録も多かったと聞いています。そして、こちらは紛れもなくリアムドさんの血統魔力を感じました」
魔力を扱うからこそ分かった事。これから感じるものはリアムドさん自身ではなく、似た魔力の波動。間違いなく一族の魔力だと思う。
迷宮産魔道具にはいくつか有名な現象がある。それが人を選ぶという点とさらに有名なのが、魔道具が主の所に戻って来るという事だ。一度主と認めた人間から何らかの理由によって離れると、戻ってきてしまうのだ。自分の主の元に。
どういう原理かなんてわかっていない。
ただふと気付くと手放したものが手元に戻ってきたなんてことが昔はよくあって、それゆえ詐欺なんかも起こっていた。今は対策も取られているので問題ないけど、今回はその対策を潜り抜ける様な何かが起こったようだ。
「この迷宮産魔道具が宝物殿に収められていたとすると、リアムドさんの一族からどういった経緯かは知りませんが皇室の手に渡ることになった。しかし何らかの理由によってリアムドさんという血統の主を認識し、勝手にリアムドさんの元に戻ってしまった。これが今回宝物殿から無くなった理由と考えられます」
つまり盗まれた品ではなく、偶発的な事故。わたしはそういう風に感じた。
その一言で場が一気に騒然となった。
もちろんカーティス殿下側もだ。
予想外の事を言われた、そんな感じだった。
リアムドさんの方を見ると、どこか硬い表情だ。まるで全部知られるのを恐れているようだ。
「それを証明する方法はあるか?」
「専門機関に調べてもらえば分かると思います。教会なんかはとりわけ得意だったかと」
迷宮産魔道具の場合、登録が必要だけど、誰もがその場で出来るわけではない。
そして、一度契約したものを白紙にするのはもっと難しい。しかし、そう言う事を専門的に扱っているのが教会だ。
調べればすぐにわかるはず。
これがどういう方法で登録されているか、今の主が誰なのか。
リアムドさんがその偶発的事故を理解して、それでもこの交渉の場を設けた場合詐欺罪になるが、何も知らなかった場合ただの事故で終わる。
ただし、どちらの場合も売買は成立しない事にもなると思う。
カーティス殿下が挙手して立ち上がる。
「どちらにしても、彼女の言葉を証明する手立ては現段階ではない…、裁判官この場は閉廷し、彼女の言葉が真実かどうか調べたのち後日開廷するのはいかがですか?」
まるでこの法廷の主催者のように堂々と裁判官に提案と言う名の指示をだした。
裁判官の方もカーティス殿下の提案に頷く。
わたしもそれが妥当だろうと思っていた。
ただ、納得できずにすごい目でわたしを睨んできているのは第一皇子だ。自分の味方かと思ったら一変して敵に有利な証言をしたのだから当然とも言える。
「そちらもそれでいいか?リアムド・ローレント」
リアムドさんはぎゅっと拳を握り絞め、どこか覚悟を決めた顔で俯いた顔を上げた。
「いいえ、その必要性はござません。すべて、彼女が言ったことは事実です」
ざわりと法廷が揺らぐ。
静かな声だけど、良く響く声だった。
全てを肯定し、話し始める。
「そちらの品は代々僕の母の実家で受け継がれてきたものです。証明する手立てはありませんが、母からずっと言われて育ちました」
リアムドさんの言葉に、閉廷の空気が一変した。
「でも、すでにこの手にないものです。正直僕はそれがどうなっていようとどうでもよかったんです。でも、ある日母の言っていたものが宝物殿にある事を偶然知りました」
おそらく第一皇子経由だと思う。
ちらりとそちらに視線を向けていたので明らかだ。
「どういう経緯でそこにあったのかは分かりませんが、母が言っていた通りなら皇室に献上されていてもおかしくはないとも思いました」
事実、かなりの品だった。
国宝とまではいかなくてもそれに近い性能だ。
「僕は一度でもいいので、実物を見て見たいと思いました。母がずっと気にかけていたものです。見れるものならと…そこで皇都最高学院研究室の先輩にあたるヴァルファーレ様に相談しに行きました」
なるほど、ここで店長が関わってくるわけか。
店長は皇都最高学院にストレートで入学して卒業した。リアムドさんの言葉を信じるならば、店長とリアムドさんは同じ研究室所属のようだ。
本当なのかちらりと閣下の方を見れば、視線が合って頷かれた。そのしぐさで本当なのだと知る。
「ヴァルファーレ様は皇室に伝手もあるので可能性があると思いましたが、正直本当に許可を取って来るとは思ってもいませんでした」
苦笑まじりに驚いたとリアムドさんは言う。
伝手があるとは言っても、第三皇子と親しいというだけだ。それだけで皇帝陛下が許可を出すとも思えないので、リアムドさんも驚いたらしい。
「そこで、これを見つけました。その時は、これが第一皇子殿下が欲しがっていた物であると知っていたので、何も言いませんでした。もちろんヴァルファーレ様も秘密にしてくださいました」
