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短編小説

巻き込まれたガテン系転移者の試行錯誤

作者: 黒田明人

SSのほうに載せようと思いましたが、少し長いので短編にしました。

 

次の仕事で必要な諸々を買い足した後、大荷物担いで異世界転移。


どうやら少年達は勇者とか言っているから、これはどうも巻き込まれたらしい。

背中の荷物が重いが、落ち着くまではうっかりと降ろせないな。

帰れないとか言っているが、さて、どうなっているのやら。


親方、オレが消えちまって……ヤバくはないのか?



召喚とやらをやり、よく来てくれたとのたまう女。


だがな、少なくともオレは承諾した覚えはないぞ。

そもそも、ステータスとやらを見ても、それらしい職じゃない。


はっきり言うと、無職だ。


つまり、向こうの世界でのオレはガテン系の仕事……だけど、正社員じゃない。

だからかな、無職みたいな立ち位置になっている。


試用期間中だったんだよ。


親方、オレが逃げたとか思っているんじゃないだろうな。

ちゃんと頼まれた品は買ったんだよ。

あんなアクシデントさえ無かったら、品を持って帰るところだったんだ。


そういや、この手の話はサイトで見た事がある。


だけどさ、そういうのって城とかでやるんじゃないのか?

こんな野原でとか、聞いた事も無い。

もっとも、あれはあくまでも架空の話なんだし、実際とはまた違うんだろうが。



少年少女が5人だけで良かったのに、どうしてオレが巻き込まれたかな。

あちらさんも当惑と言うのかな、さすがに少し気まずい感じになっている。


それでも謝罪は心が無い。

分かるんだよ、それぐらいはな。


そりゃ少年少女はあっさり騙されているが、オレは誤魔化されんよ。

だからな、オレは別行動にする事にした。

迷惑料としてしばらく暮らせるぐらいの金をせしめ、彼らと別れる事にしたんだよ。


いやだってね、あんな誠意の欠片も見えない謝罪をするような輩、魔王を倒したら帰れるようになるとか、嘘に決まっている。


そもそも、実際に魔族とか見た事も無いんだぜ。

それなのにあいつら、あっさりと倒すとか言っているが、そんな経験も無いだろうに、よく軽く言えるもんだ。


大体さ、そう言うのって戦争だよな。


つまりさ、他の世界から呼び付けて、自分達の代わりに敵を殺してくれと言っている訳だ。

戦闘奴隷じゃあるまいし、強制的に拉致して手を汚させるとか、はっきり言ってやってられない。


困っている時はお互い様?


