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その48


「大丈夫だよ」


「えっ」


「そう。心配しなくても大丈夫なんですよ、アップルビーちゃん」


「?」


「温泉玉はすべてもとのお湯に戻るよ」


「そうです」


「?」


「全部こちらの計算通りなんだ」


「……なんのことですか。意味が……」


「効太郎さん、そろそろ話してもいいんじゃないでしょうか」鐘馬が効太郎を見ていった。


「そうだな、もうここには誰もいなくなったし」


「?????」


「その前にアップルビー、きみには最初にあやまらないといけないんだ。こんな危険な目に合わせてほんとに悪かったよ。許してほしい。きみを命の危険にさらしたことは想定外の出来事だったんだ。とても辛い目に合わせてほんとにごめん」


 そういうと効太郎はアップルビーに深く頭を下げた。

 鐘馬もそれにならった。


 大の男ふたりに深々と頭を下げられたアップルビーの目からは涙がすっかり止まってしまい、彼女自身はただとまどうばかりだった。


「ど、どういうことなのかさっぱりわかりません」


「僕たちの本当の目的は、実はあいつらに全員究極の勇者になってもらうことだったんだ」


「……そうなんですか。えっ!」

 

 さすがにアップルビーも驚いて目を剥いた。

 あまりに驚いたので一瞬だけデメキンになったくらいだった。


「もう何がなんだか私、完全に混乱しています」


「千歳のやつが最初から僕たちをダマすつもりだったのも予想がついてたんだ。ほんとに裏切るかどうかはわからなかったけれど、やっぱり本当に裏切った」


「実はそうなんです」


「記憶喪失なんか全部ウソ。あいつを油断させて真意を見極めるためにフリをしてただけなんだ」


「ああ、ああ、やっぱりダメです。何がなんだかぜんぜんさっぱりです。私もだまされているんでしょうか」


「きみにはずっと黙っていたから見方によったらそういうことになるかもしれないな。ほんとにごめん」


「ああ……」



      ×     ×     ×



「僕たちは最初、親父の命を受けて鐘馬とふたりでこの秘境までやって来た、それは確かなんだ。秘湯の地図を託されてね」と、効太郎はいった。「すると途中で僕たちのあとをずっとつけて来るやつがいるのに気がついたんだ」


「さっきの煉獄一族の人たちですね」


「それと、千歳と塵芥だ」


「千歳さんも?」


「そう。もともと千歳のことは親父の経営する温泉旅館の関係で前からよく知ってたけどね。あいつの母親が仲居として働いていたし、時々娘のあいつも手伝っていたからね」


「そうなんですか……」


「もともと千歳は僕たちに同行したがってたんだけど、親父が拒否したんだ。女性を危険な目に合わせるわけにはいかないってね。今から思えば親父のやつ、千歳の真意に最初っから気がついていたのかもしれない。それでもあいつは塵芥とかいうよく知らないやつと一緒になってあとをつけてきたけどね」


「そのうち運悪く、私たちはガレ場で落石にあって崖から落ちてしまったんです」鐘馬がつけ加えた。


「さいわいケガはたいしたことなかったんだけど、少しのあいだ気を失ってね。気がつくと千歳がコッソリすぐそばまで来ていて、僕たちの体を探っている。あとで気がついたんだけど、あれは親父に託された地図を探していたんだね」


「そうだったんですか……」


「そこでいきなりガバッと起きて千歳のやつを問いつめてもよかったんだけど、ふと考えが変わってね」


「……それで、記憶喪失のフリをしたんですか?」


「無理やり吐かせるのは性に合わないしね」


「……」


「僕たちにもなぜ千歳がこんな真似をするのかわからない。真意を確かめるためにはひとまずトボけたほうがいいと思ったんだよ」


「でも……おふたりとも一緒に記憶喪失のフリをしたってことですよね。最初からその時のことを相談でもしてたんですか?」


「いいえ、ふたりともとっさの判断でした」鐘馬がいった。「何しろ私たちはあうんの呼吸、ツーカーの仲ですから」


「僕たちは昔っからずっと気の合う幼なじみなんだよ。ちいさな頃から妙にウマが合ってね」


「だから効太郎さんが記憶をなくした芝居をはじめたことがわかったので、私もそれにならったんです」




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