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4 作戦会議

『一通り見て回りましたね』


「ああ。それにしても広い。歩き回るだけで本当に数十分使うとは。なんでこんな家に住んでるんだ?」


 全く同じつくりの客室だけでも4つはあった。あまり手入れは行き届いていないようで窓の隅なんかに埃はたまっていたけど、その豪華さには目を惹かれっぱなしだ。


『広さに関しては、次から次にほしい設備を付け足すものですから、不用意に広がってしまっただけです』


「ほんとにそれだけ?」


 見た目からしてそんな継ぎ足したような違和感はないが、それも魔法の効果なんだろうか。


『また、地点的にこの地点は魔力的に優れています。戦略上有効な拠点と言えますね』


「具体的にどう優れてるのさ」


『簡単に言えば「神の加護」というものです。創造主か、あるいは人々に崇められてその地位に至った者。そういった強大な力の恩恵を受けやすい場所、とお考えください』


「それは傷を癒すのにも便利な力だと」


『そういうことです』


 シエルがここに戻りたがったのはそんな事情もあったらしい。


 そんな会話をしながらうろついていると、一周してソレイユとリアを寝かせた居間へと戻ってきた。


『そろそろ時間もいい頃合でしょうか』


 正確な時間は把握していなかったけど、シエルが言うなら十分な時間がたったと思ってもいいのだろうか。


 着替えの最中でも困るし、念のため扉をたたく。


「ノックだなんて律儀なこと。入っていいのよ」


 アンナの声ではない、透き通るような声がした。


「お邪魔します」


 ドアを慎重に開けると、パタパタと飛んでいるリアと、それをソファに座って見守るソレイユの姿があった。無事に目が覚めたのだ、と知って少し安心した。


「へぇ、リアから聞いていたけど本当に星の王女(スターデレミー)に変身したのね」


 そういえば、あのときソレイユの方はこの姿になる前に意識を失ってたから、この姿だと初対面になる。


「とりあえずそちらに座ってくださるかしら。お礼もお話もたくさんしたいの」


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきまして」


「……ずいぶんと硬いのね」


 自分でも自覚はあるが、それでも緊張してしまって声も動きもぎこちないものになる。


 オレはカクカクとした動きでテーブルを挟んで少女の向かいに座った。


「もっとラフに、友人のように接していただきたいわ」


 少女にそう言われても、相手が王女であることを意識するとどうしても平常心ではいられない。王侯貴族、なんていうものにかかわったことなんて人生で一度たりともない。


「ソレイユ、まずは自己紹介をしましょう。言葉を交わせば少しは態度も口も軽くなるものよ」


 妖精がぎこちないオレをフォローするように言葉を挟んでくれた。


「そうね、じゃあまずは家主の私から。私の名前はソレイユ・デレミー・エトワール。ソレイユと呼んでちょうだい」


 ソレイユの上品な態度は、シエルのいう通りの王女のような、高貴な生まれを想像させる。


「そして、ワタシがソレイユの護衛のリア。今はこっちにいるせいもあって大した力は無いけどね」


 反対に、妖精のリアは雰囲気が軽い。ムードメーカー的な存在だったのだろうか、と思った。


 最後にオレの紹介だ。みんなの目線があつまるのを感じる。


「オレは三鷹月光。今はこんな格好ですが、一応男です」


 オレの自己紹介を聞いて、ソレイユの顔が少しだけ、影が差したものになったような気がした。


「……やっぱり、向こうの世界の援軍、とかじゃなくて。あのとき駆けつけてきた一般人の方なのね」


「ええ、まあ」


 まあ一般人か、と聞かれれば間違いなく一般人だ。今は魔法少女になってるので一般人とは言い切れないかもしれないけど。