でも、ただの後輩に店長が骨を折るだろうか。
閣下もカーティス殿下も不思議そうだ。自分の所には話が来なくて、直接皇帝陛下の方に話が持っていかれたのだから疑問にも思うのは当然だ。
ただし、店長が全て知っていたと仮定すると全て話が通る気がした。
皇室にある迷宮産魔道具の主人がリアムドさんで、それをリアムドさんの手元に戻したいと考えていたとしたら…。
道具は使ってこそ、そして相性のいい、大事にしてくれる主人の元にいるのが一番だと考えるような人だ。
正当な主人が現れたら、なんとかしてあげたいと考える可能性があった。
正直、それも考え難いけど…。
「その晩のことです。寝ようとしてふと窓辺を見たら、そこにあったんです。その木箱が…その時の衝撃をもうなんて言っていいのか分かりません。ただ驚いて、すぐにヴァルファーレ様にどうすればいいのか連絡を取ろうとしましたが…」
――ああ、繋がらなかったのね。
どうやらコンバイルの連絡手段はあったようだけど、そもそも店長はほとんどその連絡を取る事は無い上に、現在はこの国にさえいない。
「盗んだわけではありません。それは本当です。ですから、すぐに皇室に返そうとも思いました。僕の伝手は他には兄経由で第一皇子殿下に頼るくらいで。それで、第一皇子殿下に面会をお願いしました……そして、この計画が始まったのです」
それは懺悔に近い告白だった。
そそのかされたと、断ることは出来なかったと。自分が愛人の子供で、立場が弱かったこともあったと。
「ふざけるな!先に貴様の方から提案してきた事ではないか!」
第一皇子が叫ぶが、それを信じるものは少ない。
どちらが本当の事を言っているかは分からなくても、同情票としてはリアムドさんの方が勝っている。
先に告白したことも、それによって真実味を増した。
「殿下!もう僕には欺く事は出来ません」
こうして告白している時点で犯罪を認めているのに、まるで正義を持って立ちあがり自分が正義の使者であるかのように振る舞うリアムドさんを記者全員が感動した目で見ていた。中には涙を流している人さえもいる。
裁判官でさえも感心したように頷いていた。
なんだか、明らかに場の空気がおかしい気がした。
――なんかおかしい…
そう感じていると、後ろから琉唯が面白そうに彼を見ていた。
「なるほどね、そう言う事か」
何がなるほどなのか分からない。
「お前は大丈夫かも知れないけど、気をしっかり持ってないと持ってかれるぞ」
琉唯に言われてハッとする。
――支配系魔法…
精神を攻撃する攻撃系魔法だ。
完全ではないけど、影響力はかなりあるはず。
「リデオンさん、あなたのおかげで僕は正しい事が出来そうです。僕を止めて下さってありがとうございます」
近づいてきた彼にそっと手を取られ握られる。まるで自作自演の寸劇を見せられている気分だ。
しかし、すぐさまリアムドさんから引き離された。いつの間にか閣下がわたしとリアムドさんの間に割って入っていた。
「リアムド・ローレント、貴殿は自分の犯した罪を認めるか?」
この場の空気に呑まれていないのは閣下も同じで、リアムドさんに問いかけた。
「ええ、認めます。唆されたとは言っても、結局こんな事態を引き起こしてしまったのは僕なので」
ふわりと笑うリアムドさんの目はどこかわたしに感謝していた。
止めてくれたことになのか、それとも別の事になのかわからないけど。
「裁判官!」
リアムドさんの鋭い気迫のような声に、一瞬にして支配が霧散する。
「僕は罪を犯しました。償うべきものであると思っております。これは、皇室にお返しするのが正しい選択であることも明らかです」
リアムドさんは、言葉通りこれを皇室に返す気だ。自分にはもう必要のない物だからと。
返したところで、リアムドさんしか現時点で扱えない物だ。
登録を変えなければならないけど、結構お金がかかる。特に魔力での登録は、血での登録よりも強固なつながりなので。
「貴様!許さんぞ!!」
第一皇子がどれだけ抗議してもリアムドさんの意思は変わらない。
しかし、それを認めてしまえば自分も裁かれる事になるので第一皇子も必死だ。
「殿下、次も法廷で会う事になりそうですね」
リアムドさんが冷たい声で第一皇子に言う。
自分のやったことを告白したリアムドさんに、法務局付きの警備隊が付き添って退室する。
わたしはなんだかすっきりしないままその姿を見送る。
しかしそのすれ違いざま、リアムドさんがわたしの耳元で囁いた。
「ありがとう、あの中身を秘密にしてくれて…」
と――。
文才なくて、意味不明なところもあるかと思います。
結局何が言いたいのかと言いますと、迷宮産魔道具である木箱がリアムドを主として認識し勝手に戻ってしまったというだけの話。




