1話 異世界への旅立ち
書き上がった作品を投稿します。
第一部完結まで毎日投稿。
実はこれが処女作でもあります。
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深夜0時を回った頃、布団に入ろうと思いベットに向かった。
「はぁ~、今日も疲れたっと」
俺は、猪熊春斗っていう、そこら辺にいるしがない一般人だ。
年齢は18になり、進学せずに地元に就職したばかりだ。
田舎は7割近くが地元とかに就職するのが一般的だ。
都会になると8割くらいが進学するのかね、残りが就職か家業を継ぐか、専門学校に行くか、
あとはまぁ、ぷー太郎になるって所かね。
まぁ、どうでもいいんだけど。
俺は就職して3ヶ月が過ぎたあたりだ。
最初はどんなものかわからずに、言われたことをやって行くだけだったけど、
まぁ最近は慣れてきて、どんな仕事なのかわかってきた所だな。
面白くはないが、辞めるほどでもないって感じの仕事だな。
「まぁ明日も朝早いしさっさと寝るか」
そう思ってさっさと布団に潜り込み、寝付いてしまう。
「ん? なんか変な感じだな……」
周りを見回してみると変な場所に居た。
「なんだここ? 確か寝てたはず何だが……夢か?」
辺りは真っ白な空間で、どこまで続いているかわからないほど広大なようだな、
上も真っ白だから床と天井の境目が全くわからないぞこれ。
「お、気づいたようじゃな」
ん? っと思い声がした方を見てみると、何やら真っ白い髭を蓄え、背すじの良いじいさんが居た。
「誰が爺さんじゃ誰が」
こいつ心読みやがったぞ……
「そりゃわしゃ神様じゃからの、おぬしのいう所の創造神ってやつじゃな」
創造神? ってことは地球作ったり人間作ったり? ……んな馬鹿な。
それにこの今いる場所は神界らしい、なにやら俺の魂だけをここに呼んでいるようだ。
日本人に生まれたからには創造論ではなく、進化論が一般的だから全く信用ゼロなんですけど。
「そうは言ってものう、事実なんじゃから仕方あるまい」
「まぁ信じますよ、現に頭の中覗かれてるみたいだし」
「すまんの勝手に覗いてしまって」
「別にいいですよ、それで?創造神様は何用で俺に話しかけてきたんです?」
「うむ、それはじゃな、お主、別の世界に行ってみないか?」
急に何言い出すんだこの爺は……
「たびたび失礼じゃぞちみぃ、爺はやめいと言うとろうに」
あ、また頭の中覗いてきやがった、まぁいいや隠せないだろうし。
「それは失礼しました、ちょっと突拍子もない事言い出したもんで」
「まぁ今回は許そうかのう、それでじゃ、異世界行ってみないかの?」
「ん~、なんで俺なんですか?あと、異世界行く意味は?」
「それはじゃな、ワシの声が届く者がお主じゃったからじゃよ、異世界にはまぁ、趣味じゃな」
何言ってんだこのじじ……おっと危ない。
「危なくないわ、もう言っとろうがそれは、全く……」
「それは失礼しました、それで声が届くのが俺だけってどゆことですか?」
うむ、それはじゃな……と大仰そうに勿体つけて言い出すじじ・・おっと。
「ワシの声が届く者は滅多におらんのじゃ、そうじゃのう、他に作った星々を合わせても1万年に一人ほどにしか、ワシの声が聞ける者はおらんのじゃよ」
は? 1万年に一人? ……とんでもねぇ程の確率じゃねぇかそれ。
「うむ、全くもって少なすぎるのう」
「また頭の中見やがって……1万年ってちなみに何人くらいなんですか?」
「そうじゃのう……数十兆から数百兆に1人くらいかの」
「は!? そんなにじいさんの声は届かないのかよ!?」
うむ、っと偉そうに頷いてる……いや、褒めてないから。
「ところで、じいさんはやめい、ワシはラウルと言う名があるのじゃ」
「あ~、自己紹介まだだったなそういえば、ラウル様でいいですか?」
「うむ、それでいいじゃろう、してお主は、猪熊春斗でいいんじゃな?」
「なんだ、知ってるんですね、それで合ってますよ」
そりゃ1万年に1人しか声が届かないんじゃ、届いた人物くらい調べるか。
「それでじゃ、せっかく声が届いたんじゃ、色々と便宜を図ってやりたいじゃろ」
「それは嬉しいですね、でもなんで異世界なんですか?」
「うむ、お主はもう立派に大人じゃろ、じゃがまだまだ色々夢見てるところもある人間じゃろうて」
「まぁ働いてますから大人っちゃ大人ですね、夢はまぁ、学生終わったばっかなんで」
「そうじゃろう、この世界の若い者は異世界とかに憧れるもんじゃろ?」
「ん~、別に俺は憧れてないですよ」