「でも、それならどうして星の王女(スターデレミー)の姿に『変身』できたのかしら……?」


 少女は首を傾げるが、オレのほうがもっとよくわからない。


「ま、実際に変身の現場を見てても納得できてないし。どうして再認証(リブート)が起きたのかも分からない。本当にないない尽くしよ」


 リアはやれやれとでも言いそうに首を振った。


 チカチカ、と胸の結晶が瞬いた。


『そして、私がシエルです』


「それは知ってる」


 さっき聞いたし、何度も呼んだのでもうしっかりと覚えた。


『自己紹介の場なのですから、私もするべきかと』


「みんな知ってることを改めて言う必要ないと思う」


『そんな、私だけ仲間はずれにするなんて! よよよ』


 よよよ、って口に出すものでもないだろう。


 オレがシエルにからかわれていると、ソレイユは口元を手で隠して、リアはこちらに背を向けて、それぞれ笑っている。


「ずいぶんと、シエルとも仲良くなられたのね」


「そんなことはありませんけどね?」


 友達みたいな感覚で絡んでくるので、適当にあしらっているだけなのだが。まあ、気が合うというのもあるかもしれない。


「そうだ、シエルに接するみたいに私にも仲良くしてくださらない? 私、同年代のお友達って少ないから、是非仲良くして欲しいの」


「それは構いませんけど」


「もっとフレンドリーに!」


 ぐい、とソレイユが迫ってくる。奥ゆかしい王女様、という想像よりもずいぶんと積極的だ。


「か、構わないけど」


「ええ。ありがとう」


 ソレイユに手を握られて、念を押すように力をこめられたあと、彼女は上品にソファに座りなおした。


「ソレイユ、そろそろ本題に入りましょう」


 リアの言葉を聞いて、ソレイユの表情は笑顔が引っ込み、真剣なものになった。


「そうね。まずはミタカさん、あなたに命を助けてくださったことに大きなお礼を」


「私からもお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」


 ソレイユとリアは神妙な調子で言葉を述べると、深々と頭を下げてきた。


「いや、そんなのいらないって。結局、シエルの力を借りなかったら何もできなかったし」


 オレが手を振って否定すると、ようやくソレイユは顔を上げた。


「謙虚な方ですね。私も、リアも、あなたの勇気で助けられたのですから」


「大きな借りになるんだから、好きなこと言ってもいいのよ」


「ええ。尽くせる限りのお礼をさせていただきます」


 自分にそんな力は無かったし、二人を助けられたのも本当に偶然だ。


 だから、二人にそんな頭を下げて欲しくはない。そのために、少しだけずるい言葉を使おうと思う。


「……その」


「何かしら」


「……友達、になるんだから。そういうのはいらない」


 顔は赤くなかったか。正面向いてはっきりといえたか。そんな自信はない。


 けれど、視界に入った妖精は後ろを向いて震えていたようにも見える。そんなにおかしかったか。


 そして、意識をそむけていた前方から、またもソレイユが迫ってくると、両手をもぎ取られるように掴まれた。


「そうよね、お友達になるんですもの。お礼を叩きつけてそれっきり、なんてわけにはまいりませんわ!」


 輝くような笑顔だった。それを見るために戦ったことを思い出して。ちょっとだけ、報われた。


「でも、何もないというのも寂しいから、これを受け取ってくださらないかしら」


 ソレイユは自身の腕から、金色のブレスレットを取り出すとこちらに渡してきた。


 オレは両手で抱え込むように受け取って、まじまじと見つめてみた。


 金色に輝くブレスレットは室内の明かりでもよく輝いて見える。


「少しだけど魔力がこめられたお守りだから、簡単な魔よけの力もあるの」


 実際に見たことはないけれど、重みと光沢が金であることを証明しているような気がする。飾り付けるようにつけられた宝石も、本物に見える。


