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第7話 異世界二日目の朝

 朝、小鳥の囀りでサクヤは目覚めた。寝ぼけ眼で周囲を見回し伸びをする。


「う、う~ん、――っは!」


 サクヤは自分の上にかかっていた布団をどけると自分の体を確認し始め、胸や股間を撫で回してからほっとした顔で、胸に手を当てて吐息を吐いた。


「よかった、サクヤの姿のままだ」


 そこは本来安心するところなのだろうかという疑問もあったが、少なくともサクヤは元の体に戻る事を望んでいないので、自分の体がサクヤのままであることに安堵していた。

 しかし、昨日の馬車に乗った直後からの記憶が曖昧で、何故か自分の体が素っ裸である事には不安を感じてしまった。


    ◇◇◇


 サクヤ達は昨日の日没ごろエスタシアに到着したのだが、その時点でサクヤの眠気は限界を超えており、カナタの肩に寄りかかって眠っていた。

 寄りかかられているカナタは怒るどころか若干息を荒くして喜んだ表情で悶えており、マナステアとヘンリーは満面の笑みでその光景を眺めていた。

 そんな馬車を出迎えて扉を開けた従者は、見てはいけないものを見たせいで口封じの為に殺されるのではと恐怖した。


「出迎えご苦労」


 唖然としている従者にヘンリーは真面目な顔で声をかけ、マナステアの手を引き馬車から降りた。

 従者はいつものヘンリーの姿を見て、さっきまでのは夢だったのだと自分に言い聞かせていつもどおりの対応をしようと心掛けた。


「サクヤ様軽い、ハァハァ。やわらかい、ハァハァ――」


 しかし、二人の後ろから眠っているサクヤをお姫様抱っこしたカナタが、息を荒くしながら現れたので、従者は先程の光景が夢ではなかったのだと認識してしまい、この仕事をやめたくなった。

 その後、マナステアはメイド達に連れられ、王族専用の浴場で体を清め、ヘンリーに言われ部屋で休息をとる事となり、マナステアに休息をとらせたヘンリー自身は事後処理の作業を始め、忙しなく働き始める。


「さぁ、サクヤ様は私と一緒にお風呂に入りましょうねぇ」

「ん――、わかった」


 ヘンリー達と別れた後、サクヤは優しく起こされ、寝ぼけながらカナタと一緒に使用人用の浴室に向かった。

 途中、自分達がやりますからと止めに入ったメイドに「黙りなさい! 泥棒猫!」と怒鳴りながら、カナタは幸せそうな顔でサクヤと一緒に浴室へ入っていった。


 その時浴室で何があったかはわからないが、入浴後ぐったりとしたサクヤがタオルで包まれた状態でカナタに抱きかかえられ、そのまま用意された客室に運ばれていった。

 客室に運ばれたサクヤはそのまま眠りにつき、朝まで眠り続けた。


 因みに、サクヤを客室で寝かしつけたカナタが、何故か一時間ほどそのまま部屋に居座り続け、その後艶々とした顔で部屋から出てきたのだが、その事について何があったのか問いただせる人間はその場にいなかった。


    ◇◇◇


「自分で寝ぼけて脱いだのかな――って、いやそもそも服が無いぞ。俺の服はどこだ」


 そして現在、サクヤは素っ裸でキョロキョロと周囲を見回している。

 靴はベッドの横にあるのだが、服はどこにも見当たらない。もしかするとタンスの中に何かしら衣服があるのかもしれないが、どこぞの勇者ご一行のように他人の家で勝手に物をあさる様な真似はサクヤには出来ない。


 しかも、サクヤが寝ている部屋はこれ一個であなたの給料一年分以上の値段がしますみたいな花瓶などが飾られており、怖くてベッドから移動できなかった。

 まあ、今サクヤが座っているベッドも小さい家が一軒建つような高級品なのだが、そこには気が付いていなかった。


「お目覚めのようですね」


 サクヤが困っていると、部屋の扉が開き、赤毛でショートカットなメイド姿の女性が現れた。

 メイドはサクヤが起きているのを確認すると、洗練された動きで美しいお辞儀をしてきた。本物のメイドによる綺麗なお辞儀姿にサクヤは感動を覚える。


(やっぱりコスプレとは違うな)


 サクヤのそんな考えは露知らず、メイドの女性はサクヤの目の前に立ち、手に持っていた荷物を差し出してくる。


「おはようございます、サクヤ様。申し訳ございませんが、元のお洋服は着る事ができる状態ではございませんでしたので、こちらで新しいものをご用意いたしました」


 メイドが持っていた荷物はサクヤの着替えだった。高級そうな白のブラウスに下は青いキュロットスカートで、黒いタイツに黒いレースの下着も用意されている。


「…………」


 サクヤは無言になる。ブラウスは問題ない、キュロットスカートも普通のスカートに比べれば穿きやすいので寧ろ助かる。

 しかし、上下お揃いのレースの下着にだけは抵抗がある。と言うかブラジャーの方に関しては付け方がわからない。


「お気に召しませんでしたか? サイズは(貴女が眠っている間にカナタ様が)測ってご用意させていただいたので、正確だと思いますが、他のものをご用意いたしますか?」

「いっ、いえ! 大丈夫です」


 サクヤは初期状態でも下着を付けていた。ブラジャーも青っぽい色のものを確かに付けていたので、この場で付け方がわからないと言ったら確実に不審がられる事になる。

 サクヤはこんな事になるならブラジャーの付け方動画をもっとちゃんと見ておくべきだったと後悔した。


「そうですか。それではご準備が出来る頃にもう一度お声をおかけいたしますので、着替えてお待ちください。後ほど食堂にご案内して朝食をご用意させていただきます。失礼致します」


 サクヤが考え事をしているのを自分に出て行くように言うにはどうしたら良いか考えているのだと判断したメイドの女性は、気を利かせて部屋から出て行く事にした。

 一人残されたサクヤは、着替えを前にして途方に暮れる。


「取り合えず、試しに付けてみるか――ってその前に……」


 サクヤは服に触れようとした手を引っ込めて、裸のままベッドから抜け出し、部屋に置いてあった全身の映る鏡の前に立った。そこには楽園とも言える光景が広がっていた。


(なんだこの肌、白くて綺麗で柔らかくてすべすべしていて、撫でているだけで最高に気持ち良い。更にこの胸、大きさも凄いが弾力と柔らかさが絶妙なバランスで、重いはずなのに支えが無くてもあまり垂れてなくて形も極上だ)


 サクヤは自然と自分の胸に触れていた。


「あっ……んっ……」


 生まれて初めて感じる胸を揉まれるという感覚に自然と声が漏れていた。

 サクヤは鏡に映った声が出ない様に我慢している少女の顔に途轍もなく興奮してしまった。


(やばい、やばい、これ以上やったら着替えどころじゃなくなってしまう。我慢我慢……)


 胸のもっと揉み続けたいという欲望を鋼の意思で抑えたサクヤだが、「でも、もうちょっとぐらい」という好奇心に負け、女の子の体の中で一番気になる場所に手を伸ばしてしまい、湿り気を帯びた柔らかい部分に手が触れてしまう。


「――っんあ! はぁっ……んんっ!」


 予想以上に大きな声が出て急いで口を手で塞いだ。


(うわぁ、女の子って凄い! こんなの経験したらもう男の体じゃ満足できなくなっちゃう)


 サクヤは改めて自分の体の素晴らしさを堪能し、頭がおかしくなっていたが、他人の家、着替え、迎えが来ると言うキーワードを思い出し、なんとか気分を落ち着かせて着替えを開始した。


 まず、ショーツについては布が少なくてぴっちりしているのが気になったが特に問題が無く穿けた。そのまま下半身から攻めようと思い、黒タイツ、キュロットスカートの順番に穿いていった。

 キュロットスカートは腰の部分がリボンになっており、リボン結びが苦手なサクヤは結ぶのに苦労していたが、何とか形にする事が出来る。


「上を着るのに一番の問題はコイツだな」


 サクヤはラスボスにも等しい黒いレースのブラジャーを手で持ちながら、どうしたものかと眺めていた。


「取り合えず、胸に被せる様に当てて、紐を肩にかけて後ろでホックを留めれば良いのかな」


 幸いサクヤの体は柔軟性にも優れていたので、背中に位置するホックを留めるのも問題なく出来た。

 しかし、ホックを留めて完成だと思ったサクヤは言い様のない違和感に襲われていた。


「なんか、全然固定されてる様に感じない。と言うか、ブラジャーの上の部分に隙間が出来てるし、下乳? の所にも昨日までには無かった違和感を感じる……」


 サクヤの初期衣装は下着も含めて正確な手順で付けられていたので、なんの違和感も無かったが、間違った付け方をされたブラジャーはサクヤに不快感を与え続けていた。


「これってサイズが間違ってるのかな?」


 元々付けていたブラジャーがどんな風に付いていたかわからない為、サクヤはブラジャーの方に問題があるのではないかと疑い始めていた。

 その時、サクヤの後方で部屋の扉が開く。


「サクヤ様、お目覚めになったと聞きましたが、お加減は……いか……が……です……か……?」


 ノックもせずに部屋に侵入してきたのはカナタだった。

 普段ならその様な失礼な事はしないのだが、サクヤと一緒に朝ごはんを食べられる事に浮かれていたカナタは、無意識にそのまま扉を開いてしまっていた。

 そして、そんなカナタの目に飛び込んできたのは正しく桃源郷だった。


「あ……」


 着替えを覗かれたサクヤは、咄嗟に両手で胸元を隠して顔を赤らめていた。

 その姿は間違いなく少女のもので、元々の体に宿っていたはずの男らしさは皆無だった。そんなサクヤを見たカナタは、若干興奮気味に息を荒くしサクヤに近づいていく。


「どうしました……ハァハァ、サクヤ様? 何かお困りですか……ハァハァ」


 それはどこから見ても変質者の行動なのだが、大和撫子っぽい美少女と言うフィルターがサクヤの目を曇らせ、普通に心配してくれていると勘違いさせていた。

 サクヤは少し恥ずかしそうにカナタに声をかける。


「それが……、最近までブラジャーを付けていなかったので、まだ付けるのに慣れてないんだ」


 普通サクヤの胸についている巨大なものを見れば、「その言い訳には無理がある」と感じそうなものだが、カナタの目もサクヤ同様、自分好みの美少女を前にして曇っていたので、簡単に信じてしまった。


「そ、そうなんですか……ハァハァ、それではこの機会に、二度と忘れないくらい念入りに……ハァハァ、付け方を教えて差し上げますよ……ハァハァ」

「本当? ありがとう」


 満面の笑みで感謝を伝えてくるサクヤに、カナタは若干罪悪感を覚えながら、その肩に手を伸ばす。


「ブラジャーはですね、胸を支えるものですから、周辺の肉も含めてちゃんとカップの中に納まっていなければいけません」

「周辺の肉?」

「はい、そうです」


 そう言いながらカナタはサクヤの脇の辺りを擦る。

 突然触られたので、サクヤは「ひゃっ!」と言う可愛い声を出してしまい、それを聞いたカナタは「可愛いですね……ハァハァ」と言って大層興奮していた。


「ブラジャーはこの辺りの肉も寄せて納めなければいけないんです」

「そっ、そうなんだ」


 サクヤはカナタが親切に教えてくれていると思っているが、カナタの頭の中の大半は「サクヤ様の触り心地堪んない」という言葉で埋め尽くされていた。


「あと、サクヤ様の胸は型崩れをしていませんが、胸は重力の影響を受けるものですから、ブラジャーを付ける時は前屈みになる必要があります」

「こっ、こうかな?」


 サクヤが前屈みになると、サクヤの胸がふよふよと柔らかそうに震え始めた。カナタはそんなサクヤの胸を優しくすくい上げる様にしながらブラジャーを押し当てる。


「そうです。そのまま前屈みの状態をキープしてブラジャーを被せ、肩にストラップをかけ、下のワイヤー部分をバージスライン(下乳)に合わせてホックを留めます」

「こうだな」


 サクヤは言われた通りにホックを留める所まで作業を終える。

 サクヤがホックを留めるまでの間、カナタは恍惚な表情でサクヤの背中を擦っていたが、サクヤは覚えるのに必死で気にしていなかった。


「はい、良く出来ました。そうしましたら次にこうします」

「ふぇっ!」


 カナタはブラジャーのワイヤーの下を押さえながら、躊躇無くサクヤの胸とブラジャーの間に手を差し込み、脇の辺りの肉を寄せてきて、胸をカップの中に納めていく。

 しかし、カナタのその手がサクヤの敏感な部分に当たり、先程まで興奮状態だったサクヤは簡単に反応してしまう。

 サクヤは恥ずかしそうに口元に手の甲を当て声を我慢していたが、それはカナタを喜ばせるだけの行為だった。


「ふふふ、我慢しなくて良いんですよ。女の子同士なんですから気にしないでください」

「でも……(これでも中身は男なんですよ)」

「可愛い――いえ、こうやって手で胸全体を包み、脇の肉と一緒に中央に寄せながら反対側の肩に持ってくる感じで優しく引き上げます」


 サクヤの反応に満足したカナタは、そのままサクヤの胸をカップの中に納めた。

 カナタに胸を触られている間、サクヤは必死に声を抑え様としていたが、抑えきれずにか細い声が漏れ出していた。


「はい、それではゆっくり体を起こして、ストラップの長さを調節してください。あまりきつくするのも良くないので、肩とストラップの間に人差し指がすっと通るくらいで止めてください」

「こんな感じかな?」

「はい、それくらいで大丈夫です。そうしたら反対側の胸も同じようにします」

「はっ、はい」


 サクヤはもうワンセットカナタの攻めに耐え、両方の胸をカップの中に納めることが出来た。


「これで完成です」

「――んっ、はぁはぁ、ありがとう……ございます……」


 サクヤは何故か息も絶え絶えになり、「ブラジャーって付けるだけでこんなに大変なのか……」と女の子の大変さを実感しているつもりになっていた。

 だがしかし、サクヤが息を切らしている原因はカナタが胸を寄せる時にさりげなくサクヤの胸の敏感な部分に触れていたからである。


「はぁはぁ、んっ――ちゃんとつけると全然違うな。なんか優しく包まれている感じがする」


 サクヤはブラジャーごと胸を持ち上げたり揺らしたりしながら付け心地を確認していた。

 そんなサクヤの様子を見ながら、カナタは息を荒々しくさせサクヤの後ろに回りこみ、サクヤのブラジャーのホックを外した。


「なっ――!」


 突然の出来事にサクヤは対応できず、ブラジャーはそのまま一気に脱がされ奪われてしまう。

 サクヤが驚きながらカナタの顔を見ると、カナタは微笑みを浮かべながらサクヤにブラジャーを手渡してくる。


「二度と忘れないくらい念入りに教えて差し上げますと言ったでしょう……ハァハァ。見ていてあげますから今度は一人で付けてみてください……ハァハァ」

「えっと……」


 頬を赤く染めながらブラジャーを手渡してくるカナタの姿に、流石のサクヤも「もしかしてこの人はそういう趣味が……」と思ったが、何故か逆らえないオーラを感じて大人しくブラジャーを付け始めた。


    ◇◇◇


 それからカナタによるブラジャーの付け方講座は二時間近く続き、その間サクヤは「一度ショーツを穿くところからやってみましょう」と言うカナタの意味不明な発言により、何故か素っ裸にされたりしながら着替えを完了させた。


「いつになったら、お呼びしてよろしいのでしょうか……」


 その間、サクヤに着替えを渡したメイドはずっと扉の前で待ち続けていた。

 彼女はサクヤが一人で盛り上がっている間も、カナタが部屋に入る時も、その後、部屋で二人が盛り上がっている間もずっと部屋の前におり、部屋から漏れ出す声を全て聞いていたのだが、声をかけるタイミングを完全に失ってしまい、遠い目をして窓の外の景色を眺めていた。


「はぁ……」


 出てきた二人に声をかけるのも気まずいと思いながら、メイドは何度目になるかもわからないため息をついた。

 彼女の目の前にある扉が開くのはもう少し後の事である。


下着の付け方を教えるだけの健全なお話

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