頭に花でも咲いてんのか、こいつら。

拉致されて誘拐されたも同然なのに、よくそんな事が言えるな。

しかも、殺し合いにお互い様もくそも無いだろう。

それとも何か、お前らは人に頼まれたら簡単に殺しをやるような人間なのか。


だったら尚更、同行はごめんだな。



ちょっと揉めたけど、金貨10枚もらった。


それなりの宿が銀貨5枚で、連泊すれば40泊で消えてしまうぐらいの金だけど、質素に暮らせば数ヶ月ぐらい保つかも知れないな。


生活保障とまではいかなくても、巻き込んだんだからそれぐらいの補填はしてしかるべきだろうと言って、1年分要求したけどそれは叶わなかった。

だけどまぁ、数ヶ月保つなら、それが尽きるまでに何とか暮らせるようにしないとな。


それはそうと、あいつら、オレにも戦えとか……冗談じゃねぇよ。


やれレベルがどうの、スキルがどうのと言うが、オレには見目良いスキルなんて無いんだぜ。

確かに一般人よりはちょっと高いけど、肉体労働の結果と思えば、あいつらのような補填は無いと言っていいぐらいだろう。



レベルが1で、職業欄は空白で、ステータスとやらは一般人の2倍弱で、スキル欄にあるのはただ、彼らと同じ基本スキルとは別にたった2つだけだ。

彼らはやれ、剣術だの、槍術だの、盾術だの、火魔法だの、水魔法だの、風魔法だのと賑やからしいが、オレにあるのは『創意工夫』と『器用貧乏』って生産職かよ。


創意工夫……思うままに生産した物がそれなりに使える。


器用貧乏……どんな武器でもそれなりに使える。


それなりってさぁ、どうにも地味だよな。



彼らは意気揚々と城への旅路に就き、オレは金貨の入った皮袋を持ってそれを見送った。


実は手持ちの金は増えていたりする。


それと言うのも彼らも数日の旅の途中で身支度を整えるらしく、それぞれ金貨をもらっていたんだ。

それをせしめたんだけど、あいつら、金銭感覚がどうにもおかしいぞ。


確かにもう手に入らないんではあるんだけど、買い込んだ品の中の間食用の菓子類が売れたのだ。


オレが試用期間で向かう予定の現場では、親方以下8名の作業員が居た。

実は親方は甘党でさ、不足物資のついでにと、スナック菓子やらチョコレートやらを買わされてさ、それらを売ったんだ。

後はおつまみもかなり買い込んであったんだけど、それは後々、オレが食うから出さなかったんだけどな。


てか、酒ぐらいあるんだろうな、この世界。



召喚された野原から少し歩くと近くに村がありました。

そこで別離になったんだけど、オレは今、宿屋暮らしになっています。


宿は銀貨3枚らしく、食事は近くの飯屋で食うようになっている。

日替わりみたいなセット料理で銅貨30枚とか。

1品銅貨10枚ぐらいが相場らしいな。

エール1杯が銅貨20枚と少し高いが、追加でせしめた金の恩恵があるのでこれぐらいは構わないだろう。


ジャガイモスライス菓子。

練りクリーム挟みサンド菓子。


これらを全て売ったんだ。


ポテチ8袋、クッキー7箱全部売れました。


あいつらさぁ、それぞれ金貨50枚づす貰いやがってよ、悔しいから1つ金貨10枚って言ってやったんだ。

そうしたら全員で相談して全部買うって言ったんだ。


だからオレの手持ちは金貨160枚になり、あいつらは早速にも菓子の分配を始めたんだ。


もちろん、現場で使うはずだった調味料セットや保存食の類は出さなかったよ。

菓子類は特に好きな訳じゃないからと出したけど、調味料は恐らく無いだろうしな、醤油とか味噌とかは。


現場と言っても飯場って言うのかな。


だから調味料や夜食やおつまみの類はすぐになくなってしまうものだ。

そういうのも今回、買い足してのトラブル遭遇になる。

今はエールなんて飲んでいるけど、荷物の中にガラス容器の一合日本酒が5本に、アルミ缶のビールが6本入っている。

ちゃんと冷やせる環境になるまでは、しばらくお預けの予定なのだ。


その為のおつまみだしな。



困った事になった。


この世界、と言うか、この大陸と言うべきかだけど、調味料がやたら高いって話だ。

それなりの価格なら売っても良かったんだけど、希少な香辛料とか言われたらおいそれとは売れないぞ。


ちなみに胡椒は100円均一の店で買った品で、あいつらラーメンにわんさか使うもんだからと、大量に買い込んである。

本当はそれを売っても良かったんだけど、ガラス製の容器でフタがプラスチックと言うのがネックだ。


確かにガラス製品は無くはない。

だけど石油製品なんかは皆無だ。

未知の素材とかって注目浴びたら、ヤバい事このうえない。

そもそもさ、とっととこの国を出ないと、オレの身元バレバレなんだよな。

だから商売するなら他国でやらないといけないだろうと思っている。


もっとも、今はこうして情報収集の日々だけどな。



隣国までの旅費は金貨50枚必要らしい。


商人じゃないから関税とかは必要無いらしいが、手荷物がかなりあるから金貨20枚ぐらいは取られるだろうとの事だ。

入国税と片道の馬車費用、それに途中の飯代合わせての額とか。

そういうのは総合ギルドに相談すれば、あたかも観光ツアーっぽいのを組んでくれるとか。

手数料は取られるものの、手続きが簡素化するらしく、金貨10枚の手数料を払って委託した。