な……なんだと!? ってびっくりしてるよこのじじ――おっと、ラウル様。
「じゃあお主はどんな夢があるんじゃ?」
「ん~、今の若者らしく夢はないですね」
「つまらんやつじゃのうお主は」
「そんなこと言われてもなぁ……」
実際夢なんてほぼないからなぁ……俺ってば現実主義だし。
「それじゃどんな事してほしいのじゃ?」
「ん~、別にしてほしい事ないですよ、現状にあんま不満ないですし」
「それは困るのう、折角こうして出てきたのに何もせんとは、創造神の名折れじゃ」
「別に神様だから何かしなきゃだめって事でもないと思うんですけど」
「それはそうじゃがのう……やっぱり3万年ぶりに話せたのじゃ、何かしてやりたいじゃろう」
「え? 3万年も話せなかったの!?」
うむ! ってまた偉そうに頷いてるよ……だから褒めてないって。
「じゃからの、久々に話せる者じゃから色々してやりたいのじゃ」
そっか~……3万年も話もできずに一人だったのか、そりゃ色々してやりたくもなるか。
「別に話もできず1人きりってわけじゃないぞ」
「また覗きやがって……まぁいいや、んで1人じゃないってどういうことですか?」
「ワシの他にも何人もの神がいるからの」
「え? 部下みたいのがいるんですか?」
「うむ、ワシの下に数人居て、またその下に何人もおるのぅ」
「なんだ、じゃあ寂しくないのか」
しかしのう、と呟くラウル様
「ワシに遠慮せず話してくれるやつが1人しかおらんのじゃよ」
「あ~なるほど、立場が一番上だから親しくしてくれるのが少ないのか」
「その通りじゃ、そやつはちと乱暴でのう」
「へぇ~、創造神に乱暴働けるやつってどんなやつだろ」
「まぁ立場は下なんじゃがの、いつの間にかそういう関係になっておった」
どういう関係だよって思ったけど、まぁエロい関係じゃないんだろう。
「当たり前じゃろ、まったく……」
「まぁまぁ、それじゃ別に寂しくはないんですね?」
「寂しくはないの、やる事も色々あるしの、ただ下界の者と話すのは久々で、ついつい肩入れしたくなるのぅ」
「なるほど、じゃあ別に異世界に行ってもいいですよ」
「ほう? 行きたくないんじゃなかったのか?」
「行きたくないわけじゃないですよ、ただ行かなくてもいいかくらいで」
「中途半端じゃのう、地球で何かやりたいことでもあるのかの?」
ん~、と考えて特にやりたい事もないなと思った。
「特にないですね、でも異世界行っても特にやりたい事あるのかな?」
「色々な星々があるから、何か興味がある事言ってみぃ」
「ん~、じゃあ地球にない物で」
「色々あるぞい、だがまぁ一番は魔法関係じゃろうな」
「やっぱそういうのがある世界があるんですね」
「あるぞい、いくつもある、地球には一切ないみたいじゃがの」
いくつもあるのか……ちょっと興味持ってきた。
「どういうのがいいんじゃ?」
「ん~、その魔法ってのは違いが星によってあるんですか?」
「あまりないのぅ、進んでるか遅れてるか程度じゃな」
「へーそうなんですか」
と言い、あっ! ……とちょっと思う事があった
「なんじゃ? 申してみい」
「あのですね、魔法で飛ぶ飛行船に乗ってみたいなぁと思いまして」
「なるほどのぅ、魔法を使いたいではなく、魔法船に乗りたいのか」
「ええ、魔法はその世界いけば大抵使えるだろうと思うので、魔法船? に乗りたいですね」
「なら多少文明が発展しとる所がええじゃろうな」
「あるんですか?」
なんか異世界で魔法って言うと中世程度の文明しかないってのが一般的だが、そうでもないのかね。
「魔法使えるんじゃから、文明が発展しない意味がわからんのう」
「まぁたしかに、魔法で色々できるんだから、中世程度で止まるって考えづらいし」
「文明が進んでない所は、大抵戦争が起こりすぎて文明破壊が多いところじゃな、発展しても侵略されては滅びてが続くんじゃ」
「は~……なるほどねぇ」
確かに、それなら文明が進まない理由もわかるな、細かい技術は地球のが上だろうけど、魔法が使えるならとんでもない文明の星とかもあるんだろうなぁ。
「あるぞい、地球よりも進みに進みまくった星々がな」
また頭の中を……まぁいいや。
「そっちのが興味あるけど、そういう所だと生きていけなそうだなぁ」
「うむ、まず無理じゃろうな、その世界の事を理解するだけで精一杯で、すぐ死んでしまうじゃろ」
「ですよねぇ、色々調べるだけでお金稼げなくて終わりそう」
「そうじゃな、最初の数ヶ月分くらいは面倒見るが、ずっととなるとのう……」
「そうですよね」
確かに、ずっと面倒見てもらうってのも個人的にもなんも面白くないからなぁ。