 ちらり、とソレイユのほうを伺ってみるが何も言わずににっこりと微笑むばかり。


「……ありがとう。大切にする」


 腕に巻くと、ブレスレットは少し小さくなって腕にぴったりな大きさになった。これも魔法の力なんだろうか。


 リアのほうも腹を抱えて笑うのは飽きたのか、ようやくこちらを向いていた。


「ワタシも何かお近づきのしるしくらいは送りたいけど。今は何も無いからまた今度にしましょう」


『マスター、あのリアという女はあんなことを言って何も渡さないようなセコイ女です。どうか気をつけてください』


「ちょっと! 変な噂を流すなそこのクリスタル!」


『事実しか申していません』


「ちゃんと渡す算段はありますー! 今は持ち合わせが無いだけですー!」


 飛び回る妖精と胸の中の結晶が喧嘩している。珍妙極まりない情景だが、愉快な様子に顔がほころぶ。


「やっと笑ってくれた」


 ソレイユがつぶやいた言葉で、この家に来てから初めて自分が笑ったのだ、と自覚した。


 それが何でか恥ずかしくて、何となくソレイユから目を背けた。


『悪徳妖精はこの際放っておきましょう。マスターには我々の出自はあらかた話していますが、先ほどの決意は変わりませんね?』


「ああ」


 むしろ、固まったといってもいい。この平和な日常を守る一助になることに、そんな大層な理由はいらなかった。


『では、ソレイユ、リア。相談事項があります。お願いしてもよろしいですか、マスター』


 一度、落ち着くために息をつく。


「聞いてほしいことがある」


 改まったオレの言い方に、目の前の二人もこちらに向き直り、シエルも言葉を止めた。


「DDの話も聞いた。世界が大変なことになるのも知った。二人の体がもう無理がきかないくらい限界になってるのもわかってる」


 二人はこれ以上なく、オレの話を真剣に聞いてくれている。だから、オレもできるかぎり真剣に言葉を伝えたい。


「だから、オレに戦わせてほしい。きっと、力になって見せる」


 ソレイユは何も言わず目をつぶり、リアはわかっていたぞ、と言わんばかりに二やついている。


「それは、本当は私の方から言わなければならなかったことなのですが」


「言ったでしょう、ソレイユ。あんなにシエルがなついてるんだから、大丈夫だって」


『なついている、とは心外です』


 またも始まろうとしたけんかに、ソレイユも笑みをこぼした。


「……そして、部外者を巻き込みたくないというべきなのだけど」


「一度戦ったんだから、もう部外者なんかじゃないさ」


 屁理屈みたいな言い分だけど、ソレイユは笑ってくれた。


「そうでしたね。ではあらためて」


 こほん、と彼女は小さな咳ばらいを一つ。


「ミタカ、世界のために、あなたの力が必要です。どうか、力を貸してもらえますか」


「ああ。存分に使ってほしい」


「ありがとう」


 ソレイユが片手を差し出してきたので、それを握り返した。


 その手は安心するような温かさだった。






『二人の許可が得られましたから、本題に入りましょう』


 ソレイユも、リアも反対する様子はなかった。その点は安心したが、本題とは何だろう。


『現マスターの星の王女の異常についていくつかお話すべき点があります』


 しいて言うならオレが魔法少女なんてやってる時点で異常極まりないが。


『まずはマスターが他の異なる形態をとらず、魔法使い、それも星の王女(スターデレミー)に変身してしまったことです』


 シエルの言葉に、リアが大きく頷いた。


「……そうね、同じ魔法使いの形態をとるだけでも珍しいのに、いくらなんでも赤の他人が同じ星の王女になれるはずがない」


「シエルも同じことを言ってたっけ」


 オレとソレイユがうり二つになった理由は不明、とも言っていた。


「実際、あなたが何の要因も無く星の王女(スターデレミー)になることはありえないわ。だってソレイユとミタカ、二人の理想とするなりたい姿が寸分たがわず同じ、ってことだもの」