道中では質素な飯には弱ったが、とりあえずは無事に到着して良かった。


手持ちの金が少し減ったけど、これから少しずつ稼いでいけばいいだろう。

実は国を出る前に、跡を少し濁したんだ。

つまり、ガラス瓶から胡椒を抜いて売ったんだ。

小さなツボを手に入れ、その中に1瓶分の胡椒を入れたのを5つ。


ちょっとオークションっぽくなり、そこらの商人達が競るもんだからやたら高くなり、完売してそそくさと広場から逃げるように宿に戻ったんだ。

なんせ商人なら広場での商売は税金がかかるし、届出もしなくちゃならないらしいし。

そういうのを全部パスしての飛び込み営業なので、はっきり言って脱税である。


旅に出る前日にやって正解だったな。



空になった胡椒の容器。


ガラスはラベルを剥げば何かに使えそうではある。

コルクなら存在しているので、何かの容器にはなりそうである。

プラスチックは荷物の奥底に死蔵の予定だけどな。


なんと、魔法の習得方法が分かってしまった。


羊皮紙のスクロールで習得出来るらしく、生活魔法なら金貨100枚で買えると言われた。

はっきり言って高いけど、4元素魔法はもっと高いらしい。

そもそも、素養が無いと覚えられないようで、その為の試験には金貨20枚が必要と言われた。

胡椒脱税作戦がなかったらスルーしたんだけど、あぶく銭のようなものだからとつい、やっちまったんだ。


その結果は悲惨なものだった。



4元素……素質薄し。

生活魔法なら可能。


金貨20枚使ってこんな結果となり、ますます巻き込まれ確定のお知らせのようなものだ。

なんせ金さえあれば、誰でも覚えられると言われているのが生活魔法だからだ。

だからと言う訳じゃないが、生活魔法を覚える事にした。

大枚はたいてみたものの、とりあえずは微弱ではあるものの、魔法が使えるようになったのは幸いだ。


火種、飲み水、ゴミ飛ばしと、生活を便利にする為の簡素な魔法。

それらは4元素の中でも軽微な魔法として、生活魔法の範疇にある。

だけどさ、3種しかないと思うだろ。

実は商人は多少無理をしても、この生活魔法を覚えようとする。

それは、4番目の魔法に原因がある。


火、水、風、それと大地。


大地魔法とは、はっきり言って土魔法だと思っていたんだ。

だけどさ、それも内包するけど、それだけじゃなかったんだ。


商人達は腰に皮袋を提げ、その中には土が入っている。

その土を媒体にして、貴重品の類を収納出来るのだ。


それはインベントリやストレージといった便利で広大な量が入る訳じゃない。

聞くところによると、1メートル角ぐらいの量が精々で、それは土の量が増えても変わらないらしい。


オレの場合、脱税金貨を入れたら、他の道具は無理だった。



さあ、戦いだ。


いやね、望んだ訳じゃないんだよ。

隣の国に来たのは良いが、王都まではかなりの距離があると言われてね、総合ギルドでまたぞろ日程を組んでもらったんだけど、途中で馬車が壊れてさ、そこから近くの村まで徒歩になったんだ。

オレは多少荷物は減ったものの、まだまだ重量物背負って大変だと言うのに、魔物とやらが出たんだよ。


そうしたらさ、みんな逃げちゃったんだ、オレを置いて。


酷いよな、オレは武器なんて持ってないのに。

それでも荷物の中の道具で何とかできないかと試行錯誤してみたんだ。


パーン……ぎゃうぅぅぅぅ……


意外といけるっぽい。


痛い? 痛いよね、針なんだし。


業務用タッカー舐めんなっ。


パーン、パーン、パーン……


両手タッカー作戦……早い話がそれで暴れた訳よ。


あ、タッカーって分かるかな?


早い話がホッチキスのでかいやつな。

壁紙とかを止めるのに使う道具でさ、事務用より大型で針も丈夫なんだ。

本当は武器にしちゃいけないんだけど、背に腹はかえられない。


捕まったら殺されると思ったら、火事場の何とやら。


え? 度胸ある? ガテン系やっていると筋者とかも馴染みになるんだよ。

ヤバい奴はとことんヤバいから、そういうのを経験すると、自然と度胸が付くんだよ。


おらおらおら……何とかなったかな。


結局、タッカー作戦よりも、胡椒作戦のほうが効果が高かったよ。


中ブタ外して手に持ってさ、顔に投げてやったんだ。

そうしたらだね、やたら咳き込んで涙をボロボロこぼしてさ、手に持っていた棍棒を落としてさ、

汚れた手で目をこするもんだから更に悪化したみたいでさ、戦いにならなくなったところで逃亡ですよ。


え? 倒さないと経験値にならないって?

嫌だよ、殺すとか。

そんなにあっさりと割り切れるなら、最初から別行動とか取らないって。



何とか村に着いたものの、皆さんったら死人を見るような目付きしちゃってさぁ。


冷たいよな、みんな。


それはともかく、これからはその手の事も覚悟しなくちゃならんらしい。

さすがに魔であろうと人は殺せないけど、魔物ぐらいなら対処出来るようになりたいものだ。


生きる為に殺す……か。

やれるんだろうかねぇ。

 

もう少し技量があれば連載にできるのに……orz

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