濁る
すみません、ちょっと予定が入ってしまったので、もしかしたら明日は更新できないかもしれないです。
本当に申し訳ないです……。
「……シズム」
「シズム。聴こえている?」
「聴こえていなかったのなら、それで構わない」
「でも」
「でも――少し」
「少し、喋りたいことがあるから」
「聞こえていなくても別にいい。だからそのままで居て」
「……子供たちのことだけど」
「少なくとも、とりあえず――皆、エネルギー過剰の症状は完璧に消失している」
「それとは関係なしに、肉体に致命的なダメージを負っていた子も、あなたの治療魔法のお陰でほぼ完全に回復している」
「それで、そうなって。皆は……」
「…………」
「……皆、感謝している」
「あなたを命の恩人だと言っている。素晴らしい人間だと。皆、あなたを心から褒めている」
「本当に……ほん、とうに……」
「…………」
「それから」
「これからのこと、だけど」
「あ――待ってにゃ、シルファちゃん」
「その辺のことは、私に……いいかにゃ?」
「ん。それじゃあ、お願い」
「そっか。ありがとにゃ」
「では、シズムくん、ちょっくらバトンタッチを」
「――やっぱり、あの子らの君一人で世話を請け負うというのは、流石に無理があるにゃ」
「だから、私たちも協力させてもらうにゃよ」
「これでもし君に万一のことがあってもオッケー……にゃんつって、にゃははっ」
「ま、冗談は置いといて。それで構わないにゃ?」
「――うん」
「そっか」
「そんならよかったにゃ」
「…………」
「あのさ」
「私は……もしかしたら、君のことを……」
「少し。いや、かなり、凄く誤解していたのかもしれないにゃね」
「君は――君は、私が思っているよりも、ずっと……」
「…………」
「どうにも、ままならないモンにゃね」
「君のことも。ガンドウのことも」
「昔は、人の気持ちが分かってしまうことが、凄く辛くって……だから、わざとバカみたいな身なりをして、バカみたいな言葉遣いをして」
「それで、色んなものから自分を遠ざけていたってのに」
「今は人の気持ちがよく分からなくて。そっちの方が辛いのにゃ」
「……辛いのにゃ」
「ついさっきまで意味のなかったものが、不意に意味を持ったり。そちら側に行きたいと思い続けてて、それを一身に頑張ってたのに、急に道が閉ざされちゃったり。意味がなくなっちゃったり」
「私たち、こんな……こんなクソボンヤリした、クソみたいなものに一生振り回されて生きてかなきゃならないのにゃね」
「辛いにゃ」
「…………」
「……にゃはは」
「余計なことばかり言ってしまったにゃね」
「ほんとは、他にも色々言いたいことがあったんだけど……」
「忘れちゃったにゃ」
「…………」
「――じゃ、私は行くにゃ」
「それじゃあにゃ。ドラゴリュートくん」