 シエルもリアもそういうなら、オレの変身したい何かはなんだったんだろうか。そんな疑問は頭によぎったけれど、大したことでもないし口には出さなかった。


『もう一つ。マスターが変更されたせいで、星の王女(スターデレミー)の能力に大きな変化がもたらされています』


 シエルの言葉に、ソレイユが首をかしげる。


「見た目からして、何も変わってないように見えるけど」


『ええ。外見上は髪色が深紅から白へと変化した程度でしょうか。ただ、戦闘能力上の分かりやすい変化が一つあります。マスター、フェンリル相手に出した『剣』を出してください。』


 出せといわれても。あの時はなんとなく出せたが、今は取っ掛かりも見えない。


「……どうやったらいい?」


『一度出せたものですから、今度は強く念じずとも出せるはずです。ポケットから取り出すくらいの感覚でやってみてください』


 その例えはよくわからない、と言おうとしたところで手のひらにくすぐるような感覚がした。この感覚に従えば、いけそうな気がする。


 虚空に手を合わせ、架空の剣を引き抜こうとする。その動作にあわせて、真紅の剣がオレの手元に現れた。


「おお、出た」


 オレの感覚としては自分でもびっくりするくらい、当然のように出てきた。


 だが、目の前の二人もオレ以上に驚いていた。


「私、こんな剣を使ったことも見たこともない」


「ワタシもこんなのはじめてみた。しかも魔法使いが物理的な近接武器を主武器にするのは例がないかもしれない」


 そんなに剣って珍しいのか。何となく武器といえば剣というイメージがあったんだけど。


「でも、炎は出るのね。そのあたりはソレイユと一緒なのかしら」


「そうなのか?」


「ソレイユは火を主に扱う魔法使いなのよ。普段でも戦えないことはないけど、変身すると地獄のような業火を扱って戦うの」


 ほう、それはかっこいいかもしれない。


「もう、リアったらそんな言い方して」


 ただ、ソレイユのほわほわした雰囲気からはそんな地獄などと形容される感じは受けない。リアの誇張


『ただし、ミタカの剣から発生する炎は少々効率が悪い。魔力の変換がうまくいっていない、とでも言うべきでしょうか』


「そんな感覚なかったけどなあ」


 フェンリルの攻撃を一度受け止めた時は十分な熱量が出てたと思うんだけど。


『出力は十分でも、一度きりで体に影響が出たでしょう。『星の王女(スターデレミー)』のスペックであればあれくらいでめまいなど起こしません』


 それはソレイユの時はもっと上手く戦えていた、ということだろうか。


『おそらく魔法少女でありながら剣士へのコンバートを無理に行ったために起きた現象と考えられます。ただ、その分使われていない魔力の補填が身体能力のさらなる強化につながっているようですが』


 比較対象であるソレイユの変身状態がわからないが、人間とは思えないレベルの運動能力は発揮できた。身体能力の強化、というのは存分に実感できている。


『本題に戻りましょう。ソレイユの星の王女(スターデレミー)の戦闘方法は、基本的には魔法使いのスタンダードタイプです。戦闘環境に合わせて近距離から遠距離まで使い分け、ありとあらゆる相手に互角に渡り合う応用性と能力を秘めていました』


 シエルの言葉は聞く分には耳障りのいい言い回しだ。


「でも、それって器用貧乏ってことなのでは」


「うっ」


 オレが何の気なしに言った言葉は、ソレイユに命中したらしく、彼女の顔が一瞬で悲壮に染まった。


「ああ、いや、広く戦えるってのは大事だよ、多分」


『実際のところ、マスターの指摘した弱点はフェンリル戦で大きく出ました。彼の氷狼は星の王女(スターデレミー)よりも強大な魔力と、それを余すところ無く利用できる魔術の技術がありました』