やっぱり自分の力で色々見て回るのが楽しいしな、絶対の保険があるとつまらなくなりそうだ。
「せっかく異世界行くなら自分で色々やりたいですからね」
「そうじゃな、なら魔法船があって、文明がそこそこの世界にするかの?」
「そうですね、そこにしようかな」
「まぁ無理に行けというわけじゃないからの、行きたくなければ行かなくてもいいんじゃぞ?」
「もし異世界に行かないとしたら、どうなるんです?」
そうじゃのぅ……って言って豊かな髭を撫でるラウル様。
中々様になってるなぁその姿。
「お主の星で使える物を1つくらい渡して、ここでの記憶を消してお仕舞いかの」
「異世界行っても記憶消されるんですか?」
「異世界行ったら消さんよ、この星より神様が身近じゃからのう、魔法も神様から与えられた物だと思っとる世界じゃ」
「なるほど、じゃあ記憶消されるのは勿体無いので異世界に行こうかな」
「いいのかの?別に無理せんでもええよ、異世界行かないかと言ったのは、そういうのが好きな星の人間じゃったからじゃ」
なんだ? 急に行かなくていいとか言い始めたぞ、そうなると行きたくなってくるじゃないか、誘導がうまいなこのじじ…おっと、ラウル様は。
「別に誘導しとらんわ、興味なさげだったからの、無理強いはすまいと思うての」
「特にこの星に未練ないとは言わないですけど、やりたい事もないし、行ってもいいですよ」
「そうかの、では何か力を授けようかの」
おっと、その前に聞きたい事があったわ。
「ラウル様、ちょっと聞きたいんですけど」
「なんじゃ? 何でもよいぞ」
「俺が異世界行ったら、地球ではどういう扱いになるんですか?行方不明とかですか?」
「なんじゃそういうことか、いや、お主は生命之書という物を知っとるか?」
コクコクと頷く。
「それが消されるだけじゃ」
なにやらとんでもない事いいやがったぞこのじじい……
「またじじいと言いおって……いじけるぞぃ」
「すいません、神様がいじけないで下さいよまったく……それで、消されたらどうなるんです?」
「うむ、お主の存在自体がいなかったことになるのう」
「なんかすごい寂しい気もするけど、あ、俺長男なんですけど、跡取りとかどうなるんですか?」
「うむ、次男と三男がおるじゃろ?それが繰り上がりで長男次男になるだけじゃ」
へぇ~、そういう感じになるのか、役所とかでの記録ってどうなるんだろ?
「それは勝手に切り替わるぞい、そこは神の力の出番じゃ」
「へー結構便利な力ですね」
「そうじゃろうそうじゃろう、なにせ神にしか使えん力じゃからな」
また大仰そうに頷くラウル様だ、まぁだんだん見慣れてきたわ。
「じゃあ心配しなくてもいいか、じゃあ異世界行きます」
「そうか、では力を授けようかの、何がいいんじゃ?」
「いえ、力は要りません、自分の力で何とかします、できれば最初の数ヶ月分の生活費と簡単な異世界の知識を下さい」
「ほー欲がないのう……すぐ死なれたら困るんじゃがのう」
何が困るのかね、まぁ観察対象がなくなるって意味かなとか思ってみる。
んじゃ力のかわりに、なんかお腹減ったし、異世界に行く前にたらふくご飯でも食わせてもらうかな。
日本ほどご飯美味しい所なんてすぐ見つからなさそうだしな。
「じゃあ力いらない代わりに、神様のご飯とか食わせてください」
「神のご飯じゃと?」
「はい、神様ってどんなご飯食べるのかなと前から思ってたんですよ」
「神はご飯なんぞとらんぞ」
なにやらショッキングな事を聞いてしまった……
え? 神様ってどうやって生きてんの?
「神になると実体がないからのう、所謂霊体だの魂だのになっておるのじゃよ」
「へーそうなんですか、じゃあ美味しい食べ物とか食べたことないんですか?」
「そうじゃのう、生まれてこのかた一切食べたことがないの」
「ラウル様って何歳なんですか?」
「ワシか? もう数百億歳になるのう、数え取らんから忘れたわい」
「え? 数百億年も何も食べてないんですか?」
「そうなるのう」
「うわーもったいないなぁそれは、じゃあ神様の食べ物ってないんですね?」
「そうじゃの、この神界にはそういうのは一切ないの」
「えー、じゃあ異世界に行く前にたらふく食べようと思ってたのにだめかぁ」
じゃあ一旦家に帰って、美味しいものでも食べに行きたいなぁなんて考えてたら、
ふむ、と考えていたラウル様がこんな提案をしてきた。
「それじゃお主の記憶を探って、お主の食べたいものをここに出そうかの、まぁ実際にお腹が膨れるわけじゃないがの」
お! それじゃあいつまでも美味しいご飯を食べれるじゃないか!
