プロローグ
日食とは関係なく、昼が夜になった日があった。その日、昼時前に世界は闇に覆われた。それは突然のことで世界が混乱したその時、流星群よりももっと大量の、空を覆い尽くすほどの流星が降り注いだ。そして流星からは、無数の光の粒が雨か雪のように地上に降っていた。
それは同時に世界中で起こり、朝方だった国も、夕方だった国も、真夜中だった国も、そのどこも異常現象だとして各国で調査が行われていたが、数分で消えた流星の正体を知ることはできなかった。大量の流星群が河のようだったことから、世界共通で「流星河の日」と言われる歴史的な日になった。
その後、メディアで報じられ様々な説が浮上した。神降臨説、地球滅亡説、宇宙人飛来説など。けれどもそのどれも信憑性はなく、真実が闇に葬られようとしていた中で唯一最後まで残り、今や都市伝説と化している一説があった。最も馬鹿げているはずなのに、一番有力だとされているその一説。
小学校の校舎内で聞こえてくる女子の会話に耳を傾ける。
「ね、あの話ってやっぱり本当なのかな?」
「流星河の日のこと?」
「ずっと言われてるでしょ、異世界と繋がった日だって。異世界ってどんなところだろうね?」
「私、魔法が使える世界がいいなぁ」
そう、その一説というのは異世界とこの現実世界が繋がったという、通称「異世界リンク説」。これは、この世界の他にも世界があるということが大前提としてあることになり、正直、大の大人の口から出てくる話とは到底思えなかった。
けれども世間は空前の異世界ブームとなり、異世界もののドラマや映画、異世界を取り上げた番組などが増えていった。
そんな女子の会話を聞きながら、橘慶太は机に頬杖をつく。
「異世界かあ……」
「何だよケイ。やっと興味持った?」
「異世界って、平和かな……」
「そりゃ、世界にもよるだろ。俺はさ、巨大ロボットに乗って宇宙で……――」
親友の話を遠く聞きながら、窓の外に広がる青空を見つめる。
オレは、世界が平和ならそれでいい。