 魔法使いでありながら、その魔法の技術で上回る。


「早い話が星の王女(スターデレミー)の上位互換か」


「ひぅ」


 ソレイユは悲壮を越えて、落ち込んでしまった。言い過ぎてしまったか。


『まあ今のマスターはそれ以下ですが』


「……」


 オレにまで飛び火してきた。こんなにも能力を人に蔑まれるというのは心が痛むのか。


『ソレイユの持つ魔力を100とするならフェンリルが150程度、マスターは潜在する魔力を換算しても10あるかどうか。全くもって話になりません』


「最後の一言いる?」


『わかりやすいでしょう?』


 大いに傷ついたが、それ以上に問題がある。


「そんな状態ではフェンリルに勝ち目は無いじゃないか」


 ソレイユの状態の10分の1しか性能が無いなら、どうしようもないのではないだろうか。


「でも、新たな武装として剣が出てきたって事は、魔力を喪失した分の補填がその剣にあつまってると思うけど」


 話をおとなしく聞いていたリアが割り込んでそんなことを言ってきた。


 取り出した剣を眺めてもオレには魔力の補填、とやらは分からなかった。


『リアの言う通り、今のマスターは広範囲の戦闘に対応できなくなった代わり、剣の活用のための能力が向上。結果として極端なまでに近接戦闘に特化した能力を得ています』


「極端って言うけど。どのくらいかあんまり実感は無いかな」


『要素としては、筋力、敏捷、反応速度がソレイユの時よりも上昇。特に反応速度はソレイユに比べると異常に高く、音速にも近い弾丸を放たれてから斬るに至るほどです』


 フェンリルの氷弾を斬ったときのアレだろうか。確かに、あのときは何となく斬れる気がして、本当にあの高速の氷弾も対応できた。


『代わりに武装はソレイユが使っていたものは使用不可。また他の能力も低下し、特に魔力にいたっては私の補助なしではほとんど活用することはできないでしょう』


 シエルのいう通り、この今取り出した剣以外の武装は出せそうにない。頭に設計図があっても作り出す部品が無いというか。


「シエル、その二人の星の王女の違いって表にできる?」


『こちらにありますから、どうぞ比較してください』


 リアの提案を受けて、シエルが承諾すると、オレと二人の前に透明なモニターのようなものが映し出され、そこに色々なデータが映し出された。


「ふぅん、属性の情報は近い、っていうか同じものばっかりね。武器の性質以外はほとんど同じ。もしかして、ミタカの情報を解析する段階で属性の情報を重点的に選んだんじゃないかしら。それなら、星の王女に変身した理由は説明がつくかもしれない」


「……どういうこと?」


 ソレイユの問いに、リアは指を天に向けて得意げに説明し始めた。


「つまり、ミタカとソレイユ。この二人が性格的に共通点が多いから、シエルが混同してミタカの変身先を星の王女にしてしまった可能性があるってこと」


 それだけ聞くとなんとなくシエルの解析能力がポンコツに思えるけど、どうなんだろうか。


『実際、炎の属性適正、星の守護という副属性、主義(アライメント)の近似などかなりの部分でミタカにはソレイユとの共通点があります』


「……?」


「血液型とか、指紋とか、そういったものが似てるようなものだと思えばいいわ」


 要は個人を判定する要素が似ていると。


『しかし、星の王女の性能部分になると大きな違いが出ます』


 リアが宙に浮かぶ画面をスクロールしていると、思わず、といった調子で口元を手で押さえた。


「……信じられない、星の王女(スターデレミー)の利点だった結界も魔法砲台も全部使えないじゃない。無能よ無能」


「無能とまで言わなくてもいいだろ」


 傷つく。オレのあずかり知らぬところだとしても傷つく。


『ええ。普段と同じように展開しようとしたら、上位魔法級の結界が紙三枚分くらいになったのは驚きました。全く持って無力です』


「無力とまで……言わなくても……」


 何だろう、こいつらはオレを辱めたいのだろうか。


「で、でも、その極端な近接能力っていうのもあるんでしょう?」


 ソレイユの助け舟もなんとなく遠い声に聞こえる。


 しかし、その言葉を待っていた、といわんばかりに胸の結晶が二度瞬いた。


『ええ。そして、その近接戦闘能力こそがフェンリルを倒す鍵にもなるでしょう』


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