ここに来て一番興奮する言葉を言ってくれたぞこの人!
「じゃあじゃあ、まずはフカヒレいいですか!?」
「なんじゃ急に興奮しだして……まぁいいじゃろう、ちょいと頭の中見さしてもらうぞ」
そう言って俺の頭を掴んでくる、まぁ優しく触ってきた感じだけど。
すると、何やら変な感触を覚える。
「ん? なんか変な感じがするな、これが頭を覗かれてるってことなのか?」
疑問に思いながらもまだラウル様は記憶を読み取ってるようだ。
「よし、大体の料理という知識は見終わったぞ、何でも言うがよい」
「待ってました! じゃあフカヒレとエビチリと松茸ご飯とお吸い物と――」
「待て待て待て! 一遍に言いすぎじゃ、ちょい落ち着けい!」
おっと……興奮しすぎた……別にそこまで食い物に興味あるわけじゃないんだが、頭の中にある食べ物全部食えるし、満腹にならないって聞いたら興奮しちまったみたいだぜ。
「じゃあ一通りお願いします」
「わかったぞい、これでいいかの?」
「おー、全部あるーー!!」
目の前に出された料理を、1つ1つ完食しつつ、今度はどれがいいか考え、また沢山の料理を出してもらう。
「うまうま、こりゃ食ったことないけど多分そうだろうっていう味のやつだな、うん、うまい」
コース料理など食ったことないが、魚のムニエル等、絵で見た感じでこんな味だろうという想像通りの料理なども平らげる。
そんなこんなで、三日三晩食い続けてふと急にラウル様の声が聞こえてきた。
「ええかんげんにせんか~~~~い!!」
「うおっ!? びっくりするじゃないですか!」
「こっちがびっくりするわい! いつまで食うとんのじゃお主は!」
「え? いや~お腹一杯にならないから、今のうちに食いだめしとこうと思って」
「もうええじゃろ! まったく……ワシの神力ももう尽きかけとるわ・・・」
ふと、気になった言葉が出てきた
「え? この料理って神力で作ってたんですか?」
「そうじゃ、何もない所からどうやって作るんじゃ」
「いや~なんか適当に願えば出てくるのかなぁと」
「そんなわけあるかい、まったく」
ぜぇぜぇしてるラウル様が怒りながら説明してきた。
「そうだったのかぁ、じゃあラウル様も限界みたいだし、これ食べたらそろそろ異世界行こうかな」
「もうさっさといかんかい~!」
「あ~まだ残ってるのに~!! ご飯残しちゃいけないんだぞーーー!」
「神力のご飯じゃからすぐ消えるわい! もうさっさと行っとけい!」
「あああ~~~!!!」
急に世界が暗転して意識が暗い世界に沈み込んでいった。
「はぁはぁ……ふぅ……何気に欲深いのぅあやつ……何の力もいらんと言うから欲がないと思うとったのに……まぁよい、これで暫く静かになるのぅ、これからのんびり観察させてもらうとするかの」
「だーれがのんびりするですって~~~?」
「ぬぉっ!? エリス!? びっくりするじゃろうに……」
「びっくりしたのはこっちです! まさか3日も戻ってこないとは……はぁ」
「いやなに、先ほど異世界に送った少年がな、ご飯が食べたいというのでずっと作り続けておったんじゃ」
「ええ、ええ、見ておりましたとも、神力が枯渇するほど作る馬鹿なラウル様を」
「馬鹿とはなんじゃ馬鹿とは! 久々の下界の者じゃ、少しは良くしたいじゃろう」
「少し? 嬉々としてご飯を作りまくって、ついさっきまで夢中になってた人が、少しですと?」
「いやまぁ……そうじゃのう……ちょっと作るのに夢中になってたのは確かじゃが――」
「ちょっと? ちょっとですって?」
「ま、まぁ……か……かなり?」
「はぁ・・・いいですか? 3日分の仕事が溜まってるんです!早く戻って仕事しますよ!」
「ちょ、ちょい待つのじゃ! いたたっ、髭を! 髭を引っ張るのは待つのじゃ~~!」
「はいはい、喋る元気あるならだいじょぶですね、いきますよ~」
「いたたたっ! 行くから! 行くから髭を引っ張らないでおくれ~~~~~~~~~!!」
こうして猪熊春斗の異世界への旅は、ラウルと他の神々の尊い犠牲の元、無事旅立つことができたのである。
めでたし、めでたし
つづく。
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