最終話 幻想世界の永劫輪廻
「はぁ……はぁ……はぁ……」
死体が折り重なる戦場を一人の少女が歩いていた。少女の手には身の丈に対して大きすぎる剣が握られているが、少女はまるで大した重さが無い様に持ち歩いていた。
「キッ……! キサマは何なんだ!」
そんな少女に追い詰めらているのは、大柄の男である。
その男の体は血に塗れているが、男には外傷はない。その血は全て、周囲の死体から飛び散った物である。
「バケッ! バケモノ!」
その周囲の死体を作り出した少女に向かって男は罵声を浴びせる。しかし、少女は止まる事無く進み、男の首を跳ね飛ばした。
「神意能力……封印完了……」
少女はうつろな目でそう呟きながら、次の目標を探し歩き始める。
「ねぇ……いつ終わるの……? いつまで続ければいいの……?」
動く者のいなくなった荒野を一人歩きながら、少女はぶつぶつと呟き続ける。
少女の名はサクヤ。人造神剣グランエグゼの主であり、神意能力者を殺す者である。
その存在が最初に確認されてからどれだけの年月がたったかはわからない。しかし、サクヤという名の少女は、歴史上何度も登場した。
例え何度殺しても、例え何年経とうとも、サクヤという名の少女はいつの間にかそこに存在した。
しかし、名と手に持った剣は同じものでも、その姿は毎回異なり、人々はある日ふらりと現れた人間がそのサクヤなのではないかという恐怖に脅えながら暮らしていた。
いつしかサクヤという存在はこの世界において悪魔、恐怖の象徴などとして語られるようになり、その名を子供につける事は禁忌であるとされた。
「あと何人……あとどれだけ……」
そんな人々の憎悪を一身に浴びながらも、少女は歩き続ける。生き続ける。
「嫌だ……死にたい……お願い……終わらせて……誰か……助けて……」
しかし、その願いは叶う事無く、少女は永劫に輪廻を繰り返す。
「神様……」
神に救いを求めるこの少女が解放される時、それはグランエグゼ達の目標が達成された時のみだ。
そして、少女は今日もこの幻想世界で戦い続ける。
いつか、神を殺せるその日まで……。
理由も無く、何かに気に入られて、ただ特別な力を与えられて異世界で好き勝手に生きる。そんなご都合主義の物語なんてただの幻想でしかない。
少なくともサクヤは心からそう思っていた……。
この話を持ちまして、こちらの物語は完結となります。
皆様お付き合いいただいてありがとうございました。
このお話はこちらのサイトがどこまでの表現が大丈夫なのかの実験的な意味も含めて書いていたのですが、自分が最初に考えていた初期設定以上に救いの無いお話になってしまい申し訳なく思います。
ご感想の多くに、もっと救いをというお声があり、やはり主人公が幸せになる物語の方が良いのかと色々考える事となりました。
現在、私は次回作について色々と設定を考えているのですが、今作は独自設定を作りすぎてわかり難い内容になってしまったように感じたので、次回作はもっとわかりやすく、最終的にはハッピーエンドになる作品を作ろうと思います。
それでは、長くなってしまいましたが、またどこかでお会いしましたらよろしくお願いいたします